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第113話 橋田典子
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山を下ると南部水族館が目に入ってきた。
だがおかしなことに水族館からは悲鳴を上げながら沢山の人が逃げ出してきているではないか。
「なんだ……?」
俺は人の波をかきわけて水族館に近付いていく。
すると、
ズドドドドドッ……!
何やら銃声のようなお腹に響く音が耳に届いてきた。
俺は水族館の中に入ると電話をかけていた飼育員らしき男性に声をかける。
「あの、何かあったんですか?」
「うわっ! な、なんだよ、きみ、早く逃げるんだっ」
「何があったんです?」
「銃を持った女が撃ちまくってるんだよっ。もう何人も死んだはずだ、飼育員とお客さんの中にはまだ逃げきれていない人もいるはずなんだっ」
「銃を持った女?」
まさか、そいつがあきらの言っていた殺人者だとでもいうのか。
だとしたらあまりにも人目を引きすぎだろ。
何を考えてるんだ……。
「とにかく君は逃げるんだっ」
「いや、あなたの方こそ逃げてください。俺はまだ中にいる人を助けてきますから」
「お、おいっきみっ……!」
俺は男性の飼育員さんの制止を振り切って奥へと進んでいった。
◇ ◇ ◇
途中、小さな子ども連れの母親に出くわす。
あっちなら安全だからと言って立ち上がらせて走らせると、俺は俺で銃声のする方に向かった。
イルカショーなどをやる大きなプールのある会場に行き着くとそこにはマシンガンのようなものを持った女がいて、人質四人を横にして座らせて並べていた。
「おら、鬼束っ! どこかにいるんだろっ、出てこいよっ! さもないと人質殺すぞっ!」
女は大声を上げる。
俺がここにいることがバレているようだった。
「ほら、早くしろっ! こっちは殺したくてうずうずしてるんだっ! 殺せば新しい呪文が手に入るかもしれないんだからなっ!」
「……」
「嘘だと思ってるのかっ! だったら一人残してあと全員殺してやろうかっ!」
「……わ、わかった! 出ていくからやめろ!」
俺は仕方なく女の言う通りにすることにした。
だが念のため武態呪文を唱えてから女の前に姿を見せる。
「「「「……っ!」」」」
人質となっていた女性たちが人間離れした俺の姿を見て一瞬びくっとなるも、すぐにそんなことは忘れ自分たちの今の状況を思い出して再度目を泳がせ出した。
「鬼束っ、やっぱりいたなっ! あたしの予知通りだっ!」
「予知? ってことはお前が橋田典子か」
「ああ、そうさ! あたしの予知ではあんたを殺せば無敵の呪文が手に入るらしいんでね、なにがなんでもあんたを殺すよっ!」
そう言い放つ橋田は頭のネジが外れてしまっているかのように唾をまき散らしている。
「水球の呪文なんて使ってみろ、あたしが死ぬまでに人質全員ぶっ殺してやるからなっ!」
「わかってるから銃を振り回すなよ。暴発したらどうするんだ」
俺は両手を上げ少しずつ近寄っていくが、
「そこで止まれっ!」
橋田が銃を俺に向けた。
「この位置なら充分だな、じゃああたしのために死んでくれっ!」
橋田が銃の引き金に指をかけようとしたまさにその時、
「ヨキウヨシクオキ」
俺は橋田の目を見ながら素早く言葉を発した。
その瞬間、
「……あれ……?」
自分が何をしているのか一瞬わからなくなる橋田。
その隙を逃さず俺は瞬時に橋田に駆け寄ると、
「死ぬのはお前だ」
追い抜きざま橋田の首を一閃。宙にはね飛ばした。
ててててってってってーん!
『鬼束ヤマトは橋田典子を殺したことでレベルが1上がりました』
『最大HPが2、最大MPが1、ちからが2、まもりが0、すばやさが2上がりました』
『鬼束ヤマトはシウトの呪文を覚えました』
――ちなみに人質たちは背中を向けて座らされていたので、のちのちトラウマになってしまうであろう光景は見ずに済んだようだった。
だがおかしなことに水族館からは悲鳴を上げながら沢山の人が逃げ出してきているではないか。
「なんだ……?」
俺は人の波をかきわけて水族館に近付いていく。
すると、
ズドドドドドッ……!
