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第88話 オーク
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「か、勝った……」
さっきまで苦戦していたのが嘘のように俺はスケルトンリッチを倒すことに成功した。
「マツイさーん」
と飛んでくるククリに、
「おいククリ、魔法が効くならもっと早く教えてくれよな。結構ギリギリだったんだぞ」
俺は顔を向ける。
「まあいいじゃないですか、無事に勝てたんですから。それより宝箱の中身はなんですかね~?」
スケルトンリッチが消えた場所に現れた宝箱を見てククリが体を左右に揺らしながら言った。
「ったく」
フロアボスの落とす宝箱には罠はないので俺は透視はせずにこれを開けた。
「おおっ!」
「なんですか、なんですか?」
ククリは俺に体をぴとっとくっつけて宝箱を覗き込む。
宝箱の中には赤く光り輝く石が入っていた。
「わあっ! 帰還石じゃないですかっ。すご~い、やっぱり今回はついてますよっ」
「そうだな。これでだいぶ楽になるな」
帰還石は割るといつでもどこでも地上に帰れるアイテムだ。
フロアボスから逃げられるという利点もあるため初めて挑むボス戦では持っているに越したことはない。
「マツイさん、お金が欲しいのはわかりますけど前みたいに簡単に売らないでくださいよっ」
「わかってるよ」
売値が十万と高額なので前回は売ってしまったから使ったことはないのだ。
「トウキョウダンジョンに潜って四日半くらい経ちますけどまだ帰らなくても大丈夫ですか?」
地下九階層への階段を前にしてククリが訊いてくる。
「ん、今回はポチも預けてきてあるし満腹草を食べたから腹もまだそこまで減ってないし行けるとこまで行くつもりだよ」
「そうですか。ではそろそろ下りましょうか」
「ああ、そうしよう」
俺はククリとともに地下九階層へと足を進めた。
◇ ◇ ◇
地下九階層。
下りるとすぐに一つの宝箱が目に入ってきた。
近付くと罠でないことを確かめてからこれを開ける。
中に入っていたのは一輪のバラだった。
「なんだこれ?」
手に取って見定める。
「あ、マツイさん。それ持たない方がいいですよ」
「なんでだ?」
「それは呪いのバラといってそのバラのトゲに刺さると数十秒で死に至ります」
「うおぉいっ」
俺はバラを投げ捨てた。
「ククリっ、そういう大事なことは早く言えってば!」
「だって私が説明する前に取り出しちゃうんですもん」
「いや、それはそうだけど……」
……俺はこのダンジョンに慣れてきて少し気が緩んでいたのかもしれない。
もっと気をつけて行動しないとな。
「悪かった。今のは俺の不注意だった」
「そうですよ。マツイさんは慎重さだけが取り柄なんですからね。しっかりしてくださいよ、まったくもう」
「あ……うん」
俺ってそんな風に思われていたのか……。
『フー……フー……』
その時荒々しい鼻息が通路から聞こえてきた。
その鼻息の主が通路からのそっと姿を現す。
「マツイさん、出ましたよっ。この階のモンスター、オークですっ」
ククリが声を上げた。
ククリが指差すオークとやらは豚のような鼻に豚のような口、豚のような耳に……ってとにかく豚を二足歩行にしたようなモンスターだった。
フーフー鼻息を立てながら重そうな体を揺らして歩いてくる。
身長は百八十弱、俺と同じくらいか。
手には槍を持ちつぶらな瞳で俺を見据えていた。
「ちょっとキモカワイイですね」
ククリが言うが、
「どこがだよ。不気味だろあんなの」
俺からしたら可愛くもなんともない。
豚が槍持って向かってきているんだぞ。
「動きはのろそうだな」
「はい。マツイさんの素早さなら問題ないですよ」
