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第49話 ブースト

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俺とランドは応援に駆けつけた騎士たちに捕まえた男を預けるとドラチェフさんの向かった病院へと急いだ。
そして現在――


「すみませんでした団長っ」
「気にしないでいいよ。犯人は無事捕まえることが出来たんだし胸を刺された男性も大事には至らなかったんだから」

ここはロレンスの町の病院前。
ランドがドラチェフさんに頭を下げるがドラチェフさんはこれを笑顔でやり過ごす。

「でもおれがもっとしっかりしてれば……」
「誰にだって失敗はあるさ。それを次に活かすことが大事だよ」
「は、はい、すみません……クロクロも悪かったな。尻拭いさせちまって」
「いや、そんなことないさ。ランドが犯人は変な技を使うって教えてくれたから制圧できたんだ」
「そっか。そう言ってくれてありがとな、クロクロ」
ランドは笑ってみせた。

「さてそれじゃあ、ランドくんもクロクロくんも見回りの続き気合い入れていくよっ」
「「はいっ」」

この後俺たち三人は結局夜中まで町の見回りをしたのだった。


◇ ◇ ◇


そして翌日からは朝の見回りと夜の見回りに加えて剣術と魔法の訓練が始まった。
結論から先に言うと俺は剣術のセンスがまったくなかったようだ。

ドラチェフさんの指導のもと他の騎士たちと一緒に一週間みっちりしごかれたが、
「違うっ。それではただ力任せに振っているだけだっ」
とか、
「違うっ。さっき教えただろう、素早く振ればいいってものじゃないんだよっ」
とか散々ダメ出しをくらった。
そして一週間経っても俺の剣の腕はほとんど上達することはなかった。

「う~ん、クロクロくんはなまじパワーもスピードもあるせいで剣をまったく使いこなせていないね。これならむしろ素手で戦った方が強いくらいだよ」
ドラチェフさんが訓練最終日に俺に放った言葉だ。
まあ、要するに俺には武器を扱う才能の欠片もないってことだろう。

だがその代わりといってはなんだが俺の才能が開花したものもある。
それは魔法だった。

初歩中の初歩の回復魔法であるヒールも使えない俺だったがたった一つだけ使える魔法があったのだ。
それはブーストという身体能力を向上させる魔法でドラチェフさん曰く、一万人に一人使えるかどうかというかなりレアなものだった。

しかもこのブーストという魔法はレベルが存在していてレベル1だと身体能力を1.5倍に、レベル2だと2倍に出来るらしくドラチェフさんが言うには俺の体力と魔力をもってすればレベル5までは扱えるだろうということだった。

それを聞いて俺が試してみたところ――

「ブースト、レベル10っ!」
唱えた瞬間ぞわぞわっと全身の毛が逆立ち体中に力がみなぎってくるのを感じる。

「な、なんとっ……」
「マジかよっ……!?」
「嘘だろっ……」

――俺はドラチェフさんやランドを含め騎士全員の見ている前でレベル10まで使うことに成功したのだった。


俺は「ブースト解除」と口にして魔法の効力を消す。

「す、すごいなクロクロくん……ああは言ったけど正直レベル5だって使える者は多分この世にはいないと思っていたのに、まさかレベル10まで使えるなんて……」
ドラチェフさんが信じられないものを見たというような顔を俺に向けた。

「いや、でもすごく疲れますねこれ。レベル10は長時間維持するのは無理だと思います」
「あ、ああ、そうだね。ブーストは体に負担がかかる魔法だからクロクロくんでもそう頻繁に使わない方がいいと思う。レベルが高ければ高いほど体にかかる負荷も大きくなるから下手したら寿命が縮まってしまうかもしれないよ」
「そうですか……わかりました」

疲労感だけならともかく寿命が縮まると聞いてはさすがに不安を覚える。
せっかくマスターしたブーストだが使うのはなるべく控えることにしよう。
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