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第118話 完遂
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「ずいぶん楽しそうだね、ヤマトさん」
「うひょっ!? あ、あきらじゃないかっ! な、なんだよ、おどかすなよな」
びっくりして店の中で奇声を上げてしまった。
そのせいで岡島とキャバ嬢二人がこっちを怪訝な顔で見ているじゃないか。
「あきらお前、いつからいたんだ? っていうかなんでここに?」
「五分くらい前からかな。ヤマトさん澤田湊を殺すのに何日もかけすぎなんだもん。遅いから僕来ちゃったよ」
「そ、そうか。それは悪かったな。じゃああきらは北日本の奴らは全員やったのか?」
「もちろん」
褒めてほしいのかあきらは自慢げに言う。
「そっか、それはすごいな」
あきらの方は四人いたはずだが全員殺してきたというわけか。
「ヤマトさんは何やってたの? なんか男女四人で楽しそうだったけど。もしかして僕邪魔だった?」
意地悪そうに口をひしゃげさせて言うあきら。
こういうところは大人びている。
「楽しくなんかないさ。澤田を探すのに疲れたからちょっと休憩してただけだよ。さてとじゃあ戻って澤田探しを続けるか」
「あ、ヤマトさん。澤田湊ならそこにいるよ」
「え?」
あきらが指差す先には女性が一人でハンバーガーを食べている姿があった。
だがよく見てみるとうっすら男の顔も重なって見える。
「おい、あいつが澤田か?」
「うん、そうだよ」
「あきらは気付いてたのか?」
「うん、もちろんね」
あきらは当たり前でしょと言わんばかりに俺を見る。
「どうする? あいつは僕たちに気付いてないみたいだけど、ここで殺っちゃう?」
「いや待て。ここで殺したら姿が消えるところを大勢に見られる。移動したらあとをつけよう」
「わかった。じゃあそれまで外で待ってよっか」
「ああ、そうしよう」
俺とあきらはファーストフード店をそっと出ると外で澤田が出てくるのを待ち続けた。
そして十五分後、
「あ、来たよ」
あきらが口を開く。
「ああ。追うぞ」
俺たちは澤田を尾行し始めた。
◇ ◇ ◇
「確認だけどヤマトさんが殺る? それとも僕が殺ろうか?」
「俺がやるよ」
別に殺人に乗り気というわけではないが、こいつを殺すために十日以上も待ったんだ。
それにあきらとの約束もきちんと果たしたい。
「わかった。じゃあ僕は手出ししないからね」
「ああ。任せとけ」
澤田湊はいい意味でも悪い意味でも普通の人間に見えた。
とても【銀の流星群】のメンバーとは思えないくらいだった。
だがあきらが言うのだからあいつは間違いなく殺人者だ。
そして何より俺の悪人感知レーダーがあいつを悪人だと告げている。
しばらく歩くと澤田はタクシーに乗り込んだ。
尾行に気付かれたのかと思ったがそうではなく、澤田は動物病院で降り一旦中に入ると預けていた自分のペットだろうか、大きな犬を連れて出てきた。
そして今度は徒歩で自宅へと歩き出した。
澤田の住む家は高層マンションの一室のようだった。
マンション内に入られたら殺害が難しくなる。そう踏んで俺はマンションの玄関前で行動に移した。
「マダズミ」
俺が唱えると途端に澤田の顔の周りに水で出来た球体がまとわりつく。
澤田がもがき苦しむ中、リードを放された犬が夢中で吠えながら澤田の顔周りの水を攻撃しようと飛びかかっていた。
だが犬にはどうすることも出来ず、澤田はあっけなく絶命した。
その後マンションの玄関前で取り残された犬はただじっと静かにリードを眺め続けていた。
◇ ◇ ◇
「さて、これでヤマトさんとの契約は完了だね」
「なんだよ、俺たちのって契約だったのか?」
「そうだよ。だから契約不履行だった場合はペナルティがあったんだからね」
と可愛らしく言うあきら。
「そっか。俺、意外と危ないとこだったんだな」
「ふふふっ、そうだよ」
俺たちは名古屋駅のホームにいた。
俺は群馬に帰るために、あきらはどうやらこれから福岡に行くのだとか。
「あきら、いろいろありがとうな」
「別にいいよ。ヤマトさんといると退屈しないしね」
「ふん、じゃあ俺はこっちだから、もう行くな」
「うん。またねヤマトさんっ」
「ああ、またなあきらっ」
こうして俺はあきらと別れると新幹線に乗り込んだ。
