14 / 104
第14話 ちゃっちゃな挫折
しおりを挟む
昼ご飯と晩ご飯を兼ねた食事の支度のため庭の野菜をいくつか収穫しようとしていると、
「クロクロさーん!」
俺を呼ぶ声がした。
振り向き見るとそこにいたのはパトリシアさんだった。
「パトリシアさんっ」
「クロクロさん、カレンから聞いたわ。その家に住めるようになったみたいでよかったわね」
「はい、ありがとうございます」
「晩ご飯は大丈夫?」
パトリシアさんは俺のことを心配して来てくれたのだろう、訊いてくる。
「はい大丈夫です。カレンに案内してもらって食糧を買いましたし庭にも沢山野菜がなっているんで」
「そう。でも何か困ったことがあったらなんでも言うのよ」
「わかりました、ありがとうございます」
「じゃあまたね」
パトリシアさんはそれだけ言うと安心した様子で去っていった。
パトリシアさんのところにはこっちから出向くつもりだったがわざわざ来させてしまったな。
そう反省しながらも俺は庭の野菜に手を伸ばす。
「キュウリにトマトにトウモロコシ、それにゴーヤも……これだけあれば食べるものにも困らないな」
俺はとりあえずキュウリとトマトとトウモロコシを一つずつ手に取った。
……ゴーヤは今日はいいかな。
それらを持って台所に向かうとキュウリとトマトは水洗いしてトウモロコシは茹でてみる。
さらに俺はかまどを使い今日買ってきたお米を炊くことに。
そして一時間くらいして炊きあがったご飯と切った野菜を持って居間へと移動すると早速それらを食べてみた。
「……うっ、固いなぁ……あんまり、っていうか全然美味しくないなこれ」
初めてかまどで炊いたご飯はお世辞にも美味しいとは言えなかった。
生前はコンビニ弁当ばかりで自炊などしたことがなかった俺にしてみれば当然の結果かもしれない。
もっと言えば昨日今日食べたパトリシアさんの手料理が美味しすぎたせいもあって余計にまずく感じる。
俺はご飯は諦め野菜に箸を伸ばした。
まずはキュウリ。
味噌をつけて一口かじる。
「……う~ん、味噌の味でごまかしてる感じだなぁ」
続いてトマト。
塩をかけていただく。
「……な、なんかこれも微妙だなぁ」
最後にトウモロコシ。
茹でただけのトウモロコシにそのままかぶりついた。
「……あ、味がほとんどしない」
俺は箸をテーブルに置くと食べかけのご飯と野菜を前にして考え込む。
これから毎日朝昼晩自炊するのって大変だなぁ、と。
さらにはよくよく考えると農作業も面倒なんじゃないかなぁ、と。
丹精込めて何ヵ月もかけて作ってこの味じゃやりきれないぞ。
やはりパトリシアさんの家に居候させてもらっていた方が楽だったかもなんて後悔の念があふれてくる。
でも今さらやっぱり居候させてくださいというのも恥ずかしい。
俺にだってそれなりのプライドはある。
「はぁ~、まいったな~」
結局俺はこの日それ以上何も口にすることはなく早々に眠りについたのだった。
「クロクロさーん!」
俺を呼ぶ声がした。
振り向き見るとそこにいたのはパトリシアさんだった。
「パトリシアさんっ」
「クロクロさん、カレンから聞いたわ。その家に住めるようになったみたいでよかったわね」
「はい、ありがとうございます」
「晩ご飯は大丈夫?」
パトリシアさんは俺のことを心配して来てくれたのだろう、訊いてくる。
「はい大丈夫です。カレンに案内してもらって食糧を買いましたし庭にも沢山野菜がなっているんで」
「そう。でも何か困ったことがあったらなんでも言うのよ」
「わかりました、ありがとうございます」
「じゃあまたね」
パトリシアさんはそれだけ言うと安心した様子で去っていった。
パトリシアさんのところにはこっちから出向くつもりだったがわざわざ来させてしまったな。
そう反省しながらも俺は庭の野菜に手を伸ばす。
「キュウリにトマトにトウモロコシ、それにゴーヤも……これだけあれば食べるものにも困らないな」
俺はとりあえずキュウリとトマトとトウモロコシを一つずつ手に取った。
