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第42話 毒の沼地
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地下三階層。
ついさっきゾンビに腐った液体をかけられたことによって鋼の剣もくさりかたびらもすっかり錆びてしまった。
こうなると攻撃力+2の錆びた剣はともかくとして防御力が0になってしまった錆びたくさりかたびらはもうただの重たい金属でしかない。
仕方なく俺は錆びたくさりかたびらを脱ぎ捨てると裸になった。
「マツイさん、恥ずかしいとか言ってたのに結局脱ぐんですね」
「しょうがないだろ。重いんだから」
身軽になった俺の恰好は裸に天使の靴と皮の帽子というなんとも人に見られたくない姿だがここにはククリとモンスターしかいないのだからもう気にしないことにした。
慣れというのはおそろしいものであれだけ恥ずかしかったはずの裸姿が今ではどうでもよくなりつつある。
「その剣も使い物にならないんじゃないですか? 弓と交換した方がよくないですか?」
「うーん、そうだなぁ……」
俺の肩にかけた布の袋の中には攻撃力+10の鋼の弓が入っている。
「でもな、俺は剣の方が使いやすいんだよ」
弓は使ったことがないが剣ならば元剣道部の実力が発揮できる。
「そうですか。まあマツイさんの扱いやすい方でいいですけどね」
「ああ、じゃあこのまま錆びた剣を使うよ」
「それよりまたゾンビも千体倒してゾンビコレクターを取得するつもりですか?」
「そうしたいのはやまやまだけど……」
俺の現在の装備品は攻撃力+2の錆びた剣と防御力+1の皮の帽子、それと防御力+2の天使の靴の三点。
ゾンビを千体も狩るには少々心もとない。
「とりあえずアイテム探しを先にするかな。ゾンビ狩りはみつけたアイテム次第ってところだな」
「わかりました」
俺は魔眼の透視能力でなるべくゾンビと出遭わないようにしながらフロアを歩いて回った。
それでも遭遇してしまった場合は頭部を狙ってゾンビを倒していった。
斬れ味の悪い錆びた剣では力任せの剣術になってしまうがそれは仕方のないことだった。
「はぁっ、しんどい……」
「大丈夫ですか? マツイさん」
「……いや。やっぱりもっといい武器をみつけないと、はぁっ……千体倒すなんて無理だっ……」
千体倒すどころかこっちの体力が先になくなってしまう。
剣の斬れ味でこうも体力の消耗具合が変わるものだとは知らなかった。
俺は肩で息をしながらとにかくアイテム探しを続けた。
「あっ、あそこに宝箱がありますよ!」
通路を進んでいるとククリが口にした。
顔を上げると確かに前方に宝箱が見える。
「おおっ、本当だっ……」
だが、
「あの宝箱の前にある黒い地面はなんだ?」
よく見ると宝箱の前の道が石畳ではなく異様なほどどす黒い湿地に変わっていた。
ぬらぬらと濡れていて不気味だ。
「あれは毒の沼地ですね」
淡々と説明するククリ。
「毒の沼地?」
「はい。あそこに入ると毒に侵されます」
「なんだそれ。どうすればいいんだよ」
「そうですね~、あの宝箱は諦めるか毒に侵されるのを覚悟で突っ切るかですね」
ククリはどこか楽しそうに言う。
「マツイさんは解毒魔法のキュアを覚えていますから毒に侵されても心配はいりませんよ」
「やだよっ」
みすみす毒に侵されたくなどない。
「俺の代わりにククリが取ってくるっていうのはどうだ?」
「いいですけど私五百グラム以上のものは持てませんからね」
「そんな……」
それは困る。
武器や防具は大概五百グラム以上はあるはずだ。
俺が頭を悩ませているとククリがちらちら俺の顔を見ていた。
「なんだククリ?」
「あのう……マツイさんが本気で忘れているようだからもう言っちゃいますけど、マツイさんは今天使の靴を履いているんですよ」
「え?」
「つまり毒の沼地を踏むことはないんですよ」
俺の足元には天使の靴。
天使の靴の効果で俺は一センチばかり地面から浮いているのだった。
「そっか、すっかり忘れてた!」
俺が履いていたのは天使の靴だったということを完全に失念していた。
「これを履いていれば毒に侵されずに済むのか?」
「もちろんですっ」
自信満々に言いきるククリ。
俺は毒の沼地の前まで近付くと「じゃあ……」と足を一歩踏み出してみた。
ククリのことを信用していないわけではないがやはり一歩目は緊張する。
ふわっ。
「おおっ!」
毒の沼地には一切触れることなく俺は宝箱の前まで歩いていくことに成功した。
「天使の靴の効果が初めて役に立ったな」
「えへへ、そうですね」
俺は宝箱を魔眼の透視能力で確認する。
「これで罠だったらへこむなぁ……」
言いながら中身を透かしてみると、
「なんだこれ? 服か?」
見えたのは布地だった。
罠じゃなさそうなので開けてみると中には上下セットの迷彩服が入っていた。
「これって……迷彩服だよな?」
手に持ってククリに見せる。
「はい。これは防御力+2の迷彩服ですね」
俺は迷彩服を裸の上に着こむとポーズをとってみた。
「わあ、かっこいいですよマツイさん!」
本気なのかお世辞なのかわからないことを言うククリだが、
「まあ、ないよりはましか」
俺は意外と迷彩服を気に入った。
と、正直ここまではよかったのだがここからがまったくついていなかった。
なぜかというとあと四つ宝箱をみつけたのだがそれらすべてが罠だったのだ。
開けたらドカンといく仕掛けが施されてあったり、中にゾンビが入っていたりととても開けられる代物ではなかった。
さらにフロアボスのマーダーゾンビのいる部屋はフロアの真ん中にあったのでそこを通ることが出来ず片側しか探索出来なかった。
よって、
「新しい武器手に入りませんでしたね」
「ああ、そうだな」
俺の装備品は変わらずじまいだった。
さらにさらにがっくりときていたそんなときに限って『アー……』とゾンビの群れが姿を見せた。
「うおっ!? すごい数だぞっ」
「七体……いえ、八体いますねっ」
泣きっ面に蜂とはこのことだ。
ゾンビが一斉に襲い掛かってきた。動きこそのろいがとても全部は相手に出来ない。
ここで俺の腹は決まった。
「ククリっ……引き返すぞっ!」
ついさっきゾンビに腐った液体をかけられたことによって鋼の剣もくさりかたびらもすっかり錆びてしまった。
こうなると攻撃力+2の錆びた剣はともかくとして防御力が0になってしまった錆びたくさりかたびらはもうただの重たい金属でしかない。
仕方なく俺は錆びたくさりかたびらを脱ぎ捨てると裸になった。
「マツイさん、恥ずかしいとか言ってたのに結局脱ぐんですね」
「しょうがないだろ。重いんだから」
身軽になった俺の恰好は裸に天使の靴と皮の帽子というなんとも人に見られたくない姿だがここにはククリとモンスターしかいないのだからもう気にしないことにした。
慣れというのはおそろしいものであれだけ恥ずかしかったはずの裸姿が今ではどうでもよくなりつつある。
「その剣も使い物にならないんじゃないですか? 弓と交換した方がよくないですか?」
「うーん、そうだなぁ……」
俺の肩にかけた布の袋の中には攻撃力+10の鋼の弓が入っている。
「でもな、俺は剣の方が使いやすいんだよ」
弓は使ったことがないが剣ならば元剣道部の実力が発揮できる。
「そうですか。まあマツイさんの扱いやすい方でいいですけどね」
「ああ、じゃあこのまま錆びた剣を使うよ」
「それよりまたゾンビも千体倒してゾンビコレクターを取得するつもりですか?」
「そうしたいのはやまやまだけど……」
俺の現在の装備品は攻撃力+2の錆びた剣と防御力+1の皮の帽子、それと防御力+2の天使の靴の三点。
ゾンビを千体も狩るには少々心もとない。
「とりあえずアイテム探しを先にするかな。ゾンビ狩りはみつけたアイテム次第ってところだな」
「わかりました」
俺は魔眼の透視能力でなるべくゾンビと出遭わないようにしながらフロアを歩いて回った。
それでも遭遇してしまった場合は頭部を狙ってゾンビを倒していった。
斬れ味の悪い錆びた剣では力任せの剣術になってしまうがそれは仕方のないことだった。
「はぁっ、しんどい……」
