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第79話 毒消し草
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「……さんっ。クロクロさん、起きてくださいっ」
「……ぅん……ローレライさん……?」
「あっ。クロクロさん、よかった。目が覚めたのですねっ」
目を開けると目の前には心配そうに俺をみつめるローレライさんの顔があった。
「あれ? 俺、どうして……?」
「クロクロさんはコボルトの毒にやられたのですよ」
「毒?」
俺は間の抜けた声で返した。
「はい。コボルトの爪には毒があるのです。すみません、先に言っておくべきでした」
「いや、それはいいですけど……それで俺はどうなったんですか?」
毒をくらって意識を失ったのならなぜ今俺は平然としていられるのだろう。
「私が持っていた毒消し草をすりつぶしてクロクロさんの口に流し込んだのです。なので今はもう毒は中和されているはずです」
「そうだったんですか。それはありがとうございました、助かりました」
「いえ、私はたいしたことはしていません。もしこれが私以外のエルフでしたら解毒魔法でもっと簡単に治せていたはずですから」
と表情を暗くするローレライさん。
「前にも言いましたが私は回復魔法の類は一切使えない出来損ないですので」
「いや、そんなことないですって。ローレライさんのおかげで俺は助かったんですから」
「しかし毒消し草はもうありませんし、これから先もしもクロクロさんが怪我をしたり毒を受けた時に私ではお役に立てません」
そう言ってローレライさんはうつむいてしまう。
ローレライさんはエルフなのに回復魔法が使えないことがコンプレックスなのだった。
重苦しい空気が流れる。
「そんなに気にしなくても平気ですよ。今回はたまたまコボルトが毒を持ってるって知らなかっただけですから今度から注意すればいいわけですし、俺この世界の魔物についてほとんど憶えてないですけどローレライさんが教えてくれれば問題ないですから。ねっ?」
「は、はい……」
顔を上げたローレライさんは少し微笑みうなずいた。
この後俺たちは山を下りたところで野宿をした。
そして翌日の夕方過ぎ、俺たちはクラスコの城下町へとたどり着いたのだった。
◇ ◇ ◇
「じゃあ手始めにこの辺りに現れる強い魔物の情報を探るとしましょうか」
「はい、わかりました」
大邪神に一歩でも近付くため俺たちは強い魔物の情報を集めることにした。
そこでまずはクラスコの城下町のギルドにおもむく。
「もう薄暗いのに人が沢山いるんですね」
隣を歩くローレライさんが町を見渡しながら言った。
ローレライさんの言う通り町は沢山の人であふれていた。
「そうですね。ロレンスの町よりもここはもっと大きくて人も多いみたいですからね」
「そうなのですか。私はつい最近までエルフの里を出たことがなかったのでびっくりです」
「あの、くれぐれもエルフだってことはバレないように注意してくださいね」
「はい、もちろんです」
そう返すローレライさんは人間離れした美貌の持ち主なので本当に大丈夫なのかなぁと心配になる俺だった。
ギルドに着くとまず切り取っていたホブゴブリンの耳をすべてカウンターの女性に渡した。
それにより金貨一枚をゲットする。
それから掲示板に貼られていたSランク冒険者向けの依頼書を探す。
俺はEランクなのでそれらの依頼を受けることは出来ないが強い魔物の情報は手に入れることが出来る。
だがEランク向けの依頼書が少ないのと同様にSランク向けの依頼書もまた少ないらしく一つも見当たらなかった。
「どうしましょう、クロクロさん」
「う~ん、そうですね~……」
俺が悩んでいると、
「そうだ。酒場に行ってみませんか?」
ローレライさんが口にした。
「酒場ですか?」
「はい。バーバレラ様がおっしゃっていたんです。酒場は情報の宝庫だって」
「へー、そうですか」
バーバレラさんがねぇ……正直あまりピンとこないが他に行くところもないしここはバーバレラさんの話に乗ってみるか。
「じゃあ酒場に行ってみましょうか」