……ゴーヤは今日はいいかな。
それらを持って台所に向かうとキュウリとトマトは水洗いしてトウモロコシは茹でてみる。
さらに俺はかまどを使い今日買ってきたお米を炊くことに。
そして一時間くらいして炊きあがったご飯と切った野菜を持って居間へと移動すると早速それらを食べてみた。
「……うっ、固いなぁ……あんまり、っていうか全然美味しくないなこれ」
初めてかまどで炊いたご飯はお世辞にも美味しいとは言えなかった。
生前はコンビニ弁当ばかりで自炊などしたことがなかった俺にしてみれば当然の結果かもしれない。
もっと言えば昨日今日食べたパトリシアさんの手料理が美味しすぎたせいもあって余計にまずく感じる。
俺はご飯は諦め野菜に箸を伸ばした。
まずはキュウリ。
味噌をつけて一口かじる。
「……う~ん、味噌の味でごまかしてる感じだなぁ」
続いてトマト。
塩をかけていただく。
「……な、なんかこれも微妙だなぁ」
最後にトウモロコシ。
茹でただけのトウモロコシにそのままかぶりついた。
「……あ、味がほとんどしない」
俺は箸をテーブルに置くと食べかけのご飯と野菜を前にして考え込む。
これから毎日朝昼晩自炊するのって大変だなぁ、と。
さらにはよくよく考えると農作業も面倒なんじゃないかなぁ、と。
丹精込めて何ヵ月もかけて作ってこの味じゃやりきれないぞ。
やはりパトリシアさんの家に居候させてもらっていた方が楽だったかもなんて後悔の念があふれてくる。
でも今さらやっぱり居候させてくださいというのも恥ずかしい。
俺にだってそれなりのプライドはある。
「はぁ~、まいったな~」
結局俺はこの日それ以上何も口にすることはなく早々に眠りについたのだった。
0
お気に入りに追加
695
あなたにおすすめの小説
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
勇者に恋人寝取られ、悪評付きでパーティーを追放された俺、燃えた実家の道具屋を世界一にして勇者共を見下す
大小判
ファンタジー
平民同然の男爵家嫡子にして魔道具職人のローランは、旅に不慣れな勇者と四人の聖女を支えるべく勇者パーティーに加入するが、いけ好かない勇者アレンに義妹である治癒の聖女は心を奪われ、恋人であり、魔術の聖女である幼馴染を寝取られてしまう。
その上、何の非もなくパーティーに貢献していたローランを追放するために、勇者たちによって役立たずで勇者の恋人を寝取る最低男の悪評を世間に流されてしまった。
地元以外の冒険者ギルドからの信頼を失い、怒りと失望、悲しみで頭の整理が追い付かず、抜け殻状態で帰郷した彼に更なる追い打ちとして、将来継ぐはずだった実家の道具屋が、爵位証明書と両親もろとも炎上。
失意のどん底に立たされたローランだったが、 両親の葬式の日に義妹と幼馴染が王都で呑気に勇者との結婚披露宴パレードなるものを開催していたと知って怒りが爆発。
「勇者パーティ―全員、俺に泣いて土下座するくらい成り上がってやる!!」
そんな決意を固めてから一年ちょっと。成人を迎えた日に希少な鉱物や植物が無限に湧き出る不思議な土地の権利書と、現在の魔道具製造技術を根底から覆す神秘の合成釜が父の遺産としてローランに継承されることとなる。
この二つを使って世界一の道具屋になってやると意気込むローラン。しかし、彼の自分自身も自覚していなかった能力と父の遺産は世界各地で目を付けられ、勇者に大国、魔王に女神と、ローランを引き込んだり排除したりする動きに巻き込まれる羽目に
これは世界一の道具屋を目指す青年が、爽快な生産チートで主に勇者とか聖女とかを嘲笑いながら邪魔する者を薙ぎ払い、栄光を掴む痛快な物語。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
婚約者に犯されて身籠り、妹に陥れられて婚約破棄後に国外追放されました。“神人”であるお腹の子が復讐しますが、いいですね?
