【ダンジョン・ニート・ダンジョン】 ~ダンジョン攻略でお金が稼げるようになったニートは有り余る時間でダンジョンに潜る~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中

文字の大きさ
上 下
145 / 233

第145話 金庫

しおりを挟む
「ないっ。なかった」

地下十三階層を二十分かけて歩き回った結果、宝箱こそ見つけたが食べ物はみつからなかった。
手に入れたのは空を飛ぶことの出来る防御力+3のヒーローマントと古びた金庫だけ。

『ピキ~……』
「マツイさん。もうこれは一旦家に帰るしかないんじゃないですか」
ククリが言う。

「とか言って俺に今回のダンジョン探索を切り上げさせて賢者の石を使わせる気だろ」
「えへへ~、バレました? でもでもスラさんがお腹を空かせているのは事実ですよ」
「うん、まあそれはそうなんだよな……」
スラを見ると空腹が限界に達してか目をぐるぐる回していた。

「ククリ、スラの空腹を放っておくとどうなるんだ?」
「まさか放っておくつもりですか? そんなことしたら私マツイさんの神経疑いますよ」
半目にしてククリが俺を見据える。

「違うって、念のため訊いてるだけだよ」
ククリに冷たい人間だと思われたくないのでちょっとだけその気があったということは黙っておく。

「それは人間と同じで最終的には死んじゃいますよ。モンスターの場合は消滅するって言った方が正しいかもしれませんけど」
「……そっか」

今回は妖刀ししおどしやらシルバーメイル、海賊の盾、腹減らずのお守りに影縫いのお守りなどいいアイテムが揃っているから出来ることならもっと深層階まで潜りたかったが……。

「ここまでか……」
俺は覚悟を決めた。

「……うん。地上に戻ろう」
「はい、そうしましょう」
『ピキ~……』

俺は海賊の盾を異次元袋にしまうとスラを抱きかかえて上の階へ続く階段のある部屋に向かうことにした。


その道中、
「そうだククリ、さっきのボロい金庫。あれ何に使うんだ?」
ついさっき手に入れていた古ぼけた金庫のことを訊いてみた。

「中にお金でも入ってるのか?」
なあんて、そんなことあるはずないよな。

「入ってますよ」
「だよな~そんなことあるはず……って、えっ!? お金入ってるのっ!?」
「だって金庫ですから」
とククリ。

「ちょ、ちょっと待って……」
俺は一旦立ち止まるとスラをそっと地面に寝かせて異次元袋から縦横三十センチくらいの金庫を取り出した。

「これの中にお金が入ってるのか?」
「だからそう言ってるじゃないですか。何回訊くんですか」
「い、いくらだ?」
「えーっと、ここは地下十三階層ですよね。ってことは百三十万円ですね」
ククリは宙を見上げながら答える。

「な、なんだよ、その意味深な言い方は。まるで階層が違ったら入っている金額も違うみたいな……」
「あ、マツイさん、冴えてますね~。そうですよ、その金庫は開ける時の階層の深さに応じて中身が変化するんです」
「なんですとっ!?」
おっと、つい驚きのあまり変な口調になってしまった。

「地下十階層で開ければ百万円ですし地下一階層なら十万円です」
「じ、じゃあもし地下百階層で開けたら……一千万円?」
「このトウキョウダンジョンがそんな深くまで存在してればですけどね」

マジかよ……ダンジョンすげぇ。

「じゃあこれ開けるよ。今開けるっ」
どうせあとは上の階層に上がっていくだけだからな。

「どうぞどうぞ」
ククリが手を差し出しすすめる。

「うん、じゃあ」
俺は金庫の取っ手に手をかけるが、
「ん、ん~……ん~……はあぁっ、はぁっ、なんだこれ、開かないぞっ」
びくともしない。

「マツイさん。その金庫は力ではどうやっても開きませんよ」
「じゃあどうやって開けるんだよ。刀で叩き切るか?」
「マツイさん、マツイさん。どんなカギでも開けられるカギってなんでしょうか?」
ククリは急に子どもをあやすようなテンションでなぞなぞみたいなことを言い出した。

どんなカギでも……?

――って、
「あっ!」
俺は異次元袋からあるものを掴むとそれを取り出してみせた。

「万能キーだなっ」
「正解で~す」
ぱちぱちと手を叩くククリ。
ちょっとバカにされてるような気がしないでもないが多分気のせいだろう。

俺は銀色に鈍く光る万能キーをカギ穴に差し込んで回し再度金庫の取っ手に手をかけた。

すると、
「……おおっ、開いたぞっ」
頑丈な金庫の扉が開いていく。

そして隙間から徐々に見えてくる札束。
いやがうえにも心臓の鼓動が早まってくる。

俺はつばを飲み込むと金庫の中の百三十万円に手を伸ばし――
『ピキ~……』
「あ、ごめんなスラ。これ取ったらすぐ帰るからなっ」
百三十万円に手を伸ばしこれを見事手に入れたのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された5人の勇者。彼等は同じ高校のクラスメイト同士であり、彼等を召喚したのはバルトロス帝国の3代目の国王だった。彼の話によると現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が世界各地に出現し、数多くの人々に被害を与えている事を伝える。そんな魔王軍に対抗するために帝国に代々伝わる召喚魔法によって異世界から勇者になれる素質を持つ人間を呼びだしたらしいが、たった一人だけ巻き込まれて召喚された人間がいた。 召喚された勇者の中でも小柄であり、他の4人には存在するはずの「女神の加護」と呼ばれる恩恵が存在しなかった。他の勇者に巻き込まれて召喚された「一般人」と判断された彼は魔王軍に対抗できないと見下され、召喚を実行したはずの帝国の人間から追い出される。彼は普通の魔術師ではなく、攻撃魔法は覚えられない「付与魔術師」の職業だったため、この職業の人間は他者を支援するような魔法しか覚えられず、強力な魔法を扱えないため、最初から戦力外と判断されてしまった。 しかし、彼は付与魔術師の本当の力を見抜き、付与魔法を極めて独自の戦闘方法を見出す。後に「聖天魔導士」と名付けられる「霧崎レナ」の物語が始まる―― ※今月は毎日10時に投稿します。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

処理中です...