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第35話 宿屋ガラムマサラ
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「は~、俺って意外と怒りっぽかったのかな……」
Aランク冒険者のゴードンについ頭にきて力ずくで追い払ったことにより今俺がギルドに戻ると間違いなく冒険者たちから奇異な目で見られ質問攻めにされることだろう。
それはなんとしてでも避けたかったので俺はとりあえずギルドで依頼を受けるのは後回しにして今日の寝床を確保することにした。
ロレンスの町はとても大きいので通行人に宿屋の情報を訊いてからなるべく安い宿屋へと向かう。
俺の所持金は金貨五枚と銀貨五枚。
ベータ村で暮らす分には充分すぎるほどのお金だったがこの町ではどうだろうか。
ロレンスの町の物価がまるでわからないので少々不安だ。
町中をしばらく歩くとガラムマサラという宿屋に行き着いた。
話に聞いた限りでは、このガラムマサラは朝晩二食付きで女将さんの愛想もよくそれでいてかなり割安だという今の俺にはとてもありがたい宿屋だったので、俺は期待に胸を膨らませながら玄関の扉を開けた。
「はい、いらっしゃい!」
扉を開けるとほぼ同時に玄関にいた恰幅のいい中年女性が声を弾ませ出迎えてくれる。
「お客さん、はじめましてだねっ?」
「はい。あのすいません、いきなりですけどこの宿屋って一泊おいくらですか?」
「一泊二食付きで銀貨五枚だよっ」
と中年女性。
銀貨五枚か……。
銀貨十枚で金貨一枚だから……うーん、これって安いのかな?
俺の表情を察してか中年女性は、
「自慢じゃないけどここいらじゃうちが一番安くてサービスがいいよ。悪いこと言わないからうちに泊まりなさいなっ」
人懐こい笑顔を見せた。
「……そうですね、わかりました。じゃあとりあえず今日一泊させてください」
「はーい、ありがとうねっ。お客さんお名前は?」
「クロクロです」
「クロクロさんだね。あたしはこの宿屋の女将でドナテッラ、よろしく頼むよっ」
「はい、こちらこそ」
この人が女将さんだったか。
前評判通りたしかに愛想がよく、相手を嫌な気にさせることなく簡単に懐に入っていくような感じがする。
「じゃあ部屋はここ真っ直ぐ行って突き当たり左の一番いい部屋を使っていいからねっ」
「ありがとうございます。あ、あと部屋に荷物を置いたらちょっとギルドに行ってきたいんですけど……」
「はいよ。晩ご飯はきっかり二時間後、少しでも遅れたら片付けちゃうからねっ」
「は、はあ、わかりました」
本気なのか冗談なのかわかりづらい女将さんの言葉を軽くいなすと俺は自分の部屋へと歩みを進めた。
◇ ◇ ◇
女将さんが一番いい部屋と称した通り、俺の泊まる部屋は広々としてまるで高級旅館の一室のようだった。
それでいて堅苦しくなく落ち着いた雰囲気もある。
これでご飯もついて銀貨五枚ならやはり安いのかもしれないな。
俺はその部屋の片隅に肩から下げていた皮の袋を置くとお金とギルドカードだけ持って部屋を出る。
笑顔の女将さんに「行ってきます」と声をかけて宿屋をあとにした俺は、お金を稼ぐため依頼を引き受けるべく再びギルドへと向かうのだった。
Aランク冒険者のゴードンについ頭にきて力ずくで追い払ったことにより今俺がギルドに戻ると間違いなく冒険者たちから奇異な目で見られ質問攻めにされることだろう。
それはなんとしてでも避けたかったので俺はとりあえずギルドで依頼を受けるのは後回しにして今日の寝床を確保することにした。
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俺の所持金は金貨五枚と銀貨五枚。
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話に聞いた限りでは、このガラムマサラは朝晩二食付きで女将さんの愛想もよくそれでいてかなり割安だという今の俺にはとてもありがたい宿屋だったので、俺は期待に胸を膨らませながら玄関の扉を開けた。
「はい、いらっしゃい!」
扉を開けるとほぼ同時に玄関にいた恰幅のいい中年女性が声を弾ませ出迎えてくれる。
「お客さん、はじめましてだねっ?」
「はい。あのすいません、いきなりですけどこの宿屋って一泊おいくらですか?」
「一泊二食付きで銀貨五枚だよっ」
と中年女性。
銀貨五枚か……。
銀貨十枚で金貨一枚だから……うーん、これって安いのかな?
俺の表情を察してか中年女性は、
「自慢じゃないけどここいらじゃうちが一番安くてサービスがいいよ。悪いこと言わないからうちに泊まりなさいなっ」
人懐こい笑顔を見せた。
「……そうですね、わかりました。じゃあとりあえず今日一泊させてください」
「はーい、ありがとうねっ。お客さんお名前は?」
「クロクロです」
「クロクロさんだね。あたしはこの宿屋の女将でドナテッラ、よろしく頼むよっ」
「はい、こちらこそ」
この人が女将さんだったか。
前評判通りたしかに愛想がよく、相手を嫌な気にさせることなく簡単に懐に入っていくような感じがする。
「じゃあ部屋はここ真っ直ぐ行って突き当たり左の一番いい部屋を使っていいからねっ」
「ありがとうございます。あ、あと部屋に荷物を置いたらちょっとギルドに行ってきたいんですけど……」
「はいよ。晩ご飯はきっかり二時間後、少しでも遅れたら片付けちゃうからねっ」
「は、はあ、わかりました」
本気なのか冗談なのかわかりづらい女将さんの言葉を軽くいなすと俺は自分の部屋へと歩みを進めた。
◇ ◇ ◇
女将さんが一番いい部屋と称した通り、俺の泊まる部屋は広々としてまるで高級旅館の一室のようだった。
それでいて堅苦しくなく落ち着いた雰囲気もある。
これでご飯もついて銀貨五枚ならやはり安いのかもしれないな。
俺はその部屋の片隅に肩から下げていた皮の袋を置くとお金とギルドカードだけ持って部屋を出る。
笑顔の女将さんに「行ってきます」と声をかけて宿屋をあとにした俺は、お金を稼ぐため依頼を引き受けるべく再びギルドへと向かうのだった。
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