Sランク冒険者を小指一本で倒せる俺、成り行きで《大邪神》まで倒すことになっちゃいました。

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第3話 記憶喪失

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「記憶喪失? 俺が?」
「そうだよ間違いないよっ」
カレンは自信満々に首を大きく縦に振った。

もちろん俺は記憶喪失ではないのですぐに否定しようとするもそこで思いとどまる。
この世界のことを何も知らない俺にとっては異世界から来たなんて信じてもらえそうもないことを言うよりいっそ記憶喪失で通した方がこの先都合がいいかもしれないと。

「……そうだな、俺記憶喪失かもしれない。うん」
「やっぱりだーっ」
「それにしても記憶喪失なんて言葉よく知ってるな」
「えへへ~、ちょっと前にお母さんに教えてもらったんだ~」
褒めてもらいたいのかカレンは俺に頭を向けてきた。

「すごいすごい」
俺はカレンの頭を優しく撫でてやるとカレンは嬉しそうに目を細める。

「そうだクロクロ、わたしの家に来てよっ。わたしのお母さん村でお医者さんやってるからただで診てもらえるように頼んであげるっ」
「ん? この近くに村があるのか?」
「あるよ。ベータ村っていうの。クロクロどうせお金持ってないでしょ」
「ああ……うん」
「じゃあ行こっ」
カレンは俺の手を取ると楽しげに歩き出した。


◇ ◇ ◇


八歳の少女のお世話になるとはなんとも情けない話ではあるがこの世界のことを何も知らない上にお金も持ち合わせていない俺としてはカレンの厚意に素直に感謝するべきだろう。

それにさっきのゴブリンとやらがまた襲ってこないとも限らない。
カレンの護衛役という意味も兼ねて一緒に行動したほうがいいはずだ。
俺は自分にそう言い聞かせカレンとともに森を抜け出た。

「ほらっ、あそこにある村がベータ村だよっ。急ごっ」
「おい、走ると危ないって」

俺は一人駆け出したカレンのあとを追うようにベータ村へと足を踏み入れるのだった。


◇ ◇ ◇


「カレンっ、あんたどこ行ってたんだい! まさかまた一人で村の外に出てたんじゃないだろうね!」

カレンに連れられて向かった村の小さな医院。
そこの院長でもあるカレンのお母さんがカレンを怒鳴りつける。

「そ、それは……」
「何度も言ってるだろ、村の外は魔物が出るから一人で出ちゃ駄目だって!」
「だってだって、暇だったんだもん」
「まったく無事だったからいいようなものの……それでこっちの人は誰?」
カレンのお母さんは俺に向き直った。
さっきまでカレンを叱っていたので表情がやや険しい。

「あ、俺はですね、黒――」
「クロクロだよっ」
カレンが俺の言葉を遮って言う。

「クロクロ?」
「そう、クロクロ。わたしがゴブリンに追いかけられてた時に助けてくれたんだよっ」
「あんた、やっぱり危ない目に合ってるじゃないのっ」
「へぇ~ん、ごめんなは~い」
カレンはカレンのお母さんにほっぺたをつねられながら口にした。

「クロクロさんだっけ? ありがとうね、この子を助けてくれて。あー、あたしはこの子の母親のパトリシアだよ、よろしくね」
「あ、はいこちらこそ」
俺はパトリシアさんと握手を交わす。

「あたしが仕事で構ってあげられないからってこの子しょっちゅう村を抜け出しちゃうのよ。この村にはこの子と同い年の子どもがいないからつまらないのはわかるんだけどねぇ」
「そうなんですか」
「それでクロクロさんはどこの人なの? 恰好からするとどっか遠くの方から来たのかい?」
「あ、それが実は――」
「ううん。クロクロは記憶喪失なんだよっ」
またもカレンは俺より先に答えた。

「記憶喪失っ? そりゃ大変じゃないか。早速あたしが診てやるよ」
「でも俺お金持ってないんです」
「いいわよ、お金なんて。カレンの恩人だもの。それに今はお昼休憩中だからちょうどいいわ」
「わぁ~い、やったねクロクロっ」
「あ、ああ……すみませんじゃあよろしくお願いします」

こうして俺はパトリシアさんに診察してもらったのだがもちろん異常はなかった。
当然だ。俺は記憶はばっちりあるのだからな。
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