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第33話 冒険者ギルド
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ロレンスの町にたどり着いた俺は馬車で一緒だった女の子に手を振って別れると通りすがりの人に冒険者ギルドの場所を訊ねる。
親切に教えてくれた男性の言葉を頼りに俺はロレンスの町の冒険者ギルドへと向かった。
ロレンスの町はノベールの町以上に大きな町で人もたくさんいた。
商店も多く立ち並んでいて町は活気であふれている。
俺がおのぼりさん丸出しで視線をあちらこちらに飛ばしながら歩いていると、
「んっ、きみはクロクロくんじゃないかっ」
前から歩いてきていた鎧を纏った集団の先頭にいた一人が声を上げた。
俺は前を向いてその男性の顔をよく見る。
「あ、あなたはドラチェフさんっ」
「どうしてこんなところにいるんだクロクロくんっ」
俺に話しかけてきたのは前にグェスさんをかけて勝負をしたことのあるドラチェフさんだった。
そういえばロレンスの町の騎士団長をやっていると言っていた気もする。
「俺は冒険者になりにきました」
「きみが冒険者か、なるほどそれはいい考えかもしれないね。それでグェスちゃんは元気かい?」
俺に勝負で負けてグェスさんのことは諦めたはずだがまだ未練があるのか、訊いてきた。
「はい、元気ですよ」
「そうかい。それは何よりだね」
ドラチェフさんの後ろには二十人くらいの男性がいる。
俺とドラチェフさんの会話が終わるのをじっと待っているようだった。
それを察して俺は、
「あの、ドラチェフさんたち仕事中なんじゃ……?」
と話題を変えると、
「おっと、いけない。わたしたちは訓練があるからね、これで失礼するよ」
ドラチェフさんはそう言って部下の人たちを連れて去っていった。
俺は彼らの後ろ姿を眺めてから、
「……俺も行くか」
あらためて冒険者ギルドに向かって歩き出した。
◇ ◇ ◇
「へー、大きいなぁ」
俺は目の前の建物を見上げ感嘆の声を漏らしていた。
聞いたところによるとここが冒険者ギルドという施設らしい。
俺は少し緊張しつつ中へと入る。
ギルド内には冒険者らしき人が大勢いてテーブルを囲んで、もしくは掲示板の前で話し合っていた。
受付カウンターに並んでいる人たちもいた。
そこはさながら携帯のキャリアショップとハローワークを足して二で割ったような空間だった。
俺が出入り口の前で立ち止まっていると、
「もしかしてギルドは初めてですか?」
ギルドの職員さんだろうか、きれいな女性が話しかけてきた。
「あ、はい、そうです」
「でしたらまずは受付カウンターにお並びください。そちらで冒険者登録というものを済ませてから掲示板に貼られた依頼書から受けたい依頼をお選びになってまた受付カウンターにお並びくださいね」
「はい、わかりました。ありがとうございます」
俺はその女性にお礼を言うと一番すいている受付カウンターのもとへと足を運ぶ。
列に並んでしばらく待っていると俺の順番が回ってきた。
「お次の方どうぞ」
「はい」
俺は受付カウンターを間に挟んで女性と顔を合わせる。
女性の胸についていた名札にはミレルと書かれていた。
「冒険者登録をお願いしたいんですけど」
「わかりました。それでは名前と年齢をこの用紙に記入してください」
ミレルさんは手元から紙を一枚取り出すとペンと一緒に俺の前に差し出してくる。
俺はペンを取るとその紙に言われた通りに名前と年齢を書き込んでいった。
「クロクロさま、二十六歳、で間違いありませんね」
「はい」
どうせ黒岩蔵人なんて書いたって不審がられるのがオチだろう。
だったらクロクロと書いてしまえ、そう思って俺は自らクロクロという名前を名乗ったのだった。
「では登録料として金貨一枚いただけますでしょうか?」
「あ、はい」
俺はミレルさんに金貨を一枚差し出す。
これで俺の所持金は金貨と銀貨が五枚ずつだ。
「はい、手続きは完了いたしました。それではこちらをお持ちになってください」
ミレルさんがそう言って俺に渡してきたものはお店のポイントカードに似た黒色の一枚のカードだった。
「なんですか? これ」
「こちらはギルドカードといってご自身の冒険者ランクを証明する身分証明書のようなものです」
「冒険者ランク、ですか?」
「冒険者には上からS、A、B、C、D、Eとランクがわかれておりまして実績と経験を積むとより上のランクへと上がることが出来ます。ランクが高ければ高いほど難易度が高く報酬の高い依頼を受けることが出来る上にあらゆる施設で優遇されるので冒険者の皆様はより上のランクを目指しているんですよ」
「へー、そうなんですか」
俺はギルドカードとやらをじっくり見る。
ギルドカードの表面には大きくEと印字されていた。
「クロクロさまはたった今冒険者になったばかりですのでランクは一番下のEランクとなっております」
「なるほど……」
「それではあちらの掲示板に貼られている依頼書の中からご自身の冒険者ランクに見合った依頼を選んできてください」
