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第162話 ポーションの使い道
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錆びた剣を持った骸骨のモンスター、スケルトン。
地下八階層ではそのスケルトンが待ち構えていた。
恐怖という感情を持たないスケルトンはがしゃがしゃと音を立てながら俺に近付いてくる。
「おりゃあ!」
動きの遅いスケルトンに俺は正面から殴りかかった。
俺の拳がスケルトンの顔面の骨を砕き割る。
スケルトンはその一撃でバラバラと全身の骨が崩れ落ち、持っていた剣ごと消滅した。
「マツイさん、まだ来ますよ」
「わかってる」
通路の向こうからがしゃがしゃという音が聞こえてきている。
「相手にするのは面倒だからほっといて先行こう」
戦って勝てない敵ではないが戦うメリットもないので俺は逆側の通路に向かった。
ククリとスラも俺に続く。
下への階段をみつけるまでに宝箱を二つ発見し階段をみつけたあとにもさらに宝箱を一つ発見した俺たちはそれぞれの宝箱の中から攻撃力+2の錆びた剣と防御力+1のダメージジーンズとにおい袋を取り出した。
錆びた剣ではあったが待ちに待った武器に自然と顔もほころぶ。
股間を隠せる防具もみつかったことだし俺はそれらを装備するとにおい袋は首からぶら下げ、
「よし、地下九階層に進むぞ」
「はい、行きましょう」
『うん、行こ行こ』
スケルトンフロアをそうそうにあとにした。
◇ ◇ ◇
『フー……!』
地下九階層に下り立つと二足歩行の豚のようなモンスター、オークが鉄の槍を構え俺に向かってきた。
出っ張った腹の肉がなんとも重そうだ。
俺は錆びた剣でオークの槍をはじき飛ばすと膨れた腹にパンチをお見舞いした。
『フゴ……ッ!?』
「ぅわっ、汚ねっ」
オークは口からよだれをまき散らし前傾姿勢のまま地面に倒れた。
剣でとどめを刺すまでもなく今の一撃でオークは消滅していく。
「マツイさん、大丈夫ですか?」
苦い顔をしたククリが飛びながら訊いてくるが、
「いや、駄目だ。臭い……」
オークのよだれをもろに浴びた恰好の俺は体から強烈な臭いを放っていた。
それとなくククリが俺から距離をとる。
『マツイさん、ヤバいよその臭い』
何かといえば俺にくっついてくるスラも俺から少しだけ離れている。
「ちょっと洗った方がいいんじゃないですか」
「そうしたいけど水なんかないだろ」
俺だって好き好んでこんな状態でいたいわけではない。
「バトルアイスで出した氷をとかせばいいんじゃないですか?」
「水作るのに何時間かかるんだよ」
あー駄目だ、臭くて頭が回らない。
するとスラが、
『ポーションだっけ? あれ使えばよくね?』
何気ない顔で離れたところから俺を見上げた。
「おおっ。その手があったか」
「スラさん、頭いいですね~」
『えっそう? 普通じゃん』
そう言いながらスラはちょっと照れているようだ。
俺は早速布の袋の中からポーションを取り出すとそれをとぽとぽと頭にかけた。
頭と顔をポーションで洗う。
「ふ~……これでなんとか嫌な臭いは消えたな」
濡れた髪を手櫛でとかしながらにおいを嗅いでみるが問題なさそうだ。
よかった。
もう少しで風呂に入るためだけに家に帰るところだった。
「ごめんなスラ、あとでポーションはお前にやろうと思ってたのに」
『いいって別に。そんなことよりそろそろボアの肉食べない? あたしちょーお腹減ってきたんだけど』
スラが言うので、
「そうだな。じゃあ適当な場所探して食べるか」
『いぇーい。マツイさん、最っ高ー!』
俺たちは通路の行き止まりの小さなくぼみに座るようにして腰を落ち着けた。
「バトルマッチ!」
ぼうっと人差し指にともる炎でボアの肉をあぶり錆びた剣で引きちぎるように肉をカットする。
「ほら、スラ食べな」
『あーん』
俺はスラの口めがけてそれを放り投げた。
『あっつ! ……でも美味しいー!』
とろけるような表情を見せるスラ。
「ほら、ククリも」
俺がカットしたボアの肉を差し出すと、
「わーい、ありがとうございます。それではいただきますね」
ククリは小さい口であむっとそれを頬張った。
「う~ん、美味しいれす~」
ふたりの満足そうな顔を見て俺も自分で自分の口にあぶった肉片を運ぶ。
「うん、美味しい」
ボアの肉はやはりモンスターの肉とは思えないくらい美味しい。
A5ランクの肉だって目じゃないかもしれない。
……いや、食べたことはないんだけれど。
