レベリング・マーダー 一週間に一回は人を殺さないと自分が死んでしまう。ならばいっそ勧善懲悪しよう。

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第96話 病院にて

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「あと二日か……」

俺は朝のニュース番組をトースト片手に観てつぶやく。
昨日は蒲郡カエラ、もとい、わたべみほのよくわからない嘘のせいで依頼そのものがなくなってしまった。
よって俺の暫定寿命はあと二日というわけだ。


話は変わって今日会う予定の依頼主は会談場所を指定してきていた。
群馬県の高崎市というところにある病院で会いたいと言ってきたのだ。
自分のテリトリーでない場所に呼び出されるのはいささか気が進まないが、猶予はあと二日なのでそうも言っていられない。

それに――
「やったやったーっ。うち、病院のにおい大好きやねんっ!」
なぜかメアリが病院に行きたがっているので今さらやっぱりやめようとは言い出しにくく……。

そんなこんなで俺とメアリは高崎市にある病院に向かうことになった。


◇ ◇ ◇


電車を乗り継いで高崎駅へとたどり着いた俺たちは早速病院へ。
メアリがお腹がすいたというので最上階のレストランで昼ご飯をささっと済ませてから、待ち合わせ場所である315号室におもむいた。


今回の依頼主の名前は佐藤京子。
わかっているのはそれだけ。
あとの詳しい話は会ってから話すということだった。


◇ ◇ ◇


315号室のネームプレートには佐藤京子と書かれている。
俺はその扉をゆっくりと開ける。
するとそこには大きなベッドが一つあり、鼻や口にチューブをいくつもつながれた女性が横たわっていた。

「この人が佐藤京子って依頼主なん?」
「だと思うけど……いや、どうなんだろう」
ベッドの上の女性は明らかに会話が出来るような状態ではない。
だが依頼主に指定された場所はここで間違いないし、依頼主の名前も合っているはずだ。

とその時、
「devilさんですか?」
後ろから声がした。
振り返ると佐藤京子そっくりの女性が部屋に入ってきていた。

「あれぇ~? おんなじ顔やぁ」
「ええ。わたしと京子は双子なので……あ、申し遅れました。わたしは佐藤涼子といいます。そこにいる京子の双子の姉です」
「そうですか」
俺はそう返すと佐藤涼子と名乗った女性を視界におさめる。
この個室に入る前にすでに読心呪文と悪人感知呪文は発動済みなので、涼子さんが嘘をついていないことは確かなようだ。

「依頼主は京子さんのはずですけど……」
「すみません。devilさんとメールのやり取りをしていたのはわたしなんです。京子は昏睡状態でメールを書くことも話すことも何も出来ないので。でももし京子が意識があったとしたら自分をこんな目に合わせた相手に復讐したいだろうと思ったので、あえて京子の名前でdevilさんとメールを交わしていました。騙すような真似をして申し訳ありませんでした」
涼子さんは申し訳なさそうにゆっくりと頭を下げた。

「なるほど……ということは依頼内容は京子さんをこんな姿になるまで暴行した相手を呪い殺す、ということでしょうか?」
「はい。京子が瀕死の状態で発見されたのは二週間前でしたが、警察はいまだその犯人を捕まえることが出来てはいません。もし仮に捕まえることが出来たとしてもよくて殺人未遂でしょうから、しばらくすればまた元の生活に戻れてしまいます……妹は、京子はもしかしたら一生このままかもしれないのにっ……」
涼子さんは今にも泣きだしそうな顔で、京子さんをみつめながら唇をかみしめる。
涼子さんの悔しさが心の声を通じて痛いほど伝わってくる。

「わかりました。その依頼引き受けますよ」
「本当ですかっ? あ、ありがとