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第4話 ベータ村
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「う~ん、これは時間が解決してくれるのを待つしかないかもね。ごめんねクロクロさん、なんの役にも立てなくって」
「いえ、全然大丈夫ですよ」
パトリシアさんの申し訳なさそうな顔を見てこっちこそ申し訳なくなる。
俺は罪悪感を振り払うように何度も首を横に振った。
「クロクロ残念だったね~」
「あ、ああ。でも別に気にしてないさ。記憶がなくてもなんとかなるよ」
俺はカレンの頭の上にぽんと手を置くとそう返す。
「クロクロさん、今日泊まるところはあるのかい?」
「いえ、ないですけど」
「だったらうちに泊まっていきなよ。狭い家だからもしクロクロさんさえよければだけどさ」
「え……」
「そうだよクロクロっ。それがいいよっ。うちに泊まってって」
パトリシアさんとカレンにみつめられ俺は「いや、でもさすがにそれは悪いですよ」と口に出す。
ゴブリンを一匹倒したくらいでそこまでお世話になるわけにはいかない。
「別に悪くなんかないさ。カレンの恩人をただで追い返したとあったら天国の旦那に顔向けできないしね」
「そうだよ。泊まっていきなよ~」
カレンが俺の腕を掴んで横に振る。
「は、はあ……本当にいいんですか?」
「ええ、もちろんよっ」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて」
「やったーっ。クロクロお泊りだーっ」
こうして俺はパトリシアさん、カレン母子の家に今日一日だけ泊めてもらうことになった。
◇ ◇ ◇
「カレン、あたしは午後も診察があるから先にクロクロさんを家に案内してあげといてねっ」
「は~い!」
俺はカレンに連れられベータ村唯一の医院を出るとカレンの家に向かう。
その途中何人かの村人とすれ違いその度に、
「こんにちはー」
とカレンは挨拶していった。
俺もカレンに合わせて村人に挨拶をするとみんな笑顔で返してくれた。
小さな村というとよそ者にはどこか冷たいという偏見があったが穏やかで温かい雰囲気のある村だ。
「なぁ、カレン」
「な~にクロクロ?」
前を歩くカレンが振り返る。
「この村に空き家ってあるかな?」
「空き家? う~ん、どうだったかな~……あっ、そういえば村はずれのグェスさんがこの前大きな町に引っ越したからその家なら空いてるよ」
「本当か? その家に住めないかな?」
「え、う~ん、わかんない」
カレンはふるふると首を横に振った。
さらさらとした髪が揺れる。
「お母さんならわかるかも」
「そっか。じゃあ夜にでもパトリシアさんに訊いてみるかな」
「うん。それよりクロクロ、あそこがうちだよっ」
カレンが指差す先には木造の平屋の建物があった。
決して大きくはないが新築のようにきれいな一軒家だった。
カレンは俺の手を取ると「入って入って」と家の中に引っ張り込む。
「へー、中は結構涼しいんだな」
「そうだよ。なんとか造りっていって夏は涼しいし冬はあったかいの。この村の建物はみんなそのなんとか造りなんだよ」
「ふーん、そうなのか」
この村は住むには快適そうだ。
村の様子を見た限り自給自足である程度生活できているようだし俺もこの村に住めたらいいなぁ。
「いえ、全然大丈夫ですよ」
パトリシアさんの申し訳なさそうな顔を見てこっちこそ申し訳なくなる。
俺は罪悪感を振り払うように何度も首を横に振った。
「クロクロ残念だったね~」
「あ、ああ。でも別に気にしてないさ。記憶がなくてもなんとかなるよ」
俺はカレンの頭の上にぽんと手を置くとそう返す。
「クロクロさん、今日泊まるところはあるのかい?」
「いえ、ないですけど」
「だったらうちに泊まっていきなよ。狭い家だからもしクロクロさんさえよければだけどさ」
「え……」
「そうだよクロクロっ。それがいいよっ。うちに泊まってって」
パトリシアさんとカレンにみつめられ俺は「いや、でもさすがにそれは悪いですよ」と口に出す。
ゴブリンを一匹倒したくらいでそこまでお世話になるわけにはいかない。
「別に悪くなんかないさ。カレンの恩人をただで追い返したとあったら天国の旦那に顔向けできないしね」
「そうだよ。泊まっていきなよ~」
カレンが俺の腕を掴んで横に振る。
「は、はあ……本当にいいんですか?」
「ええ、もちろんよっ」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて」
「やったーっ。クロクロお泊りだーっ」
こうして俺はパトリシアさん、カレン母子の家に今日一日だけ泊めてもらうことになった。
◇ ◇ ◇
「カレン、あたしは午後も診察があるから先にクロクロさんを家に案内してあげといてねっ」
「は~い!」
俺はカレンに連れられベータ村唯一の医院を出るとカレンの家に向かう。
その途中何人かの村人とすれ違いその度に、
「こんにちはー」
とカレンは挨拶していった。
俺もカレンに合わせて村人に挨拶をするとみんな笑顔で返してくれた。
小さな村というとよそ者にはどこか冷たいという偏見があったが穏やかで温かい雰囲気のある村だ。
「なぁ、カレン」
「な~にクロクロ?」
前を歩くカレンが振り返る。
「この村に空き家ってあるかな?」
「空き家? う~ん、どうだったかな~……あっ、そういえば村はずれのグェスさんがこの前大きな町に引っ越したからその家なら空いてるよ」
「本当か? その家に住めないかな?」
「え、う~ん、わかんない」
カレンはふるふると首を横に振った。
さらさらとした髪が揺れる。
「お母さんならわかるかも」
「そっか。じゃあ夜にでもパトリシアさんに訊いてみるかな」
「うん。それよりクロクロ、あそこがうちだよっ」
カレンが指差す先には木造の平屋の建物があった。
決して大きくはないが新築のようにきれいな一軒家だった。
カレンは俺の手を取ると「入って入って」と家の中に引っ張り込む。
「へー、中は結構涼しいんだな」
「そうだよ。なんとか造りっていって夏は涼しいし冬はあったかいの。この村の建物はみんなそのなんとか造りなんだよ」
「ふーん、そうなのか」
この村は住むには快適そうだ。
村の様子を見た限り自給自足である程度生活できているようだし俺もこの村に住めたらいいなぁ。
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