「はい」
こうして俺とローレライさんは有益な情報を掴むため酒場へと足を向けるのだった。
「……ぅん……ローレライさん……?」
「あっ。クロクロさん、よかった。目が覚めたのですねっ」
目を開けると目の前には心配そうに俺をみつめるローレライさんの顔があった。
「あれ? 俺、どうして……?」
「クロクロさんはコボルトの毒にやられたのですよ」
「毒?」
俺は間の抜けた声で返した。
「はい。コボルトの爪には毒があるのです。すみません、先に言っておくべきでした」
「いや、それはいいですけど……それで俺はどうなったんですか?」
毒をくらって意識を失ったのならなぜ今俺は平然としていられるのだろう。
「私が持っていた毒消し草をすりつぶしてクロクロさんの口に流し込んだのです。なので今はもう毒は中和されているはずです」
「そうだったんですか。それはありがとうございました、助かりました」
「いえ、私はたいしたことはしていません。もしこれが私以外のエルフでしたら解毒魔法でもっと簡単に治せていたはずですから」
と表情を暗くするローレライさん。
「前にも言いましたが私は回復魔法の類は一切使えない出来損ないですので」
「いや、そんなことないですって。ローレライさんのおかげで俺は助かったんですから」
「しかし毒消し草はもうありませんし、これから先もしもクロクロさんが怪我をしたり毒を受けた時に私ではお役に立てません」
そう言ってローレライさんはうつむいてしまう。
ローレライさんはエルフなのに回復魔法が使えないことがコンプレックスなのだった。
重苦しい空気が流れる。
「そんなに気にしなくても平気ですよ。今回はたまたまコボルトが毒を持ってるって知らなかっただけですから今度から注意すればいいわけですし、俺この世界の魔物についてほとんど憶えてないですけどローレライさんが教えてくれれば問題ないですから。ねっ?」
「は、はい……」
顔を上げたローレライさんは少し微笑みうなずいた。
この後俺たちは山を下りたところで野宿をした。
そして翌日の夕方過ぎ、俺たちはクラスコの城下町へとたどり着いたのだった。
◇ ◇ ◇
「じゃあ手始めにこの辺りに現れる強い魔物の情報を探るとしましょうか」
「はい、わかりました」
大邪神に一歩でも近付くため俺たちは強い魔物の情報を集めることにした。
そこでまずはクラスコの城下町のギルドにおもむく。
「もう薄暗いのに人が沢山いるんですね」
隣を歩くローレライさんが町を見渡しながら言った。
ローレライさんの言う通り町は沢山の人であふれていた。
「そうですね。ロレンスの町よりもここはもっと大きくて人も多いみたいですからね」
「そうなのですか。私はつい最近までエルフの里を出たことがなかったのでびっくりです」
「あの、くれぐれもエルフだってことはバレないように注意してくださいね」
「はい、もちろんです」
そう返すローレライさんは人間離れした美貌の持ち主なので本当に大丈夫なのかなぁと心配になる俺だった。
ギルドに着くとまず切り取っていたホブゴブリンの耳をすべてカウンターの女性に渡した。
それにより金貨一枚をゲットする。
それから掲示板に貼られていたSランク冒険者向けの依頼書を探す。
俺はEランクなのでそれらの依頼を受けることは出来ないが強い魔物の情報は手に入れることが出来る。
だがEランク向けの依頼書が少ないのと同様にSランク向けの依頼書もまた少ないらしく一つも見当たらなかった。
「どうしましょう、クロクロさん」
「う~ん、そうですね~……」
俺が悩んでいると、
「そうだ。酒場に行ってみませんか?」
ローレライさんが口にした。
「酒場ですか?」
「はい。バーバレラ様がおっしゃっていたんです。酒場は情報の宝庫だって」
「へー、そうですか」
バーバレラさんがねぇ……正直あまりピンとこないが他に行くところもないしここはバーバレラさんの話に乗ってみるか。
「じゃあ酒場に行ってみましょうか」
「はい」
こうして俺とローレライさんは有益な情報を掴むため酒場へと足を向けるのだった。
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