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第15話 飯屋

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自炊や自給自足の生活が思いのほか大変だということに気付いた俺は翌朝村の飯屋まで足を運んでいた。
飯屋の場所は昨日カレンに教えてもらっていたからすぐにわかった。

「すいません、同じものおかわりください」
「はいよー」

昨日の晩ろくに食べられなかった分を取り返すかのように二品目の野菜炒め定食を注文する。
やはりご飯は自分で作るよりプロに作ってもらったものの方が美味しいに決まっている。
幸いお金には充分余裕もあることだしこれからは毎食ここでお世話になろうかな。
などと考えていると、
「あークロクロ、やっぱりここにいたーっ」
カレンがドアをがらがらっと開けて入ってきた。

「カレン、朝からどうしたんだ?」
「それはこっちのセリフだよっ。クロクロのうちに遊びに行ったらいないんだもんっ」

カレンは店主に挨拶をしてから俺に向き直る。

「お腹すいてるならうちに来ればいいのにっ」
「いやさすがにそれは悪いからさ……」
「そんなことないよ、お母さんだってクロクロのこと心配してたんだから」
「それはありがたいけど俺一応お金も持ってるし、自分の力でなんとかしてみるよ」
「クロクロ頑固~っ」

この後カレンは俺が食事を終えるまでずっと隣に座って「うちで一緒に住もうよ~」と繰り返し言い続けた。
それ自体は本当に嬉しかったのだがやはりそれでは二十六歳の男として情けない。
俺は心を鬼にしてカレンの誘いをきっぱりと断ると店をあとにした。

「ねぇクロクロ、いくらお金があっても毎日ご飯屋さんで食べてたらお金なくなっちゃうよ~」
俺の後ろからカレンがついてくる。
パトリシアさんは今日も仕事なのでカレンは暇なのだそうだ。

「そのことなら問題ないよ。ほらカレンが言ってただろ、俺はSランクの冒険者くらいすごいって。いざとなったら俺はその冒険者になればいいんだから大丈夫さ」
「それはそうかもしれないけどさ~」
「ていうかどこまでついてくるつもりなんだ?」
「もちろんクロクロのうちだよっ。一緒に遊ぼっ」

どうでもいいがなぜ俺はカレンにこんなにも懐かれているのだろうか。
ゴブリンから助けてやったくらいで他に理由は思い当たらないのだが。

「子どもは子ども同士で遊べばいいだろ。俺二十六歳だぞ」
「だってみんな学校行くために引っ越しちゃったし一番年の近い子でもまだ三歳だよ。年が合わないよ」
「それは俺も同じだろうが」

この世界では学校は十歳から行き始めるようなので八歳のカレンは毎日が暇でしょうがないのだろう。

そうこうしていると家に到着した。
「あっクロクロ、おトイレ借りていいっ?」
「好きにしろ」
「じゃあお邪魔しまーす」
カレンが家に上がると廊下を駆けていく。

俺は水を飲むために台所に移動した。
すると、
「えっ!? だ、誰ですかっ!?」
そこには見知らぬ女性がいて料理をしている最中だった。
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