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第81話 喧嘩
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「そこをどいてくださいませんか」
酔っ払った大男三人にローレライさんが丁寧な言葉遣いで言う。
「おいおい、声もきれいだぜっ」
「どいてくださいませんか、だってよ!」
「育ちがいいお嬢さんってとこかぁっ」
しかし完全に出来上がっている三人の大男たちはローレライさんの言うことなど聞こうともしない。
「いいからこっち来て一緒に飲もうぜっ」
「きゃっ」
三人のうちの一人がローレライさんの手を握り強引に引っ張った。
それを見て俺は思わず「やめろ」とその大男の腕をがしっと掴む。
「ん~? なんだてめぇ」
「男に用はねぇ、引っ込んでなっ」
「おら、どけよ!」
俺は別の大男に胸を押されカウンターに突き飛ばされてしまった。
「クロクロさんっ」
とここで、
「ちょっとちょっと、喧嘩するなら外でやってくれっ」
マスターがカウンターから出てきて俺たちと大男たちの間に割って入ってくる。
自分の店で暴れられたりしたら困るのだろう。
「おいてめぇ、外出ろやっ。オレたちが可愛がってやるぜっ」
「今さら逃げようったってそうはいかねぇぞ」
「オレたちが勝ったらその姉ちゃんは貰うからなっ」
勝手なことを言う大男たち。
これだから酔っ払いは始末が悪い。
「わかったよ、相手になってやる」
「クロクロさんっ……」
「大丈夫、ちゃんと手加減するから」
俺は小声でローレライさんにささやいてから大男たちとともに酒場を出た。
酒場の前の大通りで向き合う俺と大男三人。
俺は決して背が低い方ではないが三人とも俺より頭二つ分はでかい。
「喧嘩だ喧嘩っ!」
「やれやれーっ」
「早くしろーっ!」
酒場にいた客や通行人が俺たちを取り囲んであおってくる。
気付けばいつの間にやら野次馬が百人くらい集まっていた。
「ひっく、オレたちに喧嘩を売るとはいい度胸だなっ」
一人は首を回しながら、
「オレら三人ともAランク冒険者なんだぜっ。ビビったか?」
もう一人は指をぽきぽき鳴らしながら、
「女の前でいいカッコしようとするから悪いんだぜっ」
そして最後の一人は地獄に落ちろと言わんばかりのジェスチャーをしながら俺を見下ろす。
「よし、ここはオレが行くぜっ」
「待てよ、こんな面白そうなこと兄者に譲れるかよ」
「そうだぜ兄者。オレだって久しぶりの喧嘩だ、派手に暴れてやりたいぜ」
と三人が言い合う。
どうでもいいがこいつら兄弟だったのか……?
「面倒だ。いいよ、三対一で」
今まで黙って話を聞いていた俺だったがここで口を開いた。
Aランク冒険者相手なら三対一でも問題ないだろうと思ってのことだ。
「あんっ? ふざけてんのかてめぇっ」
「オレら相手に三対一だとっ」
「オレたちはAランク冒険者だぞっ。てめぇみてぇなの相手に三人でかかるわけぶふぇぇっ……!?」
俺は顔をぐっと寄せてきた大男の一人を殴り飛ばした。
でかい図体が放物線を描くようにして宙を舞って地面に落ちる。
それを見てさっきまで騒がしかったのが嘘のように辺りは一転静まり返った。
「な、な、なんだとっ!?」
「て、てめぇ、な、何しやがったっ!」
「別に、ただ殴っただけだけど」
大男二人は顔を見合わせる。
お前が先に行けと目で合図を送り合っているようにも見えるが。
と次の瞬間、兄者と呼ばれていた大男が俺めがけて「くそがぁっ!」と拳を振り上げ向かってきた。
俺はそれを難なくかわすとがら空きになっていたお腹にカウンターを打ち込んだ。
大男が俺に体を預けるようにして倒れる。
「ば、ば、ば、馬鹿なっ……!?」
「まだやるか?」
「っ……」
残った最後の一人は酔いがさめたらしく口をあわあわさせている。
「やらないなら二人を連れてさっさと帰ってくれ」
「……あ、ああ。わ、わかった」
そう言うと一人残った大男は二人の大男を半ば引きずるようにして夜道に消えていった。
周りにいた野次馬たちから大歓声が上がる中、俺はローレライさんのもとへと戻ると、
「今日はもう遅いんでゲルニカさんのところは明日行きましょう」
声をかける。
「は、はい。わかりました」
この後、俺とローレライさんは宿屋を探すとそこに泊まり今日一日の疲れをいやすのだった。