「大丈夫ですか? マツイさん」
「……いや。やっぱりもっといい武器をみつけないと、はぁっ……千体倒すなんて無理だっ……」
千体倒すどころかこっちの体力が先になくなってしまう。
剣の斬れ味でこうも体力の消耗具合が変わるものだとは知らなかった。
俺は肩で息をしながらとにかくアイテム探しを続けた。
「あっ、あそこに宝箱がありますよ!」
通路を進んでいるとククリが口にした。
顔を上げると確かに前方に宝箱が見える。
「おおっ、本当だっ……」
だが、
「あの宝箱の前にある黒い地面はなんだ?」
よく見ると宝箱の前の道が石畳ではなく異様なほどどす黒い湿地に変わっていた。
ぬらぬらと濡れていて不気味だ。
「あれは毒の沼地ですね」
淡々と説明するククリ。
「毒の沼地?」
「はい。あそこに入ると毒に侵されます」
「なんだそれ。どうすればいいんだよ」
「そうですね~、あの宝箱は諦めるか毒に侵されるのを覚悟で突っ切るかですね」
ククリはどこか楽しそうに言う。
「マツイさんは解毒魔法のキュアを覚えていますから毒に侵されても心配はいりませんよ」
「やだよっ」
みすみす毒に侵されたくなどない。
「俺の代わりにククリが取ってくるっていうのはどうだ?」
「いいですけど私五百グラム以上のものは持てませんからね」
「そんな……」
それは困る。
武器や防具は大概五百グラム以上はあるはずだ。
俺が頭を悩ませているとククリがちらちら俺の顔を見ていた。
「なんだククリ?」
「あのう……マツイさんが本気で忘れているようだからもう言っちゃいますけど、マツイさんは今天使の靴を履いているんですよ」
「え?」
「つまり毒の沼地を踏むことはないんですよ」
俺の足元には天使の靴。
天使の靴の効果で俺は一センチばかり地面から浮いているのだった。
「そっか、すっかり忘れてた!」
俺が履いていたのは天使の靴だったということを完全に失念していた。
「これを履いていれば毒に侵されずに済むのか?」
「もちろんですっ」
自信満々に言いきるククリ。
俺は毒の沼地の前まで近付くと「じゃあ……」と足を一歩踏み出してみた。
ククリのことを信用していないわけではないがやはり一歩目は緊張する。
ふわっ。
「おおっ!」
毒の沼地には一切触れることなく俺は宝箱の前まで歩いていくことに成功した。
「天使の靴の効果が初めて役に立ったな」
「えへへ、そうですね」
俺は宝箱を魔眼の透視能力で確認する。
「これで罠だったらへこむなぁ……」
言いながら中身を透かしてみると、
「なんだこれ? 服か?」
見えたのは布地だった。
罠じゃなさそうなので開けてみると中には上下セットの迷彩服が入っていた。
「これって……迷彩服だよな?」
手に持ってククリに見せる。
「はい。これは防御力+2の迷彩服ですね」
俺は迷彩服を裸の上に着こむとポーズをとってみた。
「わあ、かっこいいですよマツイさん!」
本気なのかお世辞なのかわからないことを言うククリだが、
「まあ、ないよりはましか」
俺は意外と迷彩服を気に入った。
と、正直ここまではよかったのだがここからがまったくついていなかった。
なぜかというとあと四つ宝箱をみつけたのだがそれらすべてが罠だったのだ。
開けたらドカンといく仕掛けが施されてあったり、中にゾンビが入っていたりととても開けられる代物ではなかった。
さらにフロアボスのマーダーゾンビのいる部屋はフロアの真ん中にあったのでそこを通ることが出来ず片側しか探索出来なかった。
よって、
「新しい武器手に入りませんでしたね」
「ああ、そうだな」
俺の装備品は変わらずじまいだった。
さらにさらにがっくりときていたそんなときに限って『アー……』とゾンビの群れが姿を見せた。
「うおっ!? すごい数だぞっ」
「七体……いえ、八体いますねっ」
泣きっ面に蜂とはこのことだ。
ゾンビが一斉に襲い掛かってきた。動きこそのろいがとても全部は相手に出来ない。
ここで俺の腹は決まった。
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