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第50話 馬車に揺られて

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俺が騎士になってから一週間が経過し町対抗の騎士団によるレクリエーション大会当日の朝を迎えた。
大会はロレンスの町から少し離れたところにあるクラスコ城の城下町で行われるということでドラチェフさんやランド、俺を含めた選抜メンバー二十人は朝早くから馬車に乗り込みクラスコ城へと向かっていた。

揺れる馬車の中、
「ドラチェフさん、今日の大会って具体的には何をするんですか?」
俺は対面に腰かけていたドラチェフさんに話しかける。

「あー、クロクロくんにはまだ言っていなかったか。競技は四種目だよ。鎧を着た状態での全員マラソンと二十対二十の綱引きと五対五の模擬戦と一対一の模擬戦の四つだ。ちなみに参加するのはロレンスの町とクラスコの城下町とディオングンの町とハルジオンの町の騎士団で計八十人だね」
「へー」
なんか高校の頃の体育祭みたいだな。

「それと魔法は使っちゃいけないからね」
「そうなんですか」
じゃあせっかく覚えたブーストは使えないのか。

「ガイバラ様も見に来るはずだからな、今年こそは無様な負け姿は見せられないぜ」
とランドが闘志を燃やす。

「え、ガイバラ……って領主のガイバラさんのことか?」
「そうだよ、決まってるだろ」
そう言ってから「あ、そっか。お前記憶がなかったんだっけ」とランドが一人うなずいた。
記憶喪失の設定にしておいたから何かと都合がいい。

「ガイバラ様はクラスコ城の当主だから当然クラスコの連中を応援してるんだろうけどそんな態度はおくびにも出さないからな」
「うん、ガイバラ様は立派な人だよ」
ランドの言葉にドラチェフさんが返す。

「え、ガイバラさんってクラスコ城に住んでいるのか?」
「ああ、そうだぜ」
当たり前だと言わんばかりにランド。

「じゃあガイバラさんの娘のパリスもクラスコ城に住んでいるのか?」
「まあな。っていうかクロクロお前、パリス様と知り合いみたいな口ぶりだな」
「知り合いといえば知り合いかな。ガイバラさんもだけど」
「はぁっ? マジかよ。なんでガイバラ様と知り合いなんだよ」
「まあ、ベータ村でちょっとな」
「ちょっとなんだよ」
ランドは訊いてくるが、パリスが誘拐されたところを助けたなんてことは言わない方がいいのかもしれない。
うん、黙っておこう。

俺はランドを「別にいいだろ」とあしらうと馬車の窓から外を眺めた。

遠くに大きなお城が見える。
……あれがガイバラさんとパリスの住んでいるクラスコ城か。
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