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第8話 ノベールの町

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「へー、ここがカレンの言ってた砂地だな」

俺の目の前には辺り一面砂地が広がっている。

「確かにこれを遠回りするとなるとかなり時間がかかりそうだ」

俺は急いでいたので砂地を突っ切っていくことにした。

ざっざっと砂を踏みしめながら歩いていく。
太陽も真上に位置しているのでまるで砂漠にいるかのような錯覚に陥りそうになるも俺は額の汗を手で拭ってひたすら先へと進んだ。


◇ ◇ ◇


一時間後、幸いにもカレンが話してくれたサンドウルフとやらは一体も現れることなく砂地を抜け出ることに成功した俺はその足でノベールの町にたどり着く。

「ノベールの町にようこそっ」
町に一歩足を踏み入れると町の入り口にいた女性が話しかけてきた。

「今日はノベールの町の年に一度のお祭りなんです。ぜひ楽しんでいってくださいねっ」
「へー、そうなんですか」
ものはついでなので道具屋の場所を訊ねてみる。

「ちなみに道具屋ってどこですかね」
「道具屋ならここを真っ直ぐ行った突き当たりにある青い屋根の建物がそうですよ」
「ありがとうございます」
俺は女性に頭を下げると教えてもらった通り町の中を歩いていく。

ノベールの町はお祭りというだけあってとても賑わっていた。
町のあちらこちらに出店があって道行く人たちはみな笑顔で陽気な音楽とともに踊っている人たちも見受けられた。

俺はそんな楽しそうな様子を微笑ましく眺めながら道具屋へと向かう。

「青い屋根の建物……ここだな」

俺は道具屋に着くと早速中へと入った。
道具屋の中には若い男性が一人いて俺に気付くと「あ、いらっしゃいませ……」とやや小さめな声で出迎えてくれた。

「あの、聖水が欲しいんですけど」
「聖水ですか……聖水は今は在庫がなくて……すみません」
「えっ、聖水ないんですか? 一つも?」
「はい……すみませんが」
男性はうつむき加減で答える。

「まいったなぁ。うーん……」
勢い勇んで出てきたのにイリーナさんになんて言えばいいんだ。
聖水が一つもないだなんて思ってもいなかったぞ。
ここまで来ておいてさすがに手ぶらでは帰れない。

するとそんな俺を見てか男性は控えめな口調で話しかけてきた。

「じ、実は今ぼくの父親が聖水を仕入れに行ってるんですけどまだ帰ってこないんです。本当ならもうとっくに戻ってもいい頃なんですけど」
「仕入れにってどこに行ってるんですか?」
「すぐ近くにあるロレンスの町です」
「もしかしてそこに行けば聖水買えたりしますか?」
「え、ええ、まあ」

そういうことなら話は早い。
俺が直接ロレンスの町とやらに行って聖水を買えばいいだけのことだ。
もしその道中でこの男性の父親に出会えたらその時は売ってもらえばいい。

「すいません、ロレンスの町への行き方を教えてもらえますか?」
「あ、はい、いいですよ」

俺は男性にロレンスの町までの行き方を教えてもらうときびすを返す。
そしてお祭り騒ぎのノベールの町をあとにした。
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