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第55話 決勝戦
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第二試合はあっさりと決着がついた。
俺がドラチェフさんたちのもとに戻ってすぐに、
「勝者はロイさんですっ!」
とムゲンさんから勝ち名乗りが上げられる。
そして俺もロイさんも休むことなく次の決勝戦のため広場の中央に移動した。
俺とロイさんが大勢の町の人たちと騎士たちの見ている前で対峙する。
「ロイー、負けるんじゃないぞーっ!」
「今年も優勝だロイっ!」
「ロイ頑張ってーっ!」
やはり地元ということもあり応援の大半がロイさんへと向けられている。
そんな中、
「クロクロ様ー、頑張ってくださいませーっ!」
クラスコに住んでいるくせにパリスがクラスコの城下町の騎士団長であるロイさんにではなく俺に声援を送ってきた。
その声に振り返り見るとパリスはそれを父親であるガイバラさんに注意されている。
ガイバラさんはいい人だからきっとどの騎士団にも肩入れしないように中立的な立場で見守っているのだろう。
少しだけしょんぼりしてしまったパリスに俺は笑いかけてやった。
ドラチェフさんのためにもロレンスの町の人のためにもロレンスの町の騎士たちのためにも、そしてパリスのためにも負けられないな。
ドラチェフさんやパリスたちに目を向けていると、
「クロクロ、おれはお前が決勝に残ると思っていたぞ」
ロイさんが話しかけてくる。
「お前は運動能力だけなら間違いなくここにいる誰よりも上だからな」
「それはどうも」
「だが剣に関しては素人のようだな。今回は剣での勝負だからおれに分がある」
やっぱり剣の扱いがド素人だということはバレているか。
「町の人たちの期待もあるからな、おれは負ける気はさらさらないぜ」
「それは俺も同じですよ」
「ふふんっ、言うじゃないか」
ロイさんはにやりと口角を上げた。
「それでは決勝戦、始めっ!」
◇ ◇ ◇
ムゲンさんの掛け声がしてもロイさんは動かずにじっと俺を見据えていた。
俺もまたロイさんの一挙手一投足に気を張る。
単純なパワーやスピードでは俺の方が上だがこれは剣での勝負、ロイさんの言った通り俺は剣術に関しては素人だ。
「どうした? 攻めてこないのか?」
「そっちこそ」
「ならおれから行くぜっ!」
ロイさんが木剣を振り上げ攻撃を仕掛けてきた。
俺はその剣撃を持ち前のスピードでなんとかかわしていく。
さっきのデールさんとの勝負の二の舞にならないように首から上をガードしながら俺も木剣を振り返す。
するとロイさんは首から上ではなく俺の鎧の隙間を縫うように突きを放ってきた。
鋭い突きが俺の腕の関節部分をとらえる。
「うおっ!?」
不意の強烈な一撃に俺は持っていた木剣を手放してしまった。
その隙を逃さずロイさんはすぐさま追撃を俺に浴びせてくる。
俺は乱れ飛んでくる剣撃を必死にガードしつつ落ちてしまった木剣を拾うとロイさんから距離をとった。
「さすがにタフだな……これだけ打ち込んでいるのに効いている感じがまったくしないぜ」
ロイさんが大きく肩を揺らしながら口に出す。
「並みの騎士ならとっくに降参しているか気絶しているはずなんだけどな……」
「……そうですか」
と返すが俺は俺で決め手がない。
俺の剣の腕ではロイさんの首から上を上手く狙い打ちできるとは思えない。
しかもロイさんは俺の攻撃を予想して首から上を片方の腕で完全に防御しながら戦っている。
さて……どうするか。
!