サイコちゃん
ファンタジー
公爵令嬢アリアは不義の子を身籠った事を切欠に、ヴント国を追放される。しかも、それが冤罪だったと判明した後も、加害者である第一王子イェールと妹ウィリアは不誠実な謝罪を繰り返し、果てはアリアを罵倒する。その行為が、ヴント国を破滅に導くとも知らずに――
※昨年、別アカウントにて削除した『お腹の子「後になってから謝っても遅いよ?」』を手直しして再投稿したものです。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
全校転移!異能で異世界を巡る!?
小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。
目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。
周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。
取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。
「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」
取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。
そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。
異世界召喚されたのに召喚人数制限に引っ掛かって召喚されなかったのでスキル【転移】の力で現実世界で配送屋さんを始めたいと思います!
アッキー
ファンタジー
時空間(ときくうま)は、中学を卒業し、高校入学までの春休みを自宅で、過ごしていたが、スマホゲームをしている最中に、自分が、座っている床が、魔方陣を描いた。
時空間(ときくうま)は、「これは、ラノベでよくある異世界召喚では」と思い、気分を高揚させ、時がすぎるのを待った。
そして、いつの間にか、周りには、数多くの人達がいた。すぐに、この空間全体から、声が聞こえてきた。
「初めまして、私は、転移を司る女神です。ここに居る皆様を異世界に転移させたいと思います。ただ、ひとつの異世界だけでなく、皆様が、全員、異世界に転移出来るように数多くの異世界にランダムで、転移させて頂きます。皆様には、スキルと異世界の言葉と読み書きできるようにと荷物の収納に困らないように、アイテムボックスを付与してあげます。スキルに関しては、自分の望むスキルを想像して下さい。それでは、皆様、スキルやその他諸々、付与できたようなので、異世界に召喚させて頂きます」
「それでは、異世界転移!」
「皆様、行ったようですね。私も仕事に戻りますか」
「あの~、俺だけ転移してないのですが?」
「えーーーー」
女神が、叫んでいたが、俺はこれからどうなるのか?
こんな感じで、始まります。
せっかく異世界転生したのに、子爵家の後継者ってそれはないでしょう!~お飾り大公のせいで領地が大荒れ、北の成り上がり伯爵と東の大公国から狙われ
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
大公爵領内は二大伯爵のせいで大荒れ諸侯も他国と通じ…あれ、これ詰んだ?
会社からの帰り道、強姦魔から半裸の女性を助けたところ落下し意識を失ってしまう。
朝目が覚めると鏡の前には見知らぬ。黒髪の美少年の顔があった。
その時俺は思い出した。自分が大人気戦略シュミレーションRPG『ドラゴン・オブ・ファンタジー雪月花』の悪役『アーク・フォン・アーリマン』だと……
そして時に悪態をつき、悪事を働き主人公を窮地に陥れるが、結果としてそれがヒロインと主人公を引き立せ、最終的に主人公に殺される。自分がそんな小悪役であると……
「やってやるよ! 俺はこの人生を生き抜いてやる!!」
そんな決意を胸に抱き、現状を把握するものの北の【毒蛇公爵】、東の大公【東の弓聖】に攻められ蹂躙されるありさま……先ずは大公が治める『リッジジャング地方』統一のために富国強兵へ精を出す。
「まずは叔父上、御命頂戴いたします」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる