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第37話 落とし穴
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地下二階層に下りるとその部屋にはハニーベアのベアさんがいた。
ベアさんは自らもダンジョンに潜りアイテムを探すかたわらアイテムの移動販売をしている変わったモンスターだ。
「ベアさん!」
『おう、ククリじゃないか。それとマツイだったか、生きてたみたいだな』
俺とククリの方を見てにっこり微笑むベアさんだったがその顔もまたいかつい。
『なんだマツイ、前会った時よりだいぶ様になってるじゃないか。いい体つきと顔つきだ』
俺の全身を眺めながらベアさんが言う。
「ど、どうも」
『それにアイテムも結構持ってるな。どうだ何か売りたいものでもあるか?』
「えーっと……じゃあ薬草五つと魔力草一つとあとこのこんぼうを売りたいんですけど」
手持ちの薬草は六つ、魔力草は二つ。一つずつ残してあとは売ってしまおう。
『薬草は一つ十円、魔力草は百円、こんぼうは五百円だから全部で六百五十円だな』
「六百五十円ですか……」
正直思っていたより安かったがまあそんなものか。
「じゃあそれでお願いします」
『あいよ』
俺はそれらを売ると六百五十円を受け取った。
『マツイ、たまには売るだけじゃなく買っていってくれよな』
とベアさん。
「そうですよマツイさん。こんなにも商品があるんですから何か買っていきましょうよ」
ククリがベアさんの足元にある商品の数々を指して言う。
「でも六百五十円じゃなぁ……」
商品に目を落としてみるが一番安い木刀でも千円もする。今の俺には手が出ない。
「ベアさん、まだこの階層にいるつもりですか?」
『ん? どうだろうな。まあもうしばらくはいると思うぜ』
「だったらこれからこのフロアを探索してくるので待っててもらえませんか? そうしたらもっと売れるアイテムが手に入っているかもしれないんで」
『ああ、そういうことか。別にいいぜ、好きにしな』
「ありがとうございます」
まだ地下二階層のアイテムはとっていないしゴブリンを倒していればドロップアイテムが手に入るかもしれない。
それからまたベアさんに会いにくればいい。
「じゃあ俺たち行きますね」
「行ってきまーす、ベアさん」
『おう、せいぜいすごいアイテムみつけて来いよっ』
ベアさんの励ましの声を背に俺たちはベアさんと一旦別れてゴブリン狩りとアイテム探しを並行して行うことにした。
現在の俺の装備品は攻撃力+2の錆びた剣と防御力+2の皮のポンチョと防御力+1の運動靴だ。
それと薬草と魔力草とにおい袋が一つずつ。
頼りない装備だがゴブリン相手なら油断しなければ問題ないだろう。
俺は魔眼の透視能力を活用しながらフロア探索を進めていく。
ベアさんがいた部屋から道なりに沿って歩いていくとその先で通路が五つに分かれていた。
「どれにするか……」
「私一番右がいいと思いますっ。きっといいことが待っているはずですっ」
ククリが手と声を同時に上げる。
「なんで? 右の道にアイテムでもあるのか?」
精霊の特殊能力か何かで未来が予知できるとか?
「わかりません。ただの勘です」
胸を張り堂々と言いきるククリ。
「なんだよそれ」
「でも私の勘て結構当たるんですよっ」
「本当かよ」
俺の透視能力の方が確実だろ。
俺はククリに内緒で試しに透視してみた……が、この先の道は入り組んでいて壁一枚しか見通せない俺の半端な透視能力では先がどうなっているのかはわからなかった。
「うーん……じゃあククリの勘を信じて一番右に行ってみるか」
「やったー」
ククリは飛びながらその場で宙返りをしてみせた。
分かれ道の一番右側の通路を選ぶと俺たちは先へ先へと歩を進めた。
するとしばらくして通路の真ん中が不自然にへこんでいるのが目に映った。
?
違和感を覚えつつ俺は一応魔眼の透視能力を発動させる。とそこに落とし穴があるのが確認できた。
しかもそこに落ちてくるのを待ち構えている四体のゴブリンたちの姿もある。
罠か……?
