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第67話 野宿
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草原を歩いていると辺りが暗くなってきた。
気温も下がり、少し肌寒くなってきている。
「ローレライさん、今日はここで休みませんか?」
俺はローレライさんに提案した。
朝から歩き通しでローレライさんも疲れているだろう。
「そうですね。では今日はこの辺で野宿にいたしましょう」
するとローレライさんは周りを見回し大きな木をみつけるとそこに歩いていく。
そしてその木に背中を預けるようにして座り込んだ。
俺もそれに倣って木の反対側に腰を下ろす。
お腹がすいたな。
そう思い木を見上げると俺の頭上五メートルほどのところにバナナが沢山なっていた。
この世界に来たばかりの頃を思い出す。
この世界にはバナナが沢山自生しているらしい。
立ち上がりそれを採ろうとジャンプしかけた時、
「クロクロさん、よかったらこれ召し上がりますか?」
ローレライさんが木の陰から顔を出した。
ローレライさんは手にゴルフボール大の巨峰のようなものを持っていた。
「なんですか、それ?」
「これはガジュの実といって私たちエルフが遠出をする時などに持ち歩く食べ物です。これを一つ食べると丸一日は何も食べなくても済むのですよ」
「へー、それは便利ですね」
「よかったらどうぞ。まだありますから」
「ありがとうございます」
俺はローレライさんからガジュの実とやらを受け取るとそのまま口に運ぶ。
「あっ、皮は食べないでくださいね」
ローレライさんが言うので俺は口の中で器用に皮をむいて皮だけを取り出した。
「うん、美味しいです」
「よかったです。では私も」
言ってガジュの実の皮を丁寧にむくとそれを半分かじるローレライさん。
白くて細長い綺麗な指に思わず見惚れそうになる。
「エルフ族ってこんな特別な果実を作ってるんですね」
「他にもセントウという果実も栽培していますよ」
「セントウですか?」
「はい、それを食べるとどんな病気でもたちどころに治すことが出来るのです」
「へー、すごいっ。そんな果実があるんですかっ」
それが本当なら今回の報酬、金貨三枚と銀貨五枚よりもそのセントウとやらの方が欲しいな。
「一年に一回、それも一つの木から一つだけしか採れない貴重なものなのですけれどね」
「例えばですけど、ガジュの実とかセントウとかを売ればそれなりにお金になるんじゃないですか?」
そうすればエルフ族もお金に困ることはないと思うが。
しかし、
「それは駄目なのです」
とローレライさん。
「駄目?」
「はい。今のエルフの里の長は人間をあまりこころよく思っていませんから人間にエルフの里の食べ物を分け与えることを禁止しているのです」
「そうなんですか……でも俺ガジュの実食べちゃいましたけど?」
「そうですね。なので私がクロクロさんにガジュの実を差し上げたことは私たちだけの秘密にしていてくださいね」
言いながらローレライさんは口元に人差し指を持っていき可愛らしく微笑んだ。
気温も下がり、少し肌寒くなってきている。
「ローレライさん、今日はここで休みませんか?」
俺はローレライさんに提案した。
朝から歩き通しでローレライさんも疲れているだろう。
「そうですね。では今日はこの辺で野宿にいたしましょう」
するとローレライさんは周りを見回し大きな木をみつけるとそこに歩いていく。
そしてその木に背中を預けるようにして座り込んだ。
俺もそれに倣って木の反対側に腰を下ろす。
お腹がすいたな。
そう思い木を見上げると俺の頭上五メートルほどのところにバナナが沢山なっていた。
この世界に来たばかりの頃を思い出す。
この世界にはバナナが沢山自生しているらしい。
立ち上がりそれを採ろうとジャンプしかけた時、
「クロクロさん、よかったらこれ召し上がりますか?」
ローレライさんが木の陰から顔を出した。
ローレライさんは手にゴルフボール大の巨峰のようなものを持っていた。
「なんですか、それ?」
「これはガジュの実といって私たちエルフが遠出をする時などに持ち歩く食べ物です。これを一つ食べると丸一日は何も食べなくても済むのですよ」
「へー、それは便利ですね」
「よかったらどうぞ。まだありますから」
「ありがとうございます」
俺はローレライさんからガジュの実とやらを受け取るとそのまま口に運ぶ。
「あっ、皮は食べないでくださいね」
ローレライさんが言うので俺は口の中で器用に皮をむいて皮だけを取り出した。
「うん、美味しいです」
「よかったです。では私も」
言ってガジュの実の皮を丁寧にむくとそれを半分かじるローレライさん。
白くて細長い綺麗な指に思わず見惚れそうになる。
「エルフ族ってこんな特別な果実を作ってるんですね」
「他にもセントウという果実も栽培していますよ」
「セントウですか?」
「はい、それを食べるとどんな病気でもたちどころに治すことが出来るのです」
「へー、すごいっ。そんな果実があるんですかっ」
それが本当なら今回の報酬、金貨三枚と銀貨五枚よりもそのセントウとやらの方が欲しいな。
「一年に一回、それも一つの木から一つだけしか採れない貴重なものなのですけれどね」
「例えばですけど、ガジュの実とかセントウとかを売ればそれなりにお金になるんじゃないですか?」
そうすればエルフ族もお金に困ることはないと思うが。
しかし、
「それは駄目なのです」
とローレライさん。
「駄目?」
「はい。今のエルフの里の長は人間をあまりこころよく思っていませんから人間にエルフの里の食べ物を分け与えることを禁止しているのです」
「そうなんですか……でも俺ガジュの実食べちゃいましたけど?」
「そうですね。なので私がクロクロさんにガジュの実を差し上げたことは私たちだけの秘密にしていてくださいね」
言いながらローレライさんは口元に人差し指を持っていき可愛らしく微笑んだ。
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