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第47話 夜の町

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「おーい、クロクロくん。そろそろ町の見回りに行くよー」
「はい、すぐ行きますっ」

部屋の外から聞こえたドラチェフさんの声で俺はベッドから起き上がると素早く鎧と剣を身につけ部屋を出た。
とそこにはドラチェフさんだけではなくランドも一緒にいた。

「今日の見回りはこの三人でやるからね」
「よろしくな、クロクロ」
ドラチェフさんとランドは俺を見て言う。

「はい、わかりました。ランドもよろしく」
俺は二人にそう返すと三人で宿舎を出て夜の町へと繰り出した。


◇ ◇ ◇


夜のロレンスの町は賑やかだった。
あちらこちらに灯がともり人出は昼間よりもむしろ多いくらいだった。
俺たちはそんな町の中を歩いて回った。

その途中酔っ払いに絡まれている女性を助けたり喧嘩騒ぎを仲裁したりと少しでも治安を乱している者を見かけたら俺たち騎士が割って入る。

「あまり飲み過ぎないようにしたまえよ」
「「は~い!」」
ドラチェフさんの言葉に顔を赤らめた男性二人組が肩を抱き寄せながら去っていく。

「いつもこういうことをしているんですね」
「まあね、夜の町は犯罪が多発しやすいからね。わたしたちが見回っているというだけでもその抑止につながればいいんだけどね」
とドラチェフさん。
初めて会った時よりずっとしっかりした印象だ。


「なあクロクロ、ところでお前どこ出身なんだ?」
隣を歩くランドが訊いてきた。

「ん、俺か? 俺はよくわからないんだ。記憶喪失でな」
「記憶喪失っ!? マジかよっ」
「ああ」
本当は違うが別の世界から来たなんて馬鹿正直に答えるよりはマシだろう。

「じゃあこれまでどこで何してたんだよ」
「気付いたらベータ村の近くの森にいたんだ。それからはずっとベータ村で世話になってた」
「へー、っていうかお前記憶ないくせに悲壮感がまったくないな」
「そうかな」
「じゃお前の強さの秘密もわからずじまいってことか」
ランドがそう言った時だった。

「きゃあぁぁーっ!」

女性の悲鳴が夜の町に響いた。

「おっと、二人ともその話はあとだ。走るぞっ」
「「はいっ」」

言うが早いか俺たちは女性の悲鳴の聞こえた方へと駆け出していた。


◇ ◇ ◇


「どうしましたかっ?」
女性のもとへたどり着くとドラチェフさんが声をかける。
女性は路地にうずくまり肩を震わせていた。

「あ、あそこに人の死体が……」
女性は震える手で路地の奥の方を指差す。

「ランドくん、クロクロくん、見てきてくれ」
「「はい」」

俺とランドはドラチェフさんの指示通り路地の奥へと歩を進めた。
すると暗がりの中に胸を刃物で突き刺されて血を流し倒れている男性の姿があった。

「クロクロ、お前は生きてるかどうか確かめてくれっ」
言いながらランドはきょろきょろと辺りを見回す。
おそらく怪しい人物を探しているのだろう。

その間に俺は倒れている男性に駆け寄り脈を確認する。

とくん……とくん……。

「ドラチェフさん、まだこの男性息がありますっ!」
「わかった、わたしが医者に運ぶっ。クロクロくんはこの女性を見ててくれっ」
ドラチェフさんは俺がこの町にまだ詳しくないことを知ってかそう言うとこちらへ向かってきた。
俺はドラチェフさんと入れ違いでまだ怯えている女性のもとへ。

するとその時、
「あっ、お前ちょっと待てっ!」
突如ランドが声を上げた。
その直後野次馬の中から一人の背の高い男が走って逃げていく。
それを追うランド。

「クロクロくん、その女性は大丈夫だからランドくんと一緒に行ってくれっ! 皆さん、そこにいる女性をお願いしますっ!」
ドラチェフさんが男性を抱えながら俺と周りの人たちに声を飛ばす。

俺はドラチェフさんの命を受け、
「わかりましたっ」
すぐさまランドを追いかけた。
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