――俺の所持金、金貨十九枚と銀貨八枚也。
酔っ払った大男三人にローレライさんが丁寧な言葉遣いで言う。
「おいおい、声もきれいだぜっ」
「どいてくださいませんか、だってよ!」
「育ちがいいお嬢さんってとこかぁっ」
しかし完全に出来上がっている三人の大男たちはローレライさんの言うことなど聞こうともしない。
「いいからこっち来て一緒に飲もうぜっ」
「きゃっ」
三人のうちの一人がローレライさんの手を握り強引に引っ張った。
それを見て俺は思わず「やめろ」とその大男の腕をがしっと掴む。
「ん~? なんだてめぇ」
「男に用はねぇ、引っ込んでなっ」
「おら、どけよ!」
俺は別の大男に胸を押されカウンターに突き飛ばされてしまった。
「クロクロさんっ」
とここで、
「ちょっとちょっと、喧嘩するなら外でやってくれっ」
マスターがカウンターから出てきて俺たちと大男たちの間に割って入ってくる。
自分の店で暴れられたりしたら困るのだろう。
「おいてめぇ、外出ろやっ。オレたちが可愛がってやるぜっ」
「今さら逃げようったってそうはいかねぇぞ」
「オレたちが勝ったらその姉ちゃんは貰うからなっ」
勝手なことを言う大男たち。
これだから酔っ払いは始末が悪い。
「わかったよ、相手になってやる」
「クロクロさんっ……」
「大丈夫、ちゃんと手加減するから」
俺は小声でローレライさんにささやいてから大男たちとともに酒場を出た。
酒場の前の大通りで向き合う俺と大男三人。
俺は決して背が低い方ではないが三人とも俺より頭二つ分はでかい。
「喧嘩だ喧嘩っ!」
「やれやれーっ」
「早くしろーっ!」
酒場にいた客や通行人が俺たちを取り囲んであおってくる。
気付けばいつの間にやら野次馬が百人くらい集まっていた。
「ひっく、オレたちに喧嘩を売るとはいい度胸だなっ」
一人は首を回しながら、
「オレら三人ともAランク冒険者なんだぜっ。ビビったか?」
もう一人は指をぽきぽき鳴らしながら、
「女の前でいいカッコしようとするから悪いんだぜっ」
そして最後の一人は地獄に落ちろと言わんばかりのジェスチャーをしながら俺を見下ろす。
「よし、ここはオレが行くぜっ」
「待てよ、こんな面白そうなこと兄者に譲れるかよ」
「そうだぜ兄者。オレだって久しぶりの喧嘩だ、派手に暴れてやりたいぜ」
と三人が言い合う。
どうでもいいがこいつら兄弟だったのか……?
「面倒だ。いいよ、三対一で」
今まで黙って話を聞いていた俺だったがここで口を開いた。
Aランク冒険者相手なら三対一でも問題ないだろうと思ってのことだ。
「あんっ? ふざけてんのかてめぇっ」
「オレら相手に三対一だとっ」
「オレたちはAランク冒険者だぞっ。てめぇみてぇなの相手に三人でかかるわけぶふぇぇっ……!?」
俺は顔をぐっと寄せてきた大男の一人を殴り飛ばした。
でかい図体が放物線を描くようにして宙を舞って地面に落ちる。
それを見てさっきまで騒がしかったのが嘘のように辺りは一転静まり返った。
「な、な、なんだとっ!?」
「て、てめぇ、な、何しやがったっ!」
「別に、ただ殴っただけだけど」
大男二人は顔を見合わせる。
お前が先に行けと目で合図を送り合っているようにも見えるが。
と次の瞬間、兄者と呼ばれていた大男が俺めがけて「くそがぁっ!」と拳を振り上げ向かってきた。
俺はそれを難なくかわすとがら空きになっていたお腹にカウンターを打ち込んだ。
大男が俺に体を預けるようにして倒れる。
「ば、ば、ば、馬鹿なっ……!?」
「まだやるか?」
「っ……」
残った最後の一人は酔いがさめたらしく口をあわあわさせている。
「やらないなら二人を連れてさっさと帰ってくれ」
「……あ、ああ。わ、わかった」
そう言うと一人残った大男は二人の大男を半ば引きずるようにして夜道に消えていった。
周りにいた野次馬たちから大歓声が上がる中、俺はローレライさんのもとへと戻ると、
「今日はもう遅いんでゲルニカさんのところは明日行きましょう」
声をかける。
「は、はい。わかりました」
この後、俺とローレライさんは宿屋を探すとそこに泊まり今日一日の疲れをいやすのだった。
――俺の所持金、金貨十九枚と銀貨八枚也。
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