何やら銃声のようなお腹に響く音が耳に届いてきた。
俺は水族館の中に入ると電話をかけていた飼育員らしき男性に声をかける。
「あの、何かあったんですか?」
「うわっ! な、なんだよ、きみ、早く逃げるんだっ」
「何があったんです?」
「銃を持った女が撃ちまくってるんだよっ。もう何人も死んだはずだ、飼育員とお客さんの中にはまだ逃げきれていない人もいるはずなんだっ」
「銃を持った女?」
まさか、そいつがあきらの言っていた殺人者だとでもいうのか。
だとしたらあまりにも人目を引きすぎだろ。
何を考えてるんだ……。
「とにかく君は逃げるんだっ」
「いや、あなたの方こそ逃げてください。俺はまだ中にいる人を助けてきますから」
「お、おいっきみっ……!」
俺は男性の飼育員さんの制止を振り切って奥へと進んでいった。
◇ ◇ ◇
途中、小さな子ども連れの母親に出くわす。
あっちなら安全だからと言って立ち上がらせて走らせると、俺は俺で銃声のする方に向かった。
イルカショーなどをやる大きなプールのある会場に行き着くとそこにはマシンガンのようなものを持った女がいて、人質四人を横にして座らせて並べていた。
「おら、鬼束っ! どこかにいるんだろっ、出てこいよっ! さもないと人質殺すぞっ!」
女は大声を上げる。
俺がここにいることがバレているようだった。
「ほら、早くしろっ! こっちは殺したくてうずうずしてるんだっ! 殺せば新しい呪文が手に入るかもしれないんだからなっ!」
「……」
「嘘だと思ってるのかっ! だったら一人残してあと全員殺してやろうかっ!」
「……わ、わかった! 出ていくからやめろ!」
俺は仕方なく女の言う通りにすることにした。
だが念のため武態呪文を唱えてから女の前に姿を見せる。
「「「「……っ!」」」」
人質となっていた女性たちが人間離れした俺の姿を見て一瞬びくっとなるも、すぐにそんなことは忘れ自分たちの今の状況を思い出して再度目を泳がせ出した。
「鬼束っ、やっぱりいたなっ! あたしの予知通りだっ!」
「予知? ってことはお前が橋田典子か」
「ああ、そうさ! あたしの予知ではあんたを殺せば無敵の呪文が手に入るらしいんでね、なにがなんでもあんたを殺すよっ!」
そう言い放つ橋田は頭のネジが外れてしまっているかのように唾をまき散らしている。
「水球の呪文なんて使ってみろ、あたしが死ぬまでに人質全員ぶっ殺してやるからなっ!」
「わかってるから銃を振り回すなよ。暴発したらどうするんだ」
俺は両手を上げ少しずつ近寄っていくが、
「そこで止まれっ!」
橋田が銃を俺に向けた。
「この位置なら充分だな、じゃああたしのために死んでくれっ!」
橋田が銃の引き金に指をかけようとしたまさにその時、
「ヨキウヨシクオキ」
俺は橋田の目を見ながら素早く言葉を発した。
その瞬間、
「……あれ……?」
自分が何をしているのか一瞬わからなくなる橋田。
その隙を逃さず俺は瞬時に橋田に駆け寄ると、
「死ぬのはお前だ」
追い抜きざま橋田の首を一閃。宙にはね飛ばした。
ててててってってってーん!
『鬼束ヤマトは橋田典子を殺したことでレベルが1上がりました』
『最大HPが2、最大MPが1、ちからが2、まもりが0、すばやさが2上がりました』
『鬼束ヤマトはシウトの呪文を覚えました』
――ちなみに人質たちは背中を向けて座らされていたので、のちのちトラウマになってしまうであろう光景は見ずに済んだようだった。
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