そのまま通り過ぎようかとも思ったのだがあとあと背後から襲われるのも癪なので俺は落とし穴に向かって錆びた剣を突き刺した。
『ギギッ……!』
一体のゴブリンの頭に剣が突き刺さる。
『ギギッ!』
『ギギッ!?』
『ギギッ……!』
それを間近で見た残りのゴブリンたちが落とし穴の中で慌てふためいている。
俺はその様子を透視しながらさらに剣を突き立てた。
『ギギッ……!』
またもゴブリンの頭に直撃しこれを葬り去る。
『ギギッ』
『ギギッ』
そこでようやく残る二体のゴブリンが落とし穴から飛び出てきた。
ぎりぎりと歯をかみしめながら俺をにらみつけてくる。
落とし穴を挟んで相対していると一体のゴブリンが大きくジャンプして飛び掛かってきた。
俺は剣を持った右手を伸ばした。
『ギッ……』
錆びた剣が見事ゴブリンの体を貫通する。
『ギギッ!』
それを見計らったかのようにもう一体のゴブリンが落とし穴を回り込んできた。
「マツイさん右から来てますっ!」
ククリの声が飛ぶ。
こっちはおとりかっ……!?
「おりゃあっ!」
俺はゴブリンが刺さったままの剣を斜めに振り下ろした。
ゴブリンが剣から抜けて右から迫っていたゴブリンに激突する。
『ギッ!?』
その一瞬のひるんだ隙を逃さず俺は、
「面っ!」
これぞ一本というあざやかな面をゴブリンの頭にお見舞いした。
斬れ味の悪い錆びた剣がゴブリンの頭を剣の形にへこませる。
泡状になって消滅するゴブリンたちを横目に俺は、
「何がいいことが待っているだよ。待っていたのは落とし穴とゴブリンだったじゃないか」
ククリに物申した。
「待ってくださいよマツイさんっ。ほらそこに宝箱があるじゃないですか、きっとその中身はいいものですよ、期待してくださいっ」
ククリはゴブリンがいたところを指差しながら返した。
見ると確かに宝箱はあるが……。
「どうせそれも勘なんだろ」
言いながら俺は宝箱に近付いていく。
そして透視で罠じゃないことを確認してから……。
「開けるぞ」
ゆっくり開けた宝箱の中に入っていたのは――
赤く光り輝く石だった。
ベアさんは自らもダンジョンに潜りアイテムを探すかたわらアイテムの移動販売をしている変わったモンスターだ。
「ベアさん!」
『おう、ククリじゃないか。それとマツイだったか、生きてたみたいだな』
俺とククリの方を見てにっこり微笑むベアさんだったがその顔もまたいかつい。
『なんだマツイ、前会った時よりだいぶ様になってるじゃないか。いい体つきと顔つきだ』
俺の全身を眺めながらベアさんが言う。
「ど、どうも」
『それにアイテムも結構持ってるな。どうだ何か売りたいものでもあるか?』
「えーっと……じゃあ薬草五つと魔力草一つとあとこのこんぼうを売りたいんですけど」
手持ちの薬草は六つ、魔力草は二つ。一つずつ残してあとは売ってしまおう。
『薬草は一つ十円、魔力草は百円、こんぼうは五百円だから全部で六百五十円だな』
「六百五十円ですか……」
正直思っていたより安かったがまあそんなものか。
「じゃあそれでお願いします」
『あいよ』
俺はそれらを売ると六百五十円を受け取った。
『マツイ、たまには売るだけじゃなく買っていってくれよな』
とベアさん。
「そうですよマツイさん。こんなにも商品があるんですから何か買っていきましょうよ」
ククリがベアさんの足元にある商品の数々を指して言う。
「でも六百五十円じゃなぁ……」
商品に目を落としてみるが一番安い木刀でも千円もする。今の俺には手が出ない。
「ベアさん、まだこの階層にいるつもりですか?」
『ん? どうだろうな。まあもうしばらくはいると思うぜ』
「だったらこれからこのフロアを探索してくるので待っててもらえませんか? そうしたらもっと売れるアイテムが手に入っているかもしれないんで」
『ああ、そういうことか。別にいいぜ、好きにしな』
「ありがとうございます」
まだ地下二階層のアイテムはとっていないしゴブリンを倒していればドロップアイテムが手に入るかもしれない。
それからまたベアさんに会いにくればいい。
「じゃあ俺たち行きますね」
「行ってきまーす、ベアさん」
『おう、せいぜいすごいアイテムみつけて来いよっ』
ベアさんの励ましの声を背に俺たちはベアさんと一旦別れてゴブリン狩りとアイテム探しを並行して行うことにした。
現在の俺の装備品は攻撃力+2の錆びた剣と防御力+2の皮のポンチョと防御力+1の運動靴だ。
それと薬草と魔力草とにおい袋が一つずつ。
頼りない装備だがゴブリン相手なら油断しなければ問題ないだろう。
俺は魔眼の透視能力を活用しながらフロア探索を進めていく。
ベアさんがいた部屋から道なりに沿って歩いていくとその先で通路が五つに分かれていた。
「どれにするか……」
「私一番右がいいと思いますっ。きっといいことが待っているはずですっ」
ククリが手と声を同時に上げる。
「なんで? 右の道にアイテムでもあるのか?」
精霊の特殊能力か何かで未来が予知できるとか?
「わかりません。ただの勘です」
胸を張り堂々と言いきるククリ。
「なんだよそれ」
「でも私の勘て結構当たるんですよっ」
「本当かよ」
俺の透視能力の方が確実だろ。
俺はククリに内緒で試しに透視してみた……が、この先の道は入り組んでいて壁一枚しか見通せない俺の半端な透視能力では先がどうなっているのかはわからなかった。
「うーん……じゃあククリの勘を信じて一番右に行ってみるか」
「やったー」
ククリは飛びながらその場で宙返りをしてみせた。
分かれ道の一番右側の通路を選ぶと俺たちは先へ先へと歩を進めた。
するとしばらくして通路の真ん中が不自然にへこんでいるのが目に映った。
?
違和感を覚えつつ俺は一応魔眼の透視能力を発動させる。とそこに落とし穴があるのが確認できた。
しかもそこに落ちてくるのを待ち構えている四体のゴブリンたちの姿もある。
罠か……?
そのまま通り過ぎようかとも思ったのだがあとあと背後から襲われるのも癪なので俺は落とし穴に向かって錆びた剣を突き刺した。
『ギギッ……!』
一体のゴブリンの頭に剣が突き刺さる。
『ギギッ!』
『ギギッ!?』
『ギギッ……!』
それを間近で見た残りのゴブリンたちが落とし穴の中で慌てふためいている。
俺はその様子を透視しながらさらに剣を突き立てた。
『ギギッ……!』
またもゴブリンの頭に直撃しこれを葬り去る。
『ギギッ』
『ギギッ』
そこでようやく残る二体のゴブリンが落とし穴から飛び出てきた。
ぎりぎりと歯をかみしめながら俺をにらみつけてくる。
落とし穴を挟んで相対していると一体のゴブリンが大きくジャンプして飛び掛かってきた。
俺は剣を持った右手を伸ばした。
『ギッ……』
錆びた剣が見事ゴブリンの体を貫通する。
『ギギッ!』
それを見計らったかのようにもう一体のゴブリンが落とし穴を回り込んできた。
「マツイさん右から来てますっ!」
ククリの声が飛ぶ。
こっちはおとりかっ……!?
「おりゃあっ!」
俺はゴブリンが刺さったままの剣を斜めに振り下ろした。
ゴブリンが剣から抜けて右から迫っていたゴブリンに激突する。
『ギッ!?』
その一瞬のひるんだ隙を逃さず俺は、
「面っ!」
これぞ一本というあざやかな面をゴブリンの頭にお見舞いした。
斬れ味の悪い錆びた剣がゴブリンの頭を剣の形にへこませる。
泡状になって消滅するゴブリンたちを横目に俺は、
「何がいいことが待っているだよ。待っていたのは落とし穴とゴブリンだったじゃないか」
ククリに物申した。
「待ってくださいよマツイさんっ。ほらそこに宝箱があるじゃないですか、きっとその中身はいいものですよ、期待してくださいっ」
ククリはゴブリンがいたところを指差しながら返した。
見ると確かに宝箱はあるが……。
「どうせそれも勘なんだろ」
言いながら俺は宝箱に近付いていく。
そして透視で罠じゃないことを確認してから……。
「開けるぞ」
ゆっくり開けた宝箱の中に入っていたのは――
赤く光り輝く石だった。
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