『マツイさん。もっと食べさせてー』
「あ、私もお願いします~」
「わかったわかった。順番な」
俺たちはボアの肉を囲んでしばしの休息をとったのち再び地下九階層の探索にあたった。
地下八階層ではそのスケルトンが待ち構えていた。
恐怖という感情を持たないスケルトンはがしゃがしゃと音を立てながら俺に近付いてくる。
「おりゃあ!」
動きの遅いスケルトンに俺は正面から殴りかかった。
俺の拳がスケルトンの顔面の骨を砕き割る。
スケルトンはその一撃でバラバラと全身の骨が崩れ落ち、持っていた剣ごと消滅した。
「マツイさん、まだ来ますよ」
「わかってる」
通路の向こうからがしゃがしゃという音が聞こえてきている。
「相手にするのは面倒だからほっといて先行こう」
戦って勝てない敵ではないが戦うメリットもないので俺は逆側の通路に向かった。
ククリとスラも俺に続く。
下への階段をみつけるまでに宝箱を二つ発見し階段をみつけたあとにもさらに宝箱を一つ発見した俺たちはそれぞれの宝箱の中から攻撃力+2の錆びた剣と防御力+1のダメージジーンズとにおい袋を取り出した。
錆びた剣ではあったが待ちに待った武器に自然と顔もほころぶ。
股間を隠せる防具もみつかったことだし俺はそれらを装備するとにおい袋は首からぶら下げ、
「よし、地下九階層に進むぞ」
「はい、行きましょう」
『うん、行こ行こ』
スケルトンフロアをそうそうにあとにした。
◇ ◇ ◇
『フー……!』
地下九階層に下り立つと二足歩行の豚のようなモンスター、オークが鉄の槍を構え俺に向かってきた。
出っ張った腹の肉がなんとも重そうだ。
俺は錆びた剣でオークの槍をはじき飛ばすと膨れた腹にパンチをお見舞いした。
『フゴ……ッ!?』
「ぅわっ、汚ねっ」
オークは口からよだれをまき散らし前傾姿勢のまま地面に倒れた。
剣でとどめを刺すまでもなく今の一撃でオークは消滅していく。
「マツイさん、大丈夫ですか?」
苦い顔をしたククリが飛びながら訊いてくるが、
「いや、駄目だ。臭い……」
オークのよだれをもろに浴びた恰好の俺は体から強烈な臭いを放っていた。
それとなくククリが俺から距離をとる。
『マツイさん、ヤバいよその臭い』
何かといえば俺にくっついてくるスラも俺から少しだけ離れている。
「ちょっと洗った方がいいんじゃないですか」
「そうしたいけど水なんかないだろ」
俺だって好き好んでこんな状態でいたいわけではない。
「バトルアイスで出した氷をとかせばいいんじゃないですか?」
「水作るのに何時間かかるんだよ」
あー駄目だ、臭くて頭が回らない。
するとスラが、
『ポーションだっけ? あれ使えばよくね?』
何気ない顔で離れたところから俺を見上げた。
「おおっ。その手があったか」
「スラさん、頭いいですね~」
『えっそう? 普通じゃん』
そう言いながらスラはちょっと照れているようだ。
俺は早速布の袋の中からポーションを取り出すとそれをとぽとぽと頭にかけた。
頭と顔をポーションで洗う。
「ふ~……これでなんとか嫌な臭いは消えたな」
濡れた髪を手櫛でとかしながらにおいを嗅いでみるが問題なさそうだ。
よかった。
もう少しで風呂に入るためだけに家に帰るところだった。
「ごめんなスラ、あとでポーションはお前にやろうと思ってたのに」
『いいって別に。そんなことよりそろそろボアの肉食べない? あたしちょーお腹減ってきたんだけど』
スラが言うので、
「そうだな。じゃあ適当な場所探して食べるか」
『いぇーい。マツイさん、最っ高ー!』
俺たちは通路の行き止まりの小さなくぼみに座るようにして腰を落ち着けた。
「バトルマッチ!」
ぼうっと人差し指にともる炎でボアの肉をあぶり錆びた剣で引きちぎるように肉をカットする。
「ほら、スラ食べな」
『あーん』
俺はスラの口めがけてそれを放り投げた。
『あっつ! ……でも美味しいー!』
とろけるような表情を見せるスラ。
「ほら、ククリも」
俺がカットしたボアの肉を差し出すと、
「わーい、ありがとうございます。それではいただきますね」
ククリは小さい口であむっとそれを頬張った。
「う~ん、美味しいれす~」
ふたりの満足そうな顔を見て俺も自分で自分の口にあぶった肉片を運ぶ。
「うん、美味しい」
ボアの肉はやはりモンスターの肉とは思えないくらい美味しい。
A5ランクの肉だって目じゃないかもしれない。
……いや、食べたことはないんだけれど。
『マツイさん。もっと食べさせてー』
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