2 / 233
第2話 ポチを追って
しおりを挟む
「……なんだこの階段?」
俺は得体のしれない階段を前に当たり前の疑問を口にした。
家の庭にぽっかりと空いた穴。
そしてその穴の中にある地下へと続く石で出来たような階段。
「なに、これ……?」
突如現れた奇妙な光景に理解が及ばない。
月明かりだけを頼りに階段の先を覗いてみようとするが奥の方は真っ暗でそれもままならない。
もちろん階段を下りていく勇気などもない。
こういう時家族と一緒に住んでいれば真っ先に家族を呼ぶのだろう。
友達や恋人に助けを求めるという手もある。
だが残念なことに社会と交流を断って久しい俺にはこういう時に連絡する相手が一人もいないのだ。
田舎にぽつんとある一軒家なので普段は周りの目を気にしなくていいから住みやすいがあんな爆音がしたというのに誰一人寄ってこないのは少々寂しい。
「まいったな……」
警察に電話しても取りあってくれるかどうか。下手すると公務執行妨害なんてことになりかねないぞ。
「うーん……」
俺は奇妙な階段を前にただただ立ち尽くしていた。
明日警察の人に来てもらうか。そう思いとりあえず家の中に入ろうと玄関のドアを開けた時入れ違いでポチが外に駆け出てきた。
「あっ、ポチっ……!」
止める間もなくポチは大穴の中の階段へと向かっていく。
「こら、危ないから戻って来いっ」
「わんわん!」
大丈夫だと言わんばかりに元気よく鳴いてみせるとポチはそのまま階段を下りていってしまった。
「……勘弁してくれよ」
俺は仕方なく大穴の前まで行き「おーい! ポチー!」と階段を見下ろすがポチの姿は見えない。鳴き声も聞こえてこない。
その後も五分、十分、二十分としばらく声をかけながら待ってみたが一向に反応がなかった。
まずいな。これはまずいぞ。
いよいよ放っておけない状況になってしまった。
ポチをこのままにしてはおけない以上俺が階段を下りてポチを連れ戻すしかない。
!
そこで俺はふとあることに思い至る。
もしかしてこの階段を下りた先には危険な生物がいるのではないか、と。
ただの思い過ごしならいいが万が一ということもある。俺は一旦家に戻ると家の中にあった物で完全武装することにした。
完全武装といっても所詮一般家庭の家の中にある物だからたかが知れているがないよりはましだ。
俺は右手に木刀を左手には懐中電灯をそして全身には剣道着を身に着けて再度奇妙な階段の前に立った。
「中高剣道部だったことが今になって役に立つとはな」
面をつけているので多少視界は狭まるが頭が守れるというのは心強い。
俺は木刀を一振りすると覚悟を決め階段をそろそろと一歩一歩下りていく。
そして五十歩ほど下りた時だった。
階段はそこで行き止まりになっていて突き当たりには全身が映るほどの大きな鏡が設置されていた。
「……?」
行き止まりなのでほかに道はなくポチの姿も見当たらない。
「ポチはどこ行ったんだ? それにこの鏡は一体……?」
何気なく俺は鏡に触れた。
その刹那――
「うおおっ!?」
俺は鏡に吸い込まれるようにして鏡を通り抜けたのだった。
俺は得体のしれない階段を前に当たり前の疑問を口にした。
家の庭にぽっかりと空いた穴。
そしてその穴の中にある地下へと続く石で出来たような階段。
「なに、これ……?」
突如現れた奇妙な光景に理解が及ばない。
月明かりだけを頼りに階段の先を覗いてみようとするが奥の方は真っ暗でそれもままならない。
もちろん階段を下りていく勇気などもない。
こういう時家族と一緒に住んでいれば真っ先に家族を呼ぶのだろう。
友達や恋人に助けを求めるという手もある。
だが残念なことに社会と交流を断って久しい俺にはこういう時に連絡する相手が一人もいないのだ。
田舎にぽつんとある一軒家なので普段は周りの目を気にしなくていいから住みやすいがあんな爆音がしたというのに誰一人寄ってこないのは少々寂しい。
「まいったな……」
警察に電話しても取りあってくれるかどうか。下手すると公務執行妨害なんてことになりかねないぞ。
「うーん……」
俺は奇妙な階段を前にただただ立ち尽くしていた。
明日警察の人に来てもらうか。そう思いとりあえず家の中に入ろうと玄関のドアを開けた時入れ違いでポチが外に駆け出てきた。
「あっ、ポチっ……!」
止める間もなくポチは大穴の中の階段へと向かっていく。
「こら、危ないから戻って来いっ」
「わんわん!」
大丈夫だと言わんばかりに元気よく鳴いてみせるとポチはそのまま階段を下りていってしまった。
「……勘弁してくれよ」
俺は仕方なく大穴の前まで行き「おーい! ポチー!」と階段を見下ろすがポチの姿は見えない。鳴き声も聞こえてこない。
その後も五分、十分、二十分としばらく声をかけながら待ってみたが一向に反応がなかった。
まずいな。これはまずいぞ。
いよいよ放っておけない状況になってしまった。
ポチをこのままにしてはおけない以上俺が階段を下りてポチを連れ戻すしかない。
!
そこで俺はふとあることに思い至る。
もしかしてこの階段を下りた先には危険な生物がいるのではないか、と。
ただの思い過ごしならいいが万が一ということもある。俺は一旦家に戻ると家の中にあった物で完全武装することにした。
完全武装といっても所詮一般家庭の家の中にある物だからたかが知れているがないよりはましだ。
俺は右手に木刀を左手には懐中電灯をそして全身には剣道着を身に着けて再度奇妙な階段の前に立った。
「中高剣道部だったことが今になって役に立つとはな」
面をつけているので多少視界は狭まるが頭が守れるというのは心強い。
俺は木刀を一振りすると覚悟を決め階段をそろそろと一歩一歩下りていく。
そして五十歩ほど下りた時だった。
階段はそこで行き止まりになっていて突き当たりには全身が映るほどの大きな鏡が設置されていた。
「……?」
行き止まりなのでほかに道はなくポチの姿も見当たらない。
「ポチはどこ行ったんだ? それにこの鏡は一体……?」
何気なく俺は鏡に触れた。
その刹那――
「うおおっ!?」
俺は鏡に吸い込まれるようにして鏡を通り抜けたのだった。
11
お気に入りに追加
676
あなたにおすすめの小説

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します
かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。
追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。
恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。
それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。
やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。
鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。
※小説家になろうにも投稿しています。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる