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第28話 キノコ採り
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「クロクロさん、今日って時間ありますか?」
朝ご飯を食べていると対面に座るグェスさんが訊いてきた。
やることなど毎日あってないようなものなので「もちろんありますよ」と答える。
「よかったらこのあと私に付き合ってほしいんですけど」
「いいですよ。何するんですか?」
「近くの山に自生しているキノコを採ってきたいんです。とても美味しいんですけど私一人だと魔物が出てきた時ちょっと不安で。それに二人の方がたくさん採ってこられるので」
「わかりました。じゃあご飯食べ終わったら行きましょうか」
「はい、ありがとうございます」
食事を終えるとお皿を水に浸してから俺たちは家を出た。
村をあとにしてグェスさんの案内のもと美味しいキノコがたくさん生えているという山へと向かう。
俺は行ったことのない山へと繰り出すことに少しわくわくしていた。
というのもスローライフに憧れていた俺だったが実際やってみると毎日が暇で暇で退屈だったからだ。
アシスタントディレクターとして働いていた目の回るような忙しいブラックな環境だった日々でさえ懐かしく思うくらいだ。
一日の大半を寝て過ごす生活はとても魅力的なものだったが一か月もするとやはり飽きてくる。
もしかしたらグェスさんはそんな俺の様子に気付いて今回声をかけてくれたのかもしれない。
だとしたらお礼を言うのはむしろ俺の方だろう。
◇ ◇ ◇
目的の山にたどり着いた俺とグェスさんはあまり離れないようにしつつ山に自生していたキノコを一心不乱に採っていった。
グェスさんの言った通り山にはたくさんのキノコが生えていたのであっという間に背負っていたカゴがキノコでいっぱいになる。
「ふぅ~、こんなに採ったのに全然減らないですね」
足元のキノコを見回して口にする。
「はい。すごいですよね自然って」
グェスさんは額の汗をタオルで拭いながら返した。
「カゴもいっぱいになったのでそろそろ村に戻りましょうかクロクロさん」
「そうしましょう。俺お腹すいちゃいましたよ」
「ふふふっ、私もです」
俺たちが山を下りようとしたその時だった。
がさがさっ。
目の前の茂みが揺れた。
「クロクロさんっ」
「グェスさんは下がっててください」
俺はグェスさんの前に立ち茂みを注視する。
すると、
『ギギギ』
『ギギギッ』
茂みの中から二体のゴブリンが姿を見せた。
二体とも小さな剣を持っている。
「ゴブリンです。他にもいるかもしれないので一応気をつけてくださいね」
「はいっ」
俺は後ろにいるグェスさんに声を飛ばすとゴブリンたちを見据えて身構えた。
ゴブリンとは前にも戦ったことがあるが今回のゴブリンは武器を手にしている。
とりあえず用心して一体ずつ確実に仕留めるか。
『ギギギ!』
『ギギギッ!』
ゴブリンたちが剣を振り上げ向かってきた。
下手に避けるとグェスさんに当たってしまうおそれがあるので俺は避けずに真正面から受けて立つ。
俺は両腕でゴブリンたちの剣撃を受け止めると一体のゴブリンに前蹴りをくらわし後方に吹っ飛ばす。
そしてもう片方のゴブリンの剣を奪い取るとそれでゴブリンの胸部を突き刺した。
『ギギャッ……!』
剣が胸に刺さったままゴブリンが後ろに倒れ込む。
とそこで、
『ギャギャーーッ!!』
先程蹴飛ばしていたゴブリンが大きな鳴き声を上げた。
まるで仲間を呼ぶように。
すると――ずしんずしんと大きな足音が響いてくる。
直後暗がりから太く長い手が伸びてきたかと思うとその手はゴブリンの頭を掴みそのまま握り潰した。
「「っ!?」」
次の瞬間木々の合間から緑色の大きな体を揺らして現れたのは、
『グギギギギッ』
「キングゴブリンっ!?」
キングゴブリンという名の見るからに強そうな魔物だった。
朝ご飯を食べていると対面に座るグェスさんが訊いてきた。
やることなど毎日あってないようなものなので「もちろんありますよ」と答える。
「よかったらこのあと私に付き合ってほしいんですけど」
「いいですよ。何するんですか?」
「近くの山に自生しているキノコを採ってきたいんです。とても美味しいんですけど私一人だと魔物が出てきた時ちょっと不安で。それに二人の方がたくさん採ってこられるので」
「わかりました。じゃあご飯食べ終わったら行きましょうか」
「はい、ありがとうございます」
食事を終えるとお皿を水に浸してから俺たちは家を出た。
村をあとにしてグェスさんの案内のもと美味しいキノコがたくさん生えているという山へと向かう。
俺は行ったことのない山へと繰り出すことに少しわくわくしていた。
というのもスローライフに憧れていた俺だったが実際やってみると毎日が暇で暇で退屈だったからだ。
アシスタントディレクターとして働いていた目の回るような忙しいブラックな環境だった日々でさえ懐かしく思うくらいだ。
一日の大半を寝て過ごす生活はとても魅力的なものだったが一か月もするとやはり飽きてくる。
もしかしたらグェスさんはそんな俺の様子に気付いて今回声をかけてくれたのかもしれない。
だとしたらお礼を言うのはむしろ俺の方だろう。
◇ ◇ ◇
目的の山にたどり着いた俺とグェスさんはあまり離れないようにしつつ山に自生していたキノコを一心不乱に採っていった。
グェスさんの言った通り山にはたくさんのキノコが生えていたのであっという間に背負っていたカゴがキノコでいっぱいになる。
「ふぅ~、こんなに採ったのに全然減らないですね」
足元のキノコを見回して口にする。
「はい。すごいですよね自然って」
グェスさんは額の汗をタオルで拭いながら返した。
「カゴもいっぱいになったのでそろそろ村に戻りましょうかクロクロさん」
「そうしましょう。俺お腹すいちゃいましたよ」
「ふふふっ、私もです」
俺たちが山を下りようとしたその時だった。
がさがさっ。
目の前の茂みが揺れた。
「クロクロさんっ」
「グェスさんは下がっててください」
俺はグェスさんの前に立ち茂みを注視する。
すると、
『ギギギ』
『ギギギッ』
茂みの中から二体のゴブリンが姿を見せた。
二体とも小さな剣を持っている。
「ゴブリンです。他にもいるかもしれないので一応気をつけてくださいね」
「はいっ」
俺は後ろにいるグェスさんに声を飛ばすとゴブリンたちを見据えて身構えた。
ゴブリンとは前にも戦ったことがあるが今回のゴブリンは武器を手にしている。
とりあえず用心して一体ずつ確実に仕留めるか。
『ギギギ!』
『ギギギッ!』
ゴブリンたちが剣を振り上げ向かってきた。
下手に避けるとグェスさんに当たってしまうおそれがあるので俺は避けずに真正面から受けて立つ。
俺は両腕でゴブリンたちの剣撃を受け止めると一体のゴブリンに前蹴りをくらわし後方に吹っ飛ばす。
そしてもう片方のゴブリンの剣を奪い取るとそれでゴブリンの胸部を突き刺した。
『ギギャッ……!』
剣が胸に刺さったままゴブリンが後ろに倒れ込む。
とそこで、
『ギャギャーーッ!!』
先程蹴飛ばしていたゴブリンが大きな鳴き声を上げた。
まるで仲間を呼ぶように。
すると――ずしんずしんと大きな足音が響いてくる。
直後暗がりから太く長い手が伸びてきたかと思うとその手はゴブリンの頭を掴みそのまま握り潰した。
「「っ!?」」
次の瞬間木々の合間から緑色の大きな体を揺らして現れたのは、
『グギギギギッ』
「キングゴブリンっ!?」
キングゴブリンという名の見るからに強そうな魔物だった。
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