「わかりました」
俺はミレルさんに頭を下げるとギルドカードを手に意気揚々と掲示板に向かって歩き出した。
親切に教えてくれた男性の言葉を頼りに俺はロレンスの町の冒険者ギルドへと向かった。
ロレンスの町はノベールの町以上に大きな町で人もたくさんいた。
商店も多く立ち並んでいて町は活気であふれている。
俺がおのぼりさん丸出しで視線をあちらこちらに飛ばしながら歩いていると、
「んっ、きみはクロクロくんじゃないかっ」
前から歩いてきていた鎧を纏った集団の先頭にいた一人が声を上げた。
俺は前を向いてその男性の顔をよく見る。
「あ、あなたはドラチェフさんっ」
「どうしてこんなところにいるんだクロクロくんっ」
俺に話しかけてきたのは前にグェスさんをかけて勝負をしたことのあるドラチェフさんだった。
そういえばロレンスの町の騎士団長をやっていると言っていた気もする。
「俺は冒険者になりにきました」
「きみが冒険者か、なるほどそれはいい考えかもしれないね。それでグェスちゃんは元気かい?」
俺に勝負で負けてグェスさんのことは諦めたはずだがまだ未練があるのか、訊いてきた。
「はい、元気ですよ」
「そうかい。それは何よりだね」
ドラチェフさんの後ろには二十人くらいの男性がいる。
俺とドラチェフさんの会話が終わるのをじっと待っているようだった。
それを察して俺は、
「あの、ドラチェフさんたち仕事中なんじゃ……?」
と話題を変えると、
「おっと、いけない。わたしたちは訓練があるからね、これで失礼するよ」
ドラチェフさんはそう言って部下の人たちを連れて去っていった。
俺は彼らの後ろ姿を眺めてから、
「……俺も行くか」
あらためて冒険者ギルドに向かって歩き出した。
◇ ◇ ◇
「へー、大きいなぁ」
俺は目の前の建物を見上げ感嘆の声を漏らしていた。
聞いたところによるとここが冒険者ギルドという施設らしい。
俺は少し緊張しつつ中へと入る。
ギルド内には冒険者らしき人が大勢いてテーブルを囲んで、もしくは掲示板の前で話し合っていた。
受付カウンターに並んでいる人たちもいた。
そこはさながら携帯のキャリアショップとハローワークを足して二で割ったような空間だった。
俺が出入り口の前で立ち止まっていると、
「もしかしてギルドは初めてですか?」
ギルドの職員さんだろうか、きれいな女性が話しかけてきた。
「あ、はい、そうです」
「でしたらまずは受付カウンターにお並びください。そちらで冒険者登録というものを済ませてから掲示板に貼られた依頼書から受けたい依頼をお選びになってまた受付カウンターにお並びくださいね」
「はい、わかりました。ありがとうございます」
俺はその女性にお礼を言うと一番すいている受付カウンターのもとへと足を運ぶ。
列に並んでしばらく待っていると俺の順番が回ってきた。
「お次の方どうぞ」
「はい」
俺は受付カウンターを間に挟んで女性と顔を合わせる。
女性の胸についていた名札にはミレルと書かれていた。
「冒険者登録をお願いしたいんですけど」
「わかりました。それでは名前と年齢をこの用紙に記入してください」
ミレルさんは手元から紙を一枚取り出すとペンと一緒に俺の前に差し出してくる。
俺はペンを取るとその紙に言われた通りに名前と年齢を書き込んでいった。
「クロクロさま、二十六歳、で間違いありませんね」
「はい」
どうせ黒岩蔵人なんて書いたって不審がられるのがオチだろう。
だったらクロクロと書いてしまえ、そう思って俺は自らクロクロという名前を名乗ったのだった。
「では登録料として金貨一枚いただけますでしょうか?」
「あ、はい」
俺はミレルさんに金貨を一枚差し出す。
これで俺の所持金は金貨と銀貨が五枚ずつだ。
「はい、手続きは完了いたしました。それではこちらをお持ちになってください」
ミレルさんがそう言って俺に渡してきたものはお店のポイントカードに似た黒色の一枚のカードだった。
「なんですか? これ」
「こちらはギルドカードといってご自身の冒険者ランクを証明する身分証明書のようなものです」
「冒険者ランク、ですか?」
「冒険者には上からS、A、B、C、D、Eとランクがわかれておりまして実績と経験を積むとより上のランクへと上がることが出来ます。ランクが高ければ高いほど難易度が高く報酬の高い依頼を受けることが出来る上にあらゆる施設で優遇されるので冒険者の皆様はより上のランクを目指しているんですよ」
「へー、そうなんですか」
俺はギルドカードとやらをじっくり見る。
ギルドカードの表面には大きくEと印字されていた。
「クロクロさまはたった今冒険者になったばかりですのでランクは一番下のEランクとなっております」
「なるほど……」
「それではあちらの掲示板に貼られている依頼書の中からご自身の冒険者ランクに見合った依頼を選んできてください」
「わかりました」
俺はミレルさんに頭を下げるとギルドカードを手に意気揚々と掲示板に向かって歩き出した。
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