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第46話 百キロ超の握力
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「ククリっ」
「あっ、マツイさん」
自室のドアを開けるとククリがかき氷に口をつけていた。
「かき氷、美味しいですね」
「そんなことより今さっきだな……」
俺はスプーンが折れ曲がったことを話して聞かせた。
すると、
「はい。それはマツイさんの考え通りレベルが上がって力が強くなったからですよ」
ククリはかき氷を舌でなめながら言う。
「やっぱりか」
「マツイさんの攻撃力は30ですから大体成人男性の三倍くらいはあります。多分マツイさんの今の握力は百キロ以上あるんじゃないですかね~」
「百キロっ!?」
ゴブリンを千体も倒してレベルを23まで上げた結果俺の肉体は常人レベルを超えていたらしい。
「マジかよ。ゴリラじゃねぇか」
「いえ、ゴリラは握力五百キロあると言われているのでゴリラには遠く及びませんよ」
「あー……そう」
どこで仕入れた情報なのかどうでもいい知識を披露するククリ。
「力の加減さえ間違えなければ別に日常生活に支障はありませんよ。握力百キロ以上ある人なんて世の中にはごまんといますから」
「本当かよ」
少なくとも俺の周りにそんな怪力男はいないぞ。
「それより何か下が騒がしいようですけど見に行った方がいいんじゃないですか?」
ククリが床を指差しながら俺に言う。
「え? 下?」
俺は床に耳を近付けた。
「……ぅわー……すげー……」
確かに何やら声が聞こえてくる。
……なんか不安だ。
「悪い、ちょっと行ってくる」
俺は部屋を出て階段を下りた。
どんどん声が大きくなる。
どうやら紘介がはしゃいでいるようだ。
と、
「くぅん」
さっきまでソファの上で寝ていたポチが俺の足元にすり寄ってきた。
「なんだ、うるさくて起きちゃったのか? それとも腹が減ったのか?」
俺はポチの頭を数回撫でると「ここで待っててな」と言い置いて声のする玄関へと向かった。
「おーい、何してるんだ?」
見に行くと廊下に天使の靴を履いてバランスをとろうと両手を伸ばしている紘介の姿があった。
紘介は床からちょっとだけ浮いている。
「ひーくんおじちゃん、このくつすげー! そらとんでるー!」
「ごめんねひーくん、勝手にひーくんの靴履いたりして。すぐ脱がせるから」
「あー……うん」
俺がダンジョンから戻って来た時に履いていた天使の靴だった。
ちゃんと下駄箱にしまったはずなのに紘介の奴勝手に開けたのか。
「ほらこうちゃん、そのお靴はひーくんおじちゃんのだから脱がないと駄目だよ」
早紀姉ちゃんは優しく紘介を注意する。
宙に浮いているからか廊下で靴を履いていることに関しては別にどうでもいいらしい。
「ひーくんおじちゃん、これちょうだいっ! ようちえんにはいていくっ!」
「え……いやそれは駄目かなぁ」
「えーなんでなんでー?」
いや、そんなもの幼稚園に履いていったらSNSですぐ拡散してとんでもない騒ぎになってしまうだろうが。
「ひーくん、これどこで売ってたの?」
「どこって……さあ? 友達から借りたものだからわからないや」
と適当に嘘をついてみる。
「そうなんだぁ、じゃあしょうがないね。こうちゃんそれひーくんおじちゃんのお友達のものなんだって。だから早く脱ごうね」
「えー」
納得する様子のない紘介。
これだから子どもは苦手なんだ。
「じゃあこれと交換でどうだ?」
「……なにそれ?」
俺はポケットに入れていた薬草を差し出した。
「これはどんな怪我でも治すことの出来る薬だよ。紘介すぐ転んでひざすりむいたりするだろ。そういう時にこれを食べればあっという間に痛くなくなるから」
「ほんとにっ! すげー!」
痛くなくなるという言葉に惹かれたのか紘介の興味は天使の靴から薬草に移ったようだった。
「じゃあその靴は脱いでくれ」
「いいよっ、どうせぼくにはおおきすぎだしこれ。それよりそのくさはやくちょうだいっ!」
靴を脱いで身を乗り出してくる。
「ほら、大事にするんだぞ」
「わかった!」
「こうちゃん、ありがとうは?」
リビングに駆けだそうとして早紀姉ちゃんに止められる。
「ひーくんおじちゃんありがとー!」
「はいはい」
リビングに駆けていく紘介の背中を見送る俺と早紀姉ちゃん。
「元気だなぁ紘介は」
「そうだね~」
……さてとポチにエサでもやるかな。
「あっ、マツイさん」
自室のドアを開けるとククリがかき氷に口をつけていた。
「かき氷、美味しいですね」
「そんなことより今さっきだな……」
俺はスプーンが折れ曲がったことを話して聞かせた。
すると、
「はい。それはマツイさんの考え通りレベルが上がって力が強くなったからですよ」
ククリはかき氷を舌でなめながら言う。
「やっぱりか」
「マツイさんの攻撃力は30ですから大体成人男性の三倍くらいはあります。多分マツイさんの今の握力は百キロ以上あるんじゃないですかね~」
「百キロっ!?」
ゴブリンを千体も倒してレベルを23まで上げた結果俺の肉体は常人レベルを超えていたらしい。
「マジかよ。ゴリラじゃねぇか」
「いえ、ゴリラは握力五百キロあると言われているのでゴリラには遠く及びませんよ」
「あー……そう」
どこで仕入れた情報なのかどうでもいい知識を披露するククリ。
「力の加減さえ間違えなければ別に日常生活に支障はありませんよ。握力百キロ以上ある人なんて世の中にはごまんといますから」
「本当かよ」
少なくとも俺の周りにそんな怪力男はいないぞ。
「それより何か下が騒がしいようですけど見に行った方がいいんじゃないですか?」
ククリが床を指差しながら俺に言う。
「え? 下?」
俺は床に耳を近付けた。
「……ぅわー……すげー……」
確かに何やら声が聞こえてくる。
……なんか不安だ。
「悪い、ちょっと行ってくる」
俺は部屋を出て階段を下りた。
どんどん声が大きくなる。
どうやら紘介がはしゃいでいるようだ。
と、
「くぅん」
さっきまでソファの上で寝ていたポチが俺の足元にすり寄ってきた。
「なんだ、うるさくて起きちゃったのか? それとも腹が減ったのか?」
俺はポチの頭を数回撫でると「ここで待っててな」と言い置いて声のする玄関へと向かった。
「おーい、何してるんだ?」
見に行くと廊下に天使の靴を履いてバランスをとろうと両手を伸ばしている紘介の姿があった。
紘介は床からちょっとだけ浮いている。
「ひーくんおじちゃん、このくつすげー! そらとんでるー!」
「ごめんねひーくん、勝手にひーくんの靴履いたりして。すぐ脱がせるから」
「あー……うん」
俺がダンジョンから戻って来た時に履いていた天使の靴だった。
ちゃんと下駄箱にしまったはずなのに紘介の奴勝手に開けたのか。
「ほらこうちゃん、そのお靴はひーくんおじちゃんのだから脱がないと駄目だよ」
早紀姉ちゃんは優しく紘介を注意する。
宙に浮いているからか廊下で靴を履いていることに関しては別にどうでもいいらしい。
「ひーくんおじちゃん、これちょうだいっ! ようちえんにはいていくっ!」
「え……いやそれは駄目かなぁ」
「えーなんでなんでー?」
いや、そんなもの幼稚園に履いていったらSNSですぐ拡散してとんでもない騒ぎになってしまうだろうが。
「ひーくん、これどこで売ってたの?」
「どこって……さあ? 友達から借りたものだからわからないや」
と適当に嘘をついてみる。
「そうなんだぁ、じゃあしょうがないね。こうちゃんそれひーくんおじちゃんのお友達のものなんだって。だから早く脱ごうね」
「えー」
納得する様子のない紘介。
これだから子どもは苦手なんだ。
「じゃあこれと交換でどうだ?」
「……なにそれ?」
俺はポケットに入れていた薬草を差し出した。
「これはどんな怪我でも治すことの出来る薬だよ。紘介すぐ転んでひざすりむいたりするだろ。そういう時にこれを食べればあっという間に痛くなくなるから」
「ほんとにっ! すげー!」
痛くなくなるという言葉に惹かれたのか紘介の興味は天使の靴から薬草に移ったようだった。
「じゃあその靴は脱いでくれ」
「いいよっ、どうせぼくにはおおきすぎだしこれ。それよりそのくさはやくちょうだいっ!」
靴を脱いで身を乗り出してくる。
「ほら、大事にするんだぞ」
「わかった!」
「こうちゃん、ありがとうは?」
リビングに駆けだそうとして早紀姉ちゃんに止められる。
「ひーくんおじちゃんありがとー!」
「はいはい」
リビングに駆けていく紘介の背中を見送る俺と早紀姉ちゃん。
「元気だなぁ紘介は」
「そうだね~」
……さてとポチにエサでもやるかな。
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