66 / 104
第66話 フォース
しおりを挟む
「それでエルフの里っていうのはどこにあるんですか?」
「このロレンスの町から歩いて三日ほどの距離の場所にあります。人間にみつからないように高い山の上の方にあるので少し大変ですけどお付き合いください」
そう言うとローレライさんはフードを被る。
「それ、暑くないんですか?」
ふと疑問に思ったので訊いてみた。
ローレライさんは布地面積の少ない緑色の服を着て割と素肌を露出した恰好をしているにもかかわらず、顔だけは隠そうとしているように見えたからだ。
すると、
「私たちエルフは希少種族なので人間にみつかると奴隷として売られてしまうことがあるのです。だから人間のいる場所にやむを得ず訪れる場合にはこうやってエルフの特徴である耳を隠すのです」
ローレライさんは伏し目がちに話す。
「そうだったんですか。すいません、俺エルフ族のこととかよく知らなくて……」
「いえ、気になさらないでください。それより急ぎましょう、竜王が私たちの里に来る日まで猶予はあと四日しかありませんから」
「わかりました」
こうして俺たちはロレンスの町をあとにするのだった。
◇ ◇ ◇
ローレライさんとともに草原を歩いていると俺は前方にスライムによく似た魔物を発見した。
だがその魔物はスライムよりも一回り大きく見える。
「ネイビースライムですっ」
ローレライさんが口を開いた。
と同時にローレライさんは足元に生えていた草を引き抜く。
何をしているのだろうと俺が思った次の瞬間、
「フォースっ」
とローレライさんが声を上げた。
直後、ローレライさんの持っていた草が一気に成長してフェンシングの剣のように変形していく。
「ローレライさん、それって……?」
「植物を武器化する魔法ですっ。私が唯一使える魔法なのですっ」
言いながら草で出来た剣を構えるローレライさん。
とこっちに気付いたネイビースライムがローレライさんめがけ突進してきた。
ローレライさんは向かってきたネイビースライムに剣を突き出す。
ローレライさんの剣がネイビースライムの体を貫通し、
『ピギャッ……!』
ネイビースライムは水風船のように破裂した。
「へー、すごいですね」
話に聞いていた限りではエルフ族は戦えないのかと思っていたがどうやらそうではないらしい。
「いえ、そんなことはありません。エルフはもともと回復魔法が得意な種族なのですが私は回復魔法は一切使えませんから。植物を武器化できるといっても今のように剣を作るくらいしか出来ませんので竜王との戦いではまったく役に立ちませんでした」
ローレライさんは表情を曇らせる。
「今回人間の冒険者を雇う係に私が任命されたのも、大怪我をして傷つき倒れた若い男性のエルフたちの回復が追いつかず、仕方なしに消去法で選ばれたに過ぎませんから」
ローレライさんは自嘲気味にそう言った。
よくわからないが、もしかしたらローレライさんはエルフ族なのに回復魔法が使えないということにコンプレックスを抱いているのかもしれない。
「俺も回復魔法は使えませんよ。使える魔法は一つだけですし」
フォローのつもりで言ってみる。
「そうですか……でもクロクロさんはブーストが使えるのですよね。だとしたらやっぱりすごいですよクロクロさんは」
逆に気を遣わせてしまったようでローレライさんは笑顔を作ってみせた。
……俺が励まされてどうする。
「いやいや、ローレライさんだってすごいですよ。一人で人間のいる町までやってきたんですから」
「……そうでしょうか?」
「そうですよ。ローレライさんがいなかったらこうやって俺がエルフの里に出向くこともなかったわけですし。もっと自信持ってください」
「は、はい……ありがとうございます」
俺のフォローの甲斐あってか少し微笑むローレライさん。
う~ん、まったくもってどうでもいいことだが近くで見るローレライさんはやはり美人だ。
「このロレンスの町から歩いて三日ほどの距離の場所にあります。人間にみつからないように高い山の上の方にあるので少し大変ですけどお付き合いください」
そう言うとローレライさんはフードを被る。
「それ、暑くないんですか?」
ふと疑問に思ったので訊いてみた。
ローレライさんは布地面積の少ない緑色の服を着て割と素肌を露出した恰好をしているにもかかわらず、顔だけは隠そうとしているように見えたからだ。
すると、
「私たちエルフは希少種族なので人間にみつかると奴隷として売られてしまうことがあるのです。だから人間のいる場所にやむを得ず訪れる場合にはこうやってエルフの特徴である耳を隠すのです」
ローレライさんは伏し目がちに話す。
「そうだったんですか。すいません、俺エルフ族のこととかよく知らなくて……」
「いえ、気になさらないでください。それより急ぎましょう、竜王が私たちの里に来る日まで猶予はあと四日しかありませんから」
「わかりました」
こうして俺たちはロレンスの町をあとにするのだった。
◇ ◇ ◇
ローレライさんとともに草原を歩いていると俺は前方にスライムによく似た魔物を発見した。
だがその魔物はスライムよりも一回り大きく見える。
「ネイビースライムですっ」
ローレライさんが口を開いた。
と同時にローレライさんは足元に生えていた草を引き抜く。
何をしているのだろうと俺が思った次の瞬間、
「フォースっ」
とローレライさんが声を上げた。
直後、ローレライさんの持っていた草が一気に成長してフェンシングの剣のように変形していく。
「ローレライさん、それって……?」
「植物を武器化する魔法ですっ。私が唯一使える魔法なのですっ」
言いながら草で出来た剣を構えるローレライさん。
とこっちに気付いたネイビースライムがローレライさんめがけ突進してきた。
ローレライさんは向かってきたネイビースライムに剣を突き出す。
ローレライさんの剣がネイビースライムの体を貫通し、
『ピギャッ……!』
ネイビースライムは水風船のように破裂した。
「へー、すごいですね」
話に聞いていた限りではエルフ族は戦えないのかと思っていたがどうやらそうではないらしい。
「いえ、そんなことはありません。エルフはもともと回復魔法が得意な種族なのですが私は回復魔法は一切使えませんから。植物を武器化できるといっても今のように剣を作るくらいしか出来ませんので竜王との戦いではまったく役に立ちませんでした」
ローレライさんは表情を曇らせる。
「今回人間の冒険者を雇う係に私が任命されたのも、大怪我をして傷つき倒れた若い男性のエルフたちの回復が追いつかず、仕方なしに消去法で選ばれたに過ぎませんから」
ローレライさんは自嘲気味にそう言った。
よくわからないが、もしかしたらローレライさんはエルフ族なのに回復魔法が使えないということにコンプレックスを抱いているのかもしれない。
「俺も回復魔法は使えませんよ。使える魔法は一つだけですし」
フォローのつもりで言ってみる。
「そうですか……でもクロクロさんはブーストが使えるのですよね。だとしたらやっぱりすごいですよクロクロさんは」
逆に気を遣わせてしまったようでローレライさんは笑顔を作ってみせた。
……俺が励まされてどうする。
「いやいや、ローレライさんだってすごいですよ。一人で人間のいる町までやってきたんですから」
「……そうでしょうか?」
「そうですよ。ローレライさんがいなかったらこうやって俺がエルフの里に出向くこともなかったわけですし。もっと自信持ってください」
「は、はい……ありがとうございます」
俺のフォローの甲斐あってか少し微笑むローレライさん。
う~ん、まったくもってどうでもいいことだが近くで見るローレライさんはやはり美人だ。
0
お気に入りに追加
695
あなたにおすすめの小説
チートを貰えなかった落第勇者の帰還〜俺だけ能力引き継いで現代最強〜
あおぞら
ファンタジー
主人公小野隼人は、高校一年の夏に同じクラスの人と異世界に勇者として召喚される。
勇者は召喚の際にチートな能力を貰えるはずが、隼人は、【身体強化】と【感知】と言うありふれた能力しか貰えなかったが、しぶとく生き残り、10年目にして遂に帰還。
しかし帰還すると1ヶ月しか経っていなかった。
更に他のクラスメイトは異世界の出来事など覚えていない。
自分しか能力を持っていないことに気付いた隼人は、この力は隠して生きていくことを誓うが、いつの間にかこの世界の裏側に巻き込まれていく。
これは異世界で落ちこぼれ勇者だった隼人が、元の世界の引き継いだ能力を使って降り掛かる厄介ごとを払い除ける物語。
異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!
アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。
->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました!
ーーーー
ヤンキーが勇者として召喚された。
社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。
巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。
そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。
ほのぼのライフを目指してます。
設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。
6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
パーティーを追放された装備製作者、実は世界最強 〜ソロになったので、自分で作った最強装備で無双する〜
Tamaki Yoshigae
ファンタジー
ロイルはSランク冒険者パーティーの一員で、付与術師としてメンバーの武器の調整を担当していた。
だがある日、彼は「お前の付与などなくても俺たちは最強だ」と言われ、パーティーをクビになる。
仕方なく彼は、辺境で人生を再スタートすることにした。
素人が扱っても規格外の威力が出る武器を作れる彼は、今まで戦闘経験ゼロながらも瞬く間に成り上がる。
一方、自分たちの実力を過信するあまりチートな付与術師を失ったパーティーは、かつての猛威を振るえなくなっていた。
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界帰りの勇者は現代社会に戦いを挑む
大沢 雅紀
ファンタジー
ブラック企業に勤めている山田太郎は、自らの境遇に腐ることなく働いて金をためていた。しかし、やっと挙げた結婚式で裏切られてしまう。失意の太郎だったが、異世界に勇者として召喚されてしまった。
一年後、魔王を倒した太郎は、異世界で身に着けた力とアイテムをもって帰還する。そして自らを嵌めたクラスメイトと、彼らを育んた日本に対して戦いを挑むのだった。
アイテムボックスを極めた廃ゲーマー、異世界に転生して無双する。
メルメア
ファンタジー
ゲームのやり過ぎが祟って死亡した楠木美音。
人気プレイヤーだった自身のアバターを運営に譲渡する代わりに、ミオンとしてゲーム内で極めたスキルを持って異世界に転生する。
ゲームでは、アイテムボックスと無効スキルを武器に“無限空間”の異名をとったミオン。
触れた相手は即アイテムボックスに収納。
相手の攻撃も収納して増幅して打ち返す。
自分独自の戦い方で、異世界を無双しながら生き始める。
病気の村人を救うため悪竜と戦ったり、王都で海鮮料理店を開いたり、海の怪物を討伐したり、国のダンジョン攻略部隊に選ばれたり……
最強のアイテムボックスを持ち、毒も炎もあらゆる攻撃を無効化するミオンの名は、異世界にどんどん広まっていく。
※小説家になろう・カクヨムでも掲載しています!
※9/14~9/17HOTランキング1位ありがとうございました!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる