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第20話 五体のサンドウルフ

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「カレンったら毎日夜遅くまでシロとつきっきりで遊んでるのよ」

パトリシアさんとノベールの町まで向かう道中パトリシアさんが話しかけてくる。

「この前まではクロクロ、クロクロってずっと言ってたのにね」
「そうですね。でも新しい友達が出来たみたいでよかったですよ」
「はははっ、そうだね。さすがに八歳のお守りを毎日するのは大変だものね。今まであの子に付き合ってくれてありがとうねクロクロさん」
「いやあ、別に……」

ノベールの町まで薬を買いに行くパトリシアさんに護衛役として同行することになった俺は現在ベータ村とノベールの町の中間地点辺りまで来ていた。
馬車という交通手段もあるのだが「お金がもったいないわ」というパトリシアさんの一言で俺たちは砂地を突っ切って歩いている。
砂地にはサンドウルフが出てくることがあるのだが俺なら追い払えるので特に問題はない。

そう思っていたまさにその時、
『グルルルル……』
サンドウルフが隠れていたのだろうか、砂の中から突然姿を見せた。

『ウオオォォォーン』
と遠吠えをすると仲間のサンドウルフたちがどこからともなく集まってくる。
俺とパトリシアさんはあっという間に五体のサンドウルフに取り囲まれてしまった。

「クロクロさん、これ大丈夫っ?」
不安そうに目線を俺に向けてくるパトリシアさん。
さすがに五体のサンドウルフ相手ではまずいと思ったのだろう。

「俺は多分平気ですけど囲まれちゃってますからね、パトリシアさんのことを守り切れないかもしれません」
俺ならサンドウルフが何体襲ってこようがおそらく大丈夫だろうがパトリシアさんを守りながらとなると難しい。

「パトリシアさんは自分の身を守ることだけを考えてください」
そう口にした瞬間だった。
『ガオオォォッ!』
『ガオオォォッ!』
『ガオオォォッ!』
『ガオオォォッ!』
『ガオオォォッ!』
五体のサンドウルフが同時に襲いかかってきた。
三体は俺に二体はパトリシアさんに飛びかかってくる。

俺は素早く両腕を広げてわざとサンドウルフに腕を嚙ませるともう一体の攻撃を背中で受けながらパトリシアさんに向かってきていたサンドウルフのうちの一体を思いきり蹴飛ばした。

『ギャインッ……!』
俺の蹴りをまともにくらったサンドウルフが後方に吹っ飛んでいく。

残るもう一体のサンドウルフをパトリシアさんが護身用の剣で迎え撃つ。
剣を体の前に構えてなんとかサンドウルフの牙を防いでいた。

俺は両腕を思いきり振って二体のサンドウルフを振り払うと背中に噛みついていたサンドウルフの頭を掴んでパトリシアさんに襲いかかっている個体めがけて投げ飛ばした。
二体のサンドウルフが激突し地面に倒れる。

俺はその隙にさっきまで両腕に噛みついていたサンドウルフたちを一発ずつ殴って地面に沈めるとすぐさまパトリシアさんの前に立った。

「大丈夫ですか、パトリシアさん」
「ええ、なんとかね」
「あと二体だけなんで待っててくださいね」
そうパトリシアさんに言い残し俺は二体のサンドウルフのもとへ駆けていく。

「おおりゃあぁーっ」
今まさに起き上がった二体のサンドウルフを俺はまとめて殴り上げた。
天高く宙に上がったサンドウルフたちはその後地面に真っ逆さまに落ちて頭が砂に埋まった。

「ふぅ~……怪我はないですか?」
パトリシアさんに訊ねる。

「え、ええ、あたしは平気だけどクロクロさんはどうなの? 両腕噛まれてたみたいだけど……」
「あー、大丈夫ですよ。ちょっと痛かったけどなんともないです」
「そ、そう。それにしてもクロクロさんって強いのね、カレンが言ってたからなんとなくあたしよりちょっと強いくらいかなぁって思ってたけど全然思ってたよりすごかったわ。クロクロさんがいなかったら命がなかったかもね、馬車をケチったりしなければよかったわね」
「あはは、とりあえずパトリシアさんに怪我がなくてよかったです」
パトリシアさんに何かあったらカレンに合わせる顔がないからな。

――こうして砂地を通った甲斐あってこの後俺たちはノベールの町にだいぶ早く到着することができたのだった。
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