そして我が憩いのボロアパートへと帰宅の途につくのだった。
「うひょっ!? あ、あきらじゃないかっ! な、なんだよ、おどかすなよな」
びっくりして店の中で奇声を上げてしまった。
そのせいで岡島とキャバ嬢二人がこっちを怪訝な顔で見ているじゃないか。
「あきらお前、いつからいたんだ? っていうかなんでここに?」
「五分くらい前からかな。ヤマトさん澤田湊を殺すのに何日もかけすぎなんだもん。遅いから僕来ちゃったよ」
「そ、そうか。それは悪かったな。じゃああきらは北日本の奴らは全員やったのか?」
「もちろん」
褒めてほしいのかあきらは自慢げに言う。
「そっか、それはすごいな」
あきらの方は四人いたはずだが全員殺してきたというわけか。
「ヤマトさんは何やってたの? なんか男女四人で楽しそうだったけど。もしかして僕邪魔だった?」
意地悪そうに口をひしゃげさせて言うあきら。
こういうところは大人びている。
「楽しくなんかないさ。澤田を探すのに疲れたからちょっと休憩してただけだよ。さてとじゃあ戻って澤田探しを続けるか」
「あ、ヤマトさん。澤田湊ならそこにいるよ」
「え?」
あきらが指差す先には女性が一人でハンバーガーを食べている姿があった。
だがよく見てみるとうっすら男の顔も重なって見える。
「おい、あいつが澤田か?」
「うん、そうだよ」
「あきらは気付いてたのか?」
「うん、もちろんね」
あきらは当たり前でしょと言わんばかりに俺を見る。
「どうする? あいつは僕たちに気付いてないみたいだけど、ここで殺っちゃう?」
「いや待て。ここで殺したら姿が消えるところを大勢に見られる。移動したらあとをつけよう」
「わかった。じゃあそれまで外で待ってよっか」
「ああ、そうしよう」
俺とあきらはファーストフード店をそっと出ると外で澤田が出てくるのを待ち続けた。
そして十五分後、
「あ、来たよ」
あきらが口を開く。
「ああ。追うぞ」
俺たちは澤田を尾行し始めた。
◇ ◇ ◇
「確認だけどヤマトさんが殺る? それとも僕が殺ろうか?」
「俺がやるよ」
別に殺人に乗り気というわけではないが、こいつを殺すために十日以上も待ったんだ。
それにあきらとの約束もきちんと果たしたい。
「わかった。じゃあ僕は手出ししないからね」
「ああ。任せとけ」
澤田湊はいい意味でも悪い意味でも普通の人間に見えた。
とても【銀の流星群】のメンバーとは思えないくらいだった。
だがあきらが言うのだからあいつは間違いなく殺人者だ。
そして何より俺の悪人感知レーダーがあいつを悪人だと告げている。
しばらく歩くと澤田はタクシーに乗り込んだ。
尾行に気付かれたのかと思ったがそうではなく、澤田は動物病院で降り一旦中に入ると預けていた自分のペットだろうか、大きな犬を連れて出てきた。
そして今度は徒歩で自宅へと歩き出した。
澤田の住む家は高層マンションの一室のようだった。
マンション内に入られたら殺害が難しくなる。そう踏んで俺はマンションの玄関前で行動に移した。
「マダズミ」
俺が唱えると途端に澤田の顔の周りに水で出来た球体がまとわりつく。
澤田がもがき苦しむ中、リードを放された犬が夢中で吠えながら澤田の顔周りの水を攻撃しようと飛びかかっていた。
だが犬にはどうすることも出来ず、澤田はあっけなく絶命した。
その後マンションの玄関前で取り残された犬はただじっと静かにリードを眺め続けていた。
◇ ◇ ◇
「さて、これでヤマトさんとの契約は完了だね」
「なんだよ、俺たちのって契約だったのか?」
「そうだよ。だから契約不履行だった場合はペナルティがあったんだからね」
と可愛らしく言うあきら。
「そっか。俺、意外と危ないとこだったんだな」
「ふふふっ、そうだよ」
俺たちは名古屋駅のホームにいた。
俺は群馬に帰るために、あきらはどうやらこれから福岡に行くのだとか。
「あきら、いろいろありがとうな」
「別にいいよ。ヤマトさんといると退屈しないしね」
「ふん、じゃあ俺はこっちだから、もう行くな」
「うん。またねヤマトさんっ」
「ああ、またなあきらっ」
こうして俺はあきらと別れると新幹線に乗り込んだ。
そして我が憩いのボロアパートへと帰宅の途につくのだった。
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