とそこで作戦とも呼べないような作戦を思いついた。
「行くぜっ!」
言うなりロイさんが突っ込んできた。
その動きに合わせて俺も前に出る。
そしてロイさんの一撃を避けずに額からぶつかっていった。
なんてことはない、肉を切らせて骨を断つ。
俺はロイさんの剣撃をあえて受けるとロイさんの鎧の上から心臓付近をめがけて木剣で思いきり突いた。
「ごはぁっ……!」
俺の力と鎧の強度に耐え切れず木剣が砕けるがその突きの衝撃はロイさんの体を後方にふっ飛ばすには充分だった。
心臓に強い衝撃を受けたことで立ち上がれないでいるロイさんを見て、
「し、勝負ありっ! 勝者はクロクロさんですっ!」
ムゲンさんが声を張り上げる。
一瞬静かになる広場。息をのむ観戦者たち。
ヤバい……空気を読まずに勝ってしまった。
だが俺が反省しかけた時だった。
「「「おおーっ!!」」」
と広場に集まっていた町の人たちと騎士たちから割れんばかりの大歓声が沸き起こったのだった。
俺がドラチェフさんたちのもとに戻ってすぐに、
「勝者はロイさんですっ!」
とムゲンさんから勝ち名乗りが上げられる。
そして俺もロイさんも休むことなく次の決勝戦のため広場の中央に移動した。
俺とロイさんが大勢の町の人たちと騎士たちの見ている前で対峙する。
「ロイー、負けるんじゃないぞーっ!」
「今年も優勝だロイっ!」
「ロイ頑張ってーっ!」
やはり地元ということもあり応援の大半がロイさんへと向けられている。
そんな中、
「クロクロ様ー、頑張ってくださいませーっ!」
クラスコに住んでいるくせにパリスがクラスコの城下町の騎士団長であるロイさんにではなく俺に声援を送ってきた。
その声に振り返り見るとパリスはそれを父親であるガイバラさんに注意されている。
ガイバラさんはいい人だからきっとどの騎士団にも肩入れしないように中立的な立場で見守っているのだろう。
少しだけしょんぼりしてしまったパリスに俺は笑いかけてやった。
ドラチェフさんのためにもロレンスの町の人のためにもロレンスの町の騎士たちのためにも、そしてパリスのためにも負けられないな。
ドラチェフさんやパリスたちに目を向けていると、
「クロクロ、おれはお前が決勝に残ると思っていたぞ」
ロイさんが話しかけてくる。
「お前は運動能力だけなら間違いなくここにいる誰よりも上だからな」
「それはどうも」
「だが剣に関しては素人のようだな。今回は剣での勝負だからおれに分がある」
やっぱり剣の扱いがド素人だということはバレているか。
「町の人たちの期待もあるからな、おれは負ける気はさらさらないぜ」
「それは俺も同じですよ」
「ふふんっ、言うじゃないか」
ロイさんはにやりと口角を上げた。
「それでは決勝戦、始めっ!」
◇ ◇ ◇
ムゲンさんの掛け声がしてもロイさんは動かずにじっと俺を見据えていた。
俺もまたロイさんの一挙手一投足に気を張る。
単純なパワーやスピードでは俺の方が上だがこれは剣での勝負、ロイさんの言った通り俺は剣術に関しては素人だ。
「どうした? 攻めてこないのか?」
「そっちこそ」
「ならおれから行くぜっ!」
ロイさんが木剣を振り上げ攻撃を仕掛けてきた。
俺はその剣撃を持ち前のスピードでなんとかかわしていく。
さっきのデールさんとの勝負の二の舞にならないように首から上をガードしながら俺も木剣を振り返す。
するとロイさんは首から上ではなく俺の鎧の隙間を縫うように突きを放ってきた。
鋭い突きが俺の腕の関節部分をとらえる。
「うおっ!?」
不意の強烈な一撃に俺は持っていた木剣を手放してしまった。
その隙を逃さずロイさんはすぐさま追撃を俺に浴びせてくる。
俺は乱れ飛んでくる剣撃を必死にガードしつつ落ちてしまった木剣を拾うとロイさんから距離をとった。
「さすがにタフだな……これだけ打ち込んでいるのに効いている感じがまったくしないぜ」
ロイさんが大きく肩を揺らしながら口に出す。
「並みの騎士ならとっくに降参しているか気絶しているはずなんだけどな……」
「……そうですか」
と返すが俺は俺で決め手がない。
俺の剣の腕ではロイさんの首から上を上手く狙い打ちできるとは思えない。
しかもロイさんは俺の攻撃を予想して首から上を片方の腕で完全に防御しながら戦っている。
さて……どうするか。
!
とそこで作戦とも呼べないような作戦を思いついた。
「行くぜっ!」
言うなりロイさんが突っ込んできた。
その動きに合わせて俺も前に出る。
そしてロイさんの一撃を避けずに額からぶつかっていった。
なんてことはない、肉を切らせて骨を断つ。
俺はロイさんの剣撃をあえて受けるとロイさんの鎧の上から心臓付近をめがけて木剣で思いきり突いた。
「ごはぁっ……!」
俺の力と鎧の強度に耐え切れず木剣が砕けるがその突きの衝撃はロイさんの体を後方にふっ飛ばすには充分だった。
心臓に強い衝撃を受けたことで立ち上がれないでいるロイさんを見て、
「し、勝負ありっ! 勝者はクロクロさんですっ!」
ムゲンさんが声を張り上げる。
一瞬静かになる広場。息をのむ観戦者たち。
ヤバい……空気を読まずに勝ってしまった。
だが俺が反省しかけた時だった。
「「「おおーっ!!」」」
と広場に集まっていた町の人たちと騎士たちから割れんばかりの大歓声が沸き起こったのだった。
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