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第85話 ブラックボア
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部屋の前の通路から見たブラックボアは名前の通り真っ黒いイノシシでボアよりも一回り小さかった。
こっちを振り向くことなく静かに呼吸を繰り返している。
「あれがブラックボアか……なんならボアより弱そうだな」
「その意気ですよ、マツイさん。気持ちが大事です」
「ああ、じゃあいくぞ」
俺は部屋に足を踏み入れた。
その途端に石の壁が通路を覆い出入口が閉ざされた。
そしてブラックボアが俺に顔を向ける。
『フー!』
ボアと同じく前足で地面を蹴りながら威嚇してくる。
と次の瞬間ブラックボアが駆けだした。俺に向かって一直線に突進してくる。
確かにククリが言ったようにボアよりは動きが速いが避けられないことはない。
俺は左に軽く避け――
ズドッ!
ブラックボアは俺の動きに合わせて瞬時に向きを変え飛び掛かってきたのだった。
鋭い牙が腹に刺さる。
「がはっ」
俺を刺したまま壁に向かって走っていくブラックボア。
「このっ……」
俺は痛みに耐えながらブラックボアの牙を持ち何とか体から引き抜くと壁に激突する前に回避した。
勝手に壁に激突したブラックボアに俺は自滅していろと願ったがブラックボアは壊れた石片の中からぴんぴんして出てきた。
「ヒール!」
今負ったばかりの傷を治して俺は皮の袋から黒曜の玉を取り出した。
当てれば相手を混乱させることが出来るアイテムだ。
左手に黒曜の玉を持ち様子をうかがっているとまたもブラックボアが攻撃を仕掛けてきた。
再度俺めがけて突進してくる。
俺はある程度ひきつけてから黒曜の玉を投げた。
しかしブラックボアはジャンプしてそれを難なくかわした。黒曜の玉は地面にぶつかって割れる。
やっぱり動きが速い。
ブラックボアはジャンプしたまま俺に向かってきた。
ガキィィン。
ブラックボアの牙を今度は刀で受け止める。
そのまま力でもって押し返し距離を稼ぐがブラックボアは突進を止めない。
地面を蹴ってまたも突進してくる。
「ククリっ。こいつ思っていたより動きが速いぞっ」
「バトルアースで動きを封じてくださいっ」
バトルアース。
消費魔力40で相手を足止めする魔法、らしい。
消費魔力が多いので今まで使ったことはないが、
「バトルアース!」
わらにもすがる思いで唱えてみる。
すると石畳の隙間からツタが急速な勢いで伸びてきた。
そのツタがブラックボアの足に巻きつく。
『フー!?』
さっきまでの素早い動きが嘘のようにツタが絡まり身動き出来ないでいるブラックボア。
必死にもがくが、
「隙ありっ!」
俺はすかさず妖刀ふたつなぎを振り下ろした。
斬れ味鋭い二つの斬撃がブラックボアを襲う。
『フーッ……!!』
ブラックボアの首が石畳の上に落ちて転がった。
頭部と胴体部分がそれぞれ泡状になり霧散する。
「ふぅ……なんとか勝ったぞ」
「わーい、マツイさんやりましたね~――って首元が光ってますよ」
「ん、レベルが上がったか」
ブラックボアを倒したことにより俺のレベルはさらに一つ上がった。
そして、ゴゴゴゴゴ……と通路が開き階段も現れる。
続いて宝箱も出現した。
「宝箱開けてみましょうよ」
「ああ」
俺は宝箱に手をかけ蓋を開けた。
するとそこには、
「わあっ、魔石ですよっ」
青く輝く魔石が入っていた。
宝箱を覗き込んでいたククリが手を叩いて喜ぶ。
「マツイさん、久しぶりの魔石ですねっ。これがあればフロアボスも目じゃないですっ」
魔石は投げ当てたモンスターを一撃で倒す効果があるからククリはそんなことを言うが売値が十万円とニートにとっては使うのが惜しいアイテムでもあるのでこれから先使うかどうかは微妙なところだ。
俺は皮の袋の中にそっと魔石をしまい込むと、
「魔力もだいぶ消費したし一旦ここで休憩してもいいか?」
床に腰を下ろした。
「そうですね。バトルアースでほとんど使い切っちゃいましたからね魔力」
言いながらククリは俺の持つ皮の袋の中から「う~~ん……」と快眠枕を引っ張り出そうとする。
「あ、別に枕はいいぞ。ちょっと休むだけで」
まだ残り魔力は12あるし魔力草も持っているから何も寝なくてもいいのだが。
「大丈夫ですっ、こ、これくらいなら持てますから……」
ククリはふらふらと飛びながら快眠枕を床にぼふんと落とした。
そして、
「さあ、寝ていいですよっ」
と手を差し出す。
「いや、俺眠くないんだけど……」
「横になるだけでも睡眠効果の七割はあるって知ってますか?」
「いや、知らないけど……」
「いいからとにかく寝てくださいっ」
ククリの善意を無駄にするのも悪いので俺は仕方なく横になって目を閉じる。
「マツイさん、寝ましたか?」
「……起きてるよ」
「マツイさん、もう寝ましたか?」
「ナマケモノじゃないんだからそんなすぐには寝れないって」
「マツイさん――」
「まだ寝てないっ」
そうこうしながら十分が過ぎ俺は結局一睡も出来なかった。
だが、
「あれ? 寝てないのに魔力がだいぶ回復してるぞ」
「でしょう。何も眠らなくても横になるだけでも効果はあるんですよ」
快眠枕のおかげで俺の魔力は12から40まで回復していた。
「これでかなり余裕が出来たな」
「ではそろそろ次の階層に行きましょう」
「次は地下八階層か……」
階段に向かう。
「地下八階層のモンスターはスケルトンです。動きはのろいですし防御力も低いので大したことはないですけどみんな剣を持っているのでそれだけ注意してください」
「わかった。じゃあいくぞククリ」
「おーっ!」
俺たちは地下八階層へと歩みを進めた。
こっちを振り向くことなく静かに呼吸を繰り返している。
「あれがブラックボアか……なんならボアより弱そうだな」
「その意気ですよ、マツイさん。気持ちが大事です」
「ああ、じゃあいくぞ」
俺は部屋に足を踏み入れた。
その途端に石の壁が通路を覆い出入口が閉ざされた。
そしてブラックボアが俺に顔を向ける。
『フー!』
ボアと同じく前足で地面を蹴りながら威嚇してくる。
と次の瞬間ブラックボアが駆けだした。俺に向かって一直線に突進してくる。
確かにククリが言ったようにボアよりは動きが速いが避けられないことはない。
俺は左に軽く避け――
ズドッ!
ブラックボアは俺の動きに合わせて瞬時に向きを変え飛び掛かってきたのだった。
鋭い牙が腹に刺さる。
「がはっ」
俺を刺したまま壁に向かって走っていくブラックボア。
「このっ……」
俺は痛みに耐えながらブラックボアの牙を持ち何とか体から引き抜くと壁に激突する前に回避した。
勝手に壁に激突したブラックボアに俺は自滅していろと願ったがブラックボアは壊れた石片の中からぴんぴんして出てきた。
「ヒール!」
今負ったばかりの傷を治して俺は皮の袋から黒曜の玉を取り出した。
当てれば相手を混乱させることが出来るアイテムだ。
左手に黒曜の玉を持ち様子をうかがっているとまたもブラックボアが攻撃を仕掛けてきた。
再度俺めがけて突進してくる。
俺はある程度ひきつけてから黒曜の玉を投げた。
しかしブラックボアはジャンプしてそれを難なくかわした。黒曜の玉は地面にぶつかって割れる。
やっぱり動きが速い。
ブラックボアはジャンプしたまま俺に向かってきた。
ガキィィン。
ブラックボアの牙を今度は刀で受け止める。