俺はレベルとともに素早さも上がっている。
と同時に反射神経や動体視力もよくなっているようだった。
『フー……!』
オークが槍を突き出してきたが俺はこれをさっとかわす。
動きが止まって見える、とまでは言わないが俺にとってオークの攻撃はかなり遅く感じた。
これならオークの攻撃は当たらないだろう。
『フー……!』
オークはまたも槍で攻撃してくるが俺は刀を一振りして槍を叩き斬るともう一振りしてオークの胸を斬り裂いた。
妖刀ふたつなぎの効果で一瞬遅れてさらに深い斬撃がオークの胸を斬り裂く。
次の瞬間にはオークは絶命し消えていった。
「あっ、宝箱ですよっ」
見るとオークがいたところから宝箱が現れた。
一体目にしてドロップアイテムとは幸先がいい。
「うん、罠ではないな」
魔眼の透視能力で確認すると中身はピンク色の塊のように見えた。
開けてみると、
「肉……か?」
「肉ですね。オークの肉です」
ピンク色の肉塊が入っていた。
「せっかくだから焼いて食べてみましょうよ」
「え……これを食べるのか?」
さっきのオークを見た後ではあまり食欲がわかないが……。
「ボアの肉は美味しいって言って食べてたじゃないですか。これもきっと美味しいですよ」
「うーん、あっちはまんまイノシシだったからなぁ」
気乗りしないがククリが勧めるので食べてみることにする。
俺は魔力を5消費してバトルマッチを使い火を起こした。
持っていたたいまつに火をともしオークの肉を焼いて口へと運ぶ。
「どうですか? お味は?」
興味津々にククリが訊いてくる。
「うん……悪くはない」
というか美味しい。
「わあ、よかったじゃないですか。これでこの階にいる間は食べ物に事欠きませんね」
「まあ、そうだな」
腹が減ったら適当に薬草か魔力草でも食べようと思っていたからこれは嬉しい誤算だ。
「オークは経験値も割と高めですからここでしばらく稼げますね」
「その前にまずはアイテム収集だけどな」
「はーい」
俺とククリは階段のある部屋を抜け宝箱探しを開始した。
さっきまで苦戦していたのが嘘のように俺はスケルトンリッチを倒すことに成功した。
「マツイさーん」
と飛んでくるククリに、
「おいククリ、魔法が効くならもっと早く教えてくれよな。結構ギリギリだったんだぞ」
俺は顔を向ける。
「まあいいじゃないですか、無事に勝てたんですから。それより宝箱の中身はなんですかね~?」
スケルトンリッチが消えた場所に現れた宝箱を見てククリが体を左右に揺らしながら言った。
「ったく」
フロアボスの落とす宝箱には罠はないので俺は透視はせずにこれを開けた。
「おおっ!」
「なんですか、なんですか?」
ククリは俺に体をぴとっとくっつけて宝箱を覗き込む。
宝箱の中には赤く光り輝く石が入っていた。
「わあっ! 帰還石じゃないですかっ。すご~い、やっぱり今回はついてますよっ」
「そうだな。これでだいぶ楽になるな」
帰還石は割るといつでもどこでも地上に帰れるアイテムだ。
フロアボスから逃げられるという利点もあるため初めて挑むボス戦では持っているに越したことはない。
「マツイさん、お金が欲しいのはわかりますけど前みたいに簡単に売らないでくださいよっ」
「わかってるよ」
売値が十万と高額なので前回は売ってしまったから使ったことはないのだ。
「トウキョウダンジョンに潜って四日半くらい経ちますけどまだ帰らなくても大丈夫ですか?」
地下九階層への階段を前にしてククリが訊いてくる。
「ん、今回はポチも預けてきてあるし満腹草を食べたから腹もまだそこまで減ってないし行けるとこまで行くつもりだよ」
「そうですか。ではそろそろ下りましょうか」
「ああ、そうしよう」
俺はククリとともに地下九階層へと足を進めた。
◇ ◇ ◇
地下九階層。
下りるとすぐに一つの宝箱が目に入ってきた。
近付くと罠でないことを確かめてからこれを開ける。
中に入っていたのは一輪のバラだった。
「なんだこれ?」
手に取って見定める。
「あ、マツイさん。それ持たない方がいいですよ」
「なんでだ?」
「それは呪いのバラといってそのバラのトゲに刺さると数十秒で死に至ります」
「うおぉいっ」
俺はバラを投げ捨てた。
「ククリっ、そういう大事なことは早く言えってば!」
「だって私が説明する前に取り出しちゃうんですもん」
「いや、それはそうだけど……」
……俺はこのダンジョンに慣れてきて少し気が緩んでいたのかもしれない。
もっと気をつけて行動しないとな。
「悪かった。今のは俺の不注意だった」
「そうですよ。マツイさんは慎重さだけが取り柄なんですからね。しっかりしてくださいよ、まったくもう」
「あ……うん」
俺ってそんな風に思われていたのか……。
『フー……フー……』
その時荒々しい鼻息が通路から聞こえてきた。
その鼻息の主が通路からのそっと姿を現す。
「マツイさん、出ましたよっ。この階のモンスター、オークですっ」
ククリが声を上げた。
ククリが指差すオークとやらは豚のような鼻に豚のような口、豚のような耳に……ってとにかく豚を二足歩行にしたようなモンスターだった。
フーフー鼻息を立てながら重そうな体を揺らして歩いてくる。
身長は百八十弱、俺と同じくらいか。
手には槍を持ちつぶらな瞳で俺を見据えていた。
「ちょっとキモカワイイですね」
ククリが言うが、
「どこがだよ。不気味だろあんなの」
俺からしたら可愛くもなんともない。
豚が槍持って向かってきているんだぞ。
「動きはのろそうだな」
「はい。マツイさんの素早さなら問題ないですよ」
俺はレベルとともに素早さも上がっている。
と同時に反射神経や動体視力もよくなっているようだった。
『フー……!』
オークが槍を突き出してきたが俺はこれをさっとかわす。
動きが止まって見える、とまでは言わないが俺にとってオークの攻撃はかなり遅く感じた。
これならオークの攻撃は当たらないだろう。
『フー……!』
オークはまたも槍で攻撃してくるが俺は刀を一振りして槍を叩き斬るともう一振りしてオークの胸を斬り裂いた。
妖刀ふたつなぎの効果で一瞬遅れてさらに深い斬撃がオークの胸を斬り裂く。
次の瞬間にはオークは絶命し消えていった。
「あっ、宝箱ですよっ」
見るとオークがいたところから宝箱が現れた。
一体目にしてドロップアイテムとは幸先がいい。
「うん、罠ではないな」
魔眼の透視能力で確認すると中身はピンク色の塊のように見えた。
開けてみると、
「肉……か?」
「肉ですね。オークの肉です」
ピンク色の肉塊が入っていた。
「せっかくだから焼いて食べてみましょうよ」
「え……これを食べるのか?」
さっきのオークを見た後ではあまり食欲がわかないが……。
「ボアの肉は美味しいって言って食べてたじゃないですか。これもきっと美味しいですよ」
「うーん、あっちはまんまイノシシだったからなぁ」
気乗りしないがククリが勧めるので食べてみることにする。
俺は魔力を5消費してバトルマッチを使い火を起こした。
持っていたたいまつに火をともしオークの肉を焼いて口へと運ぶ。
「どうですか? お味は?」
興味津々にククリが訊いてくる。
「うん……悪くはない」
というか美味しい。
「わあ、よかったじゃないですか。これでこの階にいる間は食べ物に事欠きませんね」
「まあ、そうだな」
腹が減ったら適当に薬草か魔力草でも食べようと思っていたからこれは嬉しい誤算だ。
「オークは経験値も割と高めですからここでしばらく稼げますね」
「その前にまずはアイテム収集だけどな」
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