【ダンジョン・ニート・ダンジョン】 ~ダンジョン攻略でお金が稼げるようになったニートは有り余る時間でダンジョンに潜る~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中

文字の大きさ
上 下
32 / 233

第32話 三度目のトウキョウダンジョン

しおりを挟む
写し鏡の門を抜けるとそこにククリの姿は……なかった。

「ククリ……」

ククリが心配だ。
早く探さないと。

俺は茶室の小さい小窓のような通路をはいはいで進むと開けた場所に出る。

「おーい! ククリー!」

スライムに気付かれようが知ったことか、俺は大声でククリの名を叫んだ。

……。

なんの反応もない。
ククリはおろかスライム一匹寄ってこない。

どこにいるんだククリ……無事なのか?

やっぱりククリと別れた地下二階層に行くべきか? 俺がそう考えを巡らせた時だった。
 
「わっ!!」

右耳のすぐ後ろから声が上がった。

「うおっ!?」
俺は突然の大声にびっくりしてその場にへたり込んでしまう。

「あっ、すいませんマツイさん、大丈夫ですかっ? そんな驚くとは思わなかったので……」
「……ククリ? お前……無事だったのか……?」
「? 全然元気ですよ」
あっけらかんとした顔で俺を見下ろしていたのはククリだった。

「えへへ、慎重なマツイさんのことだから絶対地下一階層から始めると思って隠れて待っていたんですよ私……ってそれにしても私あれほど注意していたのに。マツイさん、時間オーバーで強制退出させられちゃうんですもん、心配しましたよっ」
「心配ってそれは俺のセリフだろ。ボウガンを持ったゴブリンとお前を残してダンジョンの外に出されたから心配してたんだぞ。俺がいなくなった後どうなったんだよ?」

「あ~、そのことですか。それならあのゴブリンは私に狙いを定めてボウガンを撃ってきましたよ」
とククリ。

「本当か!? それで、平気だったのか?」
「大丈夫ですよ、私は精霊なので死という概念はありませんから。えっへん」
と説明になっているのかいないのかククリは自信満々に言い放つ。

「いや、それじゃよくわからないんだけど……」
「あれ? そんなことよりマツイさんちょっと痩せました?」
ククリは俺の周りを飛び回ってじろじろ見ながら言う。

「あ、ああ。そういえば痩せたかもな……最近あまり食べてなかったから」
ククリが心配で食べ物が喉を通らなかったのだが、
「駄目ですよー。ちゃんと食べないと大きくなれませんからね」
人の気も知らないでククリはのんきなことを口にした。

「大丈夫、今日からはちゃんと食べるよ。でも俺よりずっと小さいククリに言われたくはないな」
「え~、どういうことですかそれっ? 私これでも精霊の中では大きい方なんですからねっ」
三十センチくらいの精霊は可愛らしく頬を膨らませる。

「ははっ、そうなのか。悪い悪い」
なんにしてもククリが無事でよかった。
俺はころころと変わるククリの表情を眺めながら心底そう思った。


「あっそうだ!」
俺はあることに思い至る。

「なんですか急に?」
「俺ダンジョンの外に強制的に出されただろ、レベルはどうなってるんだ?」
ククリのことが気がかりでそこまで考えが及んでいなかった。

確かあの時の俺はレベルが12まで上がっていたはずだ。
強制退出させられたらレベルはどうなるのだろう?
……もしもリセットされていたりしたらかなり落ち込むぞ。

「だったら早くステータスを確認してみればいいじゃないですか」
「そ、そうなんだが……ちょっと怖いな」

そう言いつつ俺はおそるおそる右目の下を押してステータス画面を浮かび上がらせた。


*************************************

マツイ:レベル12

生命力:38/38
魔力:10/10
攻撃力:18
防御力:15
素早さ:14

スキル:魔眼
魔法:バトルマッチ、ヒール

*************************************


「おおっ!」
幸いなことにレベルは上がったままだった。

「大丈夫だったでしょう。強制退出はあくまで所持品がなくなるだけですよ」
「そうだったのか。安心したよ」
ついでに生命力と魔力も全回復している。一週間休んでいただけのことはあるな。

「じゃあそろそろ行きましょうか。この階層のアイテムを拾ったらさっさと地下二階層に行ってその次はいよいよ地下三階層ですよっ」
「そうだな」
「駄目ですマツイさん、久しぶりなんですから元気よくいきましょう。おー! ですよ、おー!」
ククリは威勢よく手を振り上げながら俺にウインクをする。
俺にやれってことか……。

「お、おー!」
「恥ずかしがらないでもっと元気よくっ」
「おー!」
「ではダンジョン探索にしゅっぱーつ!」
「おーっ!」

俺は腹の底から声を出すと晴れやかな気持ちで一週間ぶりのダンジョン探索を開始した。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...