上 下
62 / 104

第62話 VSグレイ

しおりを挟む
「待たせたな」
「ふん、逃げようとしないところだけは褒めてやるぜっ」
ギルドから外に出てグレイに顔を向けるとグレイは自信満々に言い放つ。

「別に逃げないさ」
「まあ、これだけの観客がいるんだ。逃げたら恥ずかしくて二度とここのギルドは使えないだろうけどなっ」
グレイは周りを囲む冒険者たちを眺めながら言った。

「それで、勝負方法は?」
「魔法、武器、なんでもありの全力勝負だ。どっちかが戦意を喪失したら終わりでどうだっ? もちろんおれ様はそうはならないけどな、わっはっはっ」
「わかった、それでいいよ」
俺が返すとグレイは急に真面目な顔になる。

「じゃあ行くぜっ。ブースト、レベル3っ!」
声に出したとほぼ同時にグレイは地面を強く蹴った。

あ、速っ――

「がぁっ……!」
一瞬にして俺との距離を詰めたグレイの右拳が俺の左頬を直撃。
俺は後ろにふっ飛ばされた。

「これで終わりだなっ」
グレイが勝利を確信してそう口にする。

「すげー、ブーストだぜっ……」
「私、初めて見たわ……」
「あいつ死んだんじゃねえか……?」
見ていた冒険者たちが言い合う中、
「悪いがライオンはウサギ相手でもいつでも本気なんだぜっ」
とガッツポーズを決めるグレイ。

とそこにエアリーがギルドから出てきた。
そして俺が地面に倒れているのを見ると急いで駆け寄ってくる。

「クロクロっ。今回復魔法をかけてあげるからっ」
「……いや、大丈夫だよ」
だが俺はそんなエアリーをよそに立ち上がった。

「お、おい、立ったぞあいつっ」
「ピンピンしてるぜっ」
「グレイさんの一撃をまともにくらったのにっ……」

「ちょ、ちょっと、クロクロ大丈夫なのっ?」
エアリーが俺の腕に触れる。

「ああ、問題ない。少し痛かったけどな」
「な、なっ!? クロクロっ、なんであんた無事なんだっ……ブーストでパワーも三倍になったおれ様のパンチをもろに受けたんだぞっ……!」
グレイが信じられないものを見たという表情で俺を見て言った。

グレイの言葉を無視して、
「今度はこっちの番だぞ」
言うと俺もブーストを使ってみることにした。
今の俺ならレベル10まで使えるものの寿命が縮まる恐れもあるのでレベル2くらいにおさえておこう。

「ブースト、レベル2っ」
唱えると体全体が熱くなり全身に力がみなぎってくる。

「マ、マジかよ……あ、あんた、本当にEランクの冒険者かっ……?」
「ああ、俺の一撃に耐え切れたらギルドカードを見せてやるよ」
「っ……」
唾を飲み込み身構えるグレイ。
その顔は恐怖ににじんでいた。

「行くぞっ」
声を上げた次の瞬間、俺はグレイの背後に移動していた。

「き、消えっ……!?」
グレイの目には俺が消えたように映ったらしい。
周りで見ていた冒険者たちも俺の動きに追いついてこれていないようだった。

俺はグレイの首元に素早くチョップを打ち込んだ。
その攻撃によりグレイが「ぅがっ……!」と声を発して地面に倒れる。

何が起きたのか理解できていない冒険者たちを前にして俺はブーストを解くとエアリーのもとまで歩いていった。

「エアリー、回復魔法なら俺じゃなくてあいつにしてやってくれ」
エアリーに声をかけると俺はギルドへと戻る。
そして冒険者が一人もいないギルド内で俺はゆっくりと依頼選びを再開するのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

勇者に恋人寝取られ、悪評付きでパーティーを追放された俺、燃えた実家の道具屋を世界一にして勇者共を見下す

大小判
ファンタジー
平民同然の男爵家嫡子にして魔道具職人のローランは、旅に不慣れな勇者と四人の聖女を支えるべく勇者パーティーに加入するが、いけ好かない勇者アレンに義妹である治癒の聖女は心を奪われ、恋人であり、魔術の聖女である幼馴染を寝取られてしまう。 その上、何の非もなくパーティーに貢献していたローランを追放するために、勇者たちによって役立たずで勇者の恋人を寝取る最低男の悪評を世間に流されてしまった。 地元以外の冒険者ギルドからの信頼を失い、怒りと失望、悲しみで頭の整理が追い付かず、抜け殻状態で帰郷した彼に更なる追い打ちとして、将来継ぐはずだった実家の道具屋が、爵位証明書と両親もろとも炎上。 失意のどん底に立たされたローランだったが、 両親の葬式の日に義妹と幼馴染が王都で呑気に勇者との結婚披露宴パレードなるものを開催していたと知って怒りが爆発。 「勇者パーティ―全員、俺に泣いて土下座するくらい成り上がってやる!!」 そんな決意を固めてから一年ちょっと。成人を迎えた日に希少な鉱物や植物が無限に湧き出る不思議な土地の権利書と、現在の魔道具製造技術を根底から覆す神秘の合成釜が父の遺産としてローランに継承されることとなる。 この二つを使って世界一の道具屋になってやると意気込むローラン。しかし、彼の自分自身も自覚していなかった能力と父の遺産は世界各地で目を付けられ、勇者に大国、魔王に女神と、ローランを引き込んだり排除したりする動きに巻き込まれる羽目に これは世界一の道具屋を目指す青年が、爽快な生産チートで主に勇者とか聖女とかを嘲笑いながら邪魔する者を薙ぎ払い、栄光を掴む痛快な物語。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

異世界召喚されたのに召喚人数制限に引っ掛かって召喚されなかったのでスキル【転移】の力で現実世界で配送屋さんを始めたいと思います!

アッキー
ファンタジー
 時空間(ときくうま)は、中学を卒業し、高校入学までの春休みを自宅で、過ごしていたが、スマホゲームをしている最中に、自分が、座っている床が、魔方陣を描いた。  時空間(ときくうま)は、「これは、ラノベでよくある異世界召喚では」と思い、気分を高揚させ、時がすぎるのを待った。  そして、いつの間にか、周りには、数多くの人達がいた。すぐに、この空間全体から、声が聞こえてきた。 「初めまして、私は、転移を司る女神です。ここに居る皆様を異世界に転移させたいと思います。ただ、ひとつの異世界だけでなく、皆様が、全員、異世界に転移出来るように数多くの異世界にランダムで、転移させて頂きます。皆様には、スキルと異世界の言葉と読み書きできるようにと荷物の収納に困らないように、アイテムボックスを付与してあげます。スキルに関しては、自分の望むスキルを想像して下さい。それでは、皆様、スキルやその他諸々、付与できたようなので、異世界に召喚させて頂きます」 「それでは、異世界転移!」 「皆様、行ったようですね。私も仕事に戻りますか」 「あの~、俺だけ転移してないのですが?」 「えーーーー」 女神が、叫んでいたが、俺はこれからどうなるのか? こんな感じで、始まります。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

処理中です...