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第76話 依頼の対価
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里の修繕作業をしているうちに辺りは暗くなっていた。
バーバレラさんは、
「今日はもう遅い、続きはまた明日にしようかのう」
とエルフたちを気遣い休ませる。
それを受けてエルフたちは里の中央広場にキャンプファイヤーのような火を起こしそれぞれシートなどを敷いて横になっていく。
ほとんどの家が焼かれてしまったためみんなで外で寝るらしい。
怪我をしていた若い男性のエルフたちも自身の回復魔法によって傷はほぼ塞がっているようだった。
とここでようやくローレライさんが俺への報酬のことを思い出したようで、
「あっ、クロクロさんすみませんっ。報酬まだでしたよねっ」
俺のもとに駆けてくる。
「え、ええ、まあ」
「お金とセントウ、やっぱりセントウの方がいいですか?」
「ええ……でもバーバレラさんの許可がないと駄目なんですよね」
「わしは構わんよ」
とバーバレラさん。
「よろしいのですか? バーバレラ様」
「ああ、クロクロさんはわしの知っておる人間たちとは違うようじゃからな。セントウの一つや二つ、持っていってもらいなさい」
「ありがとうございます、バーバレラ様っ」
ローレライさんはバーバレラさんにお辞儀をすると急ぎ足でセントウを採りに向かおうとする。
だが、
「待て、ローレライ!」
それを止める中年の男性のエルフがいた。
ローレライさんの父親だ。
「なんですかお父様っ?」
ローレライさんは立ち止まり振り返った。
「残念だがセントウはすべて燃え尽きてしまっているんだよ」
「えっ!?」
「な、なんじゃとっ!」
バーバレラさんも知らなかったようで驚きの声を上げる。
「バーバレラ様、セントウの木はなんとか無事でしたが果実は全滅でした。なので今年はもう一つも採れません」
「なんと……」
「そ、そんな……」
目を見開くバーバレラさんと肩を落とすローレライさん。
「すみませんねクロクロさん。そういうわけなんですよ」
ローレライさんの父親が申し訳なさそうな顔で俺に向き直った。
「そうですか……残念ですけど仕方ないですね。諦めますよ」
「で、ではせめてこのお金を受け取ってください」
ローレライさんはそう言うと服のポケットから大事そうに袋を取り出す。
そしてその中から金貨三枚と銀貨五枚を俺に差し出してきた。
俺はそれを受け取ろうとしたがふと周りを見回した。
エルフの里は田畑の作物はボロボロで家畜は一頭もいない。
家も半壊状態のものばかり。当のエルフたちもみんな疲れた様子でいる。
自給自足の生活をしていたエルフにとって金貨三枚と銀貨五枚というのはなけなしのお金らしい。
「……いや、やっぱりお金もいいです」
「え? どういうことですか?」
「そのお金は里の復興に充ててください」
「そんな、それは駄目ですよっ」
「そうじゃともっ。クロクロさんは二度もわしらを救ってくれたのじゃ、金貨三枚でも足りんくらいじゃっ」
ローレライさんとバーバレラさんは語気を強めるが俺の意志は変わらない。
「いや、本当にいいですから。それより俺もう帰りますね。ここはエルフ族の聖域です、あまり人間が長居していい場所ではないですから」
俺は言うなりエルフの里の出入り口へと向かった。
「クロクロさんっ……」
ローレライさんの声が背中に届く中、多分この辺りだろうというところで手を伸ばすと手が空間をすり抜けたので、俺はそれを確認してからエルフの里を出る。
こうして俺はあえて後ろを振り向くこともなく別れの挨拶を交わすこともなくエルフの里をあとにしたのだった。
バーバレラさんは、
「今日はもう遅い、続きはまた明日にしようかのう」
とエルフたちを気遣い休ませる。
それを受けてエルフたちは里の中央広場にキャンプファイヤーのような火を起こしそれぞれシートなどを敷いて横になっていく。
ほとんどの家が焼かれてしまったためみんなで外で寝るらしい。
怪我をしていた若い男性のエルフたちも自身の回復魔法によって傷はほぼ塞がっているようだった。
とここでようやくローレライさんが俺への報酬のことを思い出したようで、
「あっ、クロクロさんすみませんっ。報酬まだでしたよねっ」
俺のもとに駆けてくる。
「え、ええ、まあ」
「お金とセントウ、やっぱりセントウの方がいいですか?」
「ええ……でもバーバレラさんの許可がないと駄目なんですよね」
「わしは構わんよ」
とバーバレラさん。
「よろしいのですか? バーバレラ様」
「ああ、クロクロさんはわしの知っておる人間たちとは違うようじゃからな。セントウの一つや二つ、持っていってもらいなさい」
「ありがとうございます、バーバレラ様っ」
ローレライさんはバーバレラさんにお辞儀をすると急ぎ足でセントウを採りに向かおうとする。
だが、
「待て、ローレライ!」
それを止める中年の男性のエルフがいた。
ローレライさんの父親だ。
「なんですかお父様っ?」
ローレライさんは立ち止まり振り返った。
「残念だがセントウはすべて燃え尽きてしまっているんだよ」
「えっ!?」
「な、なんじゃとっ!」
バーバレラさんも知らなかったようで驚きの声を上げる。
「バーバレラ様、セントウの木はなんとか無事でしたが果実は全滅でした。なので今年はもう一つも採れません」
「なんと……」
「そ、そんな……」
目を見開くバーバレラさんと肩を落とすローレライさん。
「すみませんねクロクロさん。そういうわけなんですよ」
ローレライさんの父親が申し訳なさそうな顔で俺に向き直った。
「そうですか……残念ですけど仕方ないですね。諦めますよ」
「で、ではせめてこのお金を受け取ってください」
ローレライさんはそう言うと服のポケットから大事そうに袋を取り出す。
そしてその中から金貨三枚と銀貨五枚を俺に差し出してきた。
俺はそれを受け取ろうとしたがふと周りを見回した。
エルフの里は田畑の作物はボロボロで家畜は一頭もいない。
家も半壊状態のものばかり。当のエルフたちもみんな疲れた様子でいる。
自給自足の生活をしていたエルフにとって金貨三枚と銀貨五枚というのはなけなしのお金らしい。
「……いや、やっぱりお金もいいです」
「え? どういうことですか?」
「そのお金は里の復興に充ててください」
「そんな、それは駄目ですよっ」
「そうじゃともっ。クロクロさんは二度もわしらを救ってくれたのじゃ、金貨三枚でも足りんくらいじゃっ」
ローレライさんとバーバレラさんは語気を強めるが俺の意志は変わらない。
「いや、本当にいいですから。それより俺もう帰りますね。ここはエルフ族の聖域です、あまり人間が長居していい場所ではないですから」
俺は言うなりエルフの里の出入り口へと向かった。
「クロクロさんっ……」
ローレライさんの声が背中に届く中、多分この辺りだろうというところで手を伸ばすと手が空間をすり抜けたので、俺はそれを確認してからエルフの里を出る。
こうして俺はあえて後ろを振り向くこともなく別れの挨拶を交わすこともなくエルフの里をあとにしたのだった。
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