そのまま力でもって押し返し距離を稼ぐがブラックボアは突進を止めない。
地面を蹴ってまたも突進してくる。
「ククリっ。こいつ思っていたより動きが速いぞっ」
「バトルアースで動きを封じてくださいっ」
バトルアース。
消費魔力40で相手を足止めする魔法、らしい。
消費魔力が多いので今まで使ったことはないが、
「バトルアース!」
わらにもすがる思いで唱えてみる。
すると石畳の隙間からツタが急速な勢いで伸びてきた。
そのツタがブラックボアの足に巻きつく。
『フー!?』
さっきまでの素早い動きが嘘のようにツタが絡まり身動き出来ないでいるブラックボア。
必死にもがくが、
「隙ありっ!」
俺はすかさず妖刀ふたつなぎを振り下ろした。
斬れ味鋭い二つの斬撃がブラックボアを襲う。
『フーッ……!!』
ブラックボアの首が石畳の上に落ちて転がった。
頭部と胴体部分がそれぞれ泡状になり霧散する。
「ふぅ……なんとか勝ったぞ」
「わーい、マツイさんやりましたね~――って首元が光ってますよ」
「ん、レベルが上がったか」
ブラックボアを倒したことにより俺のレベルはさらに一つ上がった。
そして、ゴゴゴゴゴ……と通路が開き階段も現れる。
続いて宝箱も出現した。
「宝箱開けてみましょうよ」
「ああ」
俺は宝箱に手をかけ蓋を開けた。
するとそこには、
「わあっ、魔石ですよっ」
青く輝く魔石が入っていた。
宝箱を覗き込んでいたククリが手を叩いて喜ぶ。
「マツイさん、久しぶりの魔石ですねっ。これがあればフロアボスも目じゃないですっ」
魔石は投げ当てたモンスターを一撃で倒す効果があるからククリはそんなことを言うが売値が十万円とニートにとっては使うのが惜しいアイテムでもあるのでこれから先使うかどうかは微妙なところだ。
俺は皮の袋の中にそっと魔石をしまい込むと、
「魔力もだいぶ消費したし一旦ここで休憩してもいいか?」
床に腰を下ろした。
「そうですね。バトルアースでほとんど使い切っちゃいましたからね魔力」
言いながらククリは俺の持つ皮の袋の中から「う~~ん……」と快眠枕を引っ張り出そうとする。
「あ、別に枕はいいぞ。ちょっと休むだけで」
まだ残り魔力は12あるし魔力草も持っているから何も寝なくてもいいのだが。
「大丈夫ですっ、こ、これくらいなら持てますから……」
ククリはふらふらと飛びながら快眠枕を床にぼふんと落とした。
そして、
「さあ、寝ていいですよっ」
と手を差し出す。
「いや、俺眠くないんだけど……」
「横になるだけでも睡眠効果の七割はあるって知ってますか?」
「いや、知らないけど……」
「いいからとにかく寝てくださいっ」
ククリの善意を無駄にするのも悪いので俺は仕方なく横になって目を閉じる。
「マツイさん、寝ましたか?」
「……起きてるよ」
「マツイさん、もう寝ましたか?」
「ナマケモノじゃないんだからそんなすぐには寝れないって」
「マツイさん――」
「まだ寝てないっ」
そうこうしながら十分が過ぎ俺は結局一睡も出来なかった。
だが、
「あれ? 寝てないのに魔力がだいぶ回復してるぞ」
「でしょう。何も眠らなくても横になるだけでも効果はあるんですよ」
快眠枕のおかげで俺の魔力は12から40まで回復していた。
「これでかなり余裕が出来たな」
「ではそろそろ次の階層に行きましょう」
「次は地下八階層か……」
階段に向かう。
「地下八階層のモンスターはスケルトンです。動きはのろいですし防御力も低いので大したことはないですけどみんな剣を持っているのでそれだけ注意してください」
「わかった。じゃあいくぞククリ」
「おーっ!」
俺たちは地下八階層へと歩みを進めた。
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