【ダンジョン・ニート・ダンジョン】 ~ダンジョン攻略でお金が稼げるようになったニートは有り余る時間でダンジョンに潜る~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中

文字の大きさ
上 下
113 / 233

第113話 地下七階層~

しおりを挟む
二体のボアを難なく葬り去った俺はククリとスラを連れ地下七階層を練り歩く。
道中、投げ当てると相手を混乱させることの出来る黒曜の玉を手に入れたがほかにアイテムはみつからなかったので地下八階層へと続く階段の前に戻ってきた。

「次がスケルトンだろ、でその次がオークでその次がキマイラだったよな」
「そうですね」
とククリが答える。

「スラのレベル上げをするならやっぱり効率がいいオークかキマイラあたりかなぁ」
「オークコレクターは既に持っていますからどうせ狩るならキマイラの方がいいんじゃないですか」
より強いキマイラの方が経験値も高いのでククリの言うことももっともだが、
「でもキマイラは強いんだよな~」
三つの首があって特に催眠攻撃を仕掛けてくるヤギの顔が厄介なのだ。

「それならベアさんから買った目覚まし草があるから大丈夫ですよ」
とククリ。

「あっそうか。そういえば目覚まし草を買っておいたんだっけ」

目覚まし草。食べれば三日は眠気に襲われない便利なアイテム。
すっかり忘れていたがキマイラ対策にベアさんから買っておいたのだった。

「それでもマツイさんがどうしてもキマイラが怖いと言うならオークを相手にしてもいいですけど」
『ピキー?』
「べ、別に怖いとは言ってないって。目覚まし草があれば何も問題ないさ」
「そうですか。では地下十階層までさくさく行っちゃいましょう」
「お、おう」
『ピキー』


◇ ◇ ◇


俺たちはまずはスケルトンのいる地下八階層に下り立った。
スケルトンは剣を持った骸骨で動きが遅い。
恐怖を感じないモンスターなので骨をかち割りバラバラにして確実に消滅させていく。

地下八階層を歩き回りみつけたアイテムは攻撃力+40の地獄のかなづちと腹減らずのお守りの計二つ。

攻撃力+5の銅の剣と比べると明らかに地獄のかなづちの方が強力なのだが両手で持つと手がくっついて離れなくなるという呪いのおまけつきだった。
片手で振り回すには今の俺にはやや重く使いづらいためベアさんに会ったら売ってしまおうと布の袋の中に入れておいた。

一方の腹減らずのお守りは持っているだけで腹が減らなくなるというレアアイテムだったので俺は首からそれをぶら下げて行動を続けた。


◇ ◇ ◇


そして地下九階層。
鉄の槍を持った豚のようなモンスター、オークを蹴散らしながらアイテム探しに励む。

結果ドロップアイテムも含めて三つのアイテムを手に入れた。
魔力草とオークの肉と防御力+10の白い仮面だ。
白い仮面はその名の通り真っ白い仮面でかぶると前がまったく見えなくなってしまうという欠陥品だった。
魔眼を持っている俺には使えないことはないものの透視能力の連続使用は目が疲れるので白い仮面も布の袋行きとなった。


「さて、次がキマイラのいる地下十階層だ」
階段のある部屋まで来ると俺はククリとスラに念押しした。
「キマイラは強いからな。気をつけるんだぞ、特にスラ」
『ピキー』

俺はキマイラの催眠攻撃対策に目覚まし草を口に含んで――
「――ってちょっと待った!」
口から出した。

「急になんですかマツイさん?」
『ピキー?』
ククリとスラが不思議そうに俺を見る。

「早くそれ食べて行きましょうよ」
ククリは俺の持つ目覚まし草を指差し少しだけ面倒くさそうに言う。

「いや、駄目だ。よく考えたら大事なことを忘れていたぞ」
「大事なこと?」
「ああ。前に階段を下りたらフロアボスの部屋だったってことがあっただろ」
「あ~、ありましたねそんなことも」
その時は上に戻る階段まで石の壁で塞がれて逃げ道はなくなったのだった。

「だろ? もしこの階段下りてってキマイラロードの部屋だったらどうするんだよ。今回は帰還石も持ってないから逃げることも出来ないんだぞ」
「勝てばいいじゃないですか」
「無茶言うなよ。この前はキマイラにだって苦戦したのに銅の剣なんかでキマイラロードに勝てるか」
いくら目覚まし草があるとはいえスキル、キマイラコレクターも取得していない今キマイラロードに遭うのは非常にまずい気がする。

「怖いんですか?」
ククリが挑発的な目で俺をみつめるが今度はその手には乗らないぞ。
「ああ、怖いね。死んだらそれまでなんだからな」
今のニート生活に満足しているわけではないがだからといって死にたくはない。

「もう~、じゃあどうするんですか?」
「この階層でオーク狩りをしてレベルを上げる。今76だから最低でも100まで上げる」
レベルの上限がいくつかはわからないが。

「100っ!? そんなことしてたら何日かかるかわかりませんよ」
「いいんだよ、何日かかっても」
ニートの俺には時間だけは有り余るほどあるのだから。

「なんかいつになく強情ですねマツイさん」
「慎重と言ってくれ。スラのレベル上げにもなるし一石二鳥だろ」
「まあ……マツイさんがそうしたいのなら私はいいんですけどね、別に」
「スラはどうだ? このフロアでレベル上げ」
『ピキー!』
スラはぴょんと飛び跳ねるとにんまり笑った。
スラの言っていることは正直さっぱりだが喜んでいることはなんとなくわかる。

「じゃあ計画変更。ここからはオーク狩りだっ」
『ピキー!』

部屋に俺とスラの声が響き渡った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された5人の勇者。彼等は同じ高校のクラスメイト同士であり、彼等を召喚したのはバルトロス帝国の3代目の国王だった。彼の話によると現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が世界各地に出現し、数多くの人々に被害を与えている事を伝える。そんな魔王軍に対抗するために帝国に代々伝わる召喚魔法によって異世界から勇者になれる素質を持つ人間を呼びだしたらしいが、たった一人だけ巻き込まれて召喚された人間がいた。 召喚された勇者の中でも小柄であり、他の4人には存在するはずの「女神の加護」と呼ばれる恩恵が存在しなかった。他の勇者に巻き込まれて召喚された「一般人」と判断された彼は魔王軍に対抗できないと見下され、召喚を実行したはずの帝国の人間から追い出される。彼は普通の魔術師ではなく、攻撃魔法は覚えられない「付与魔術師」の職業だったため、この職業の人間は他者を支援するような魔法しか覚えられず、強力な魔法を扱えないため、最初から戦力外と判断されてしまった。 しかし、彼は付与魔術師の本当の力を見抜き、付与魔法を極めて独自の戦闘方法を見出す。後に「聖天魔導士」と名付けられる「霧崎レナ」の物語が始まる―― ※今月は毎日10時に投稿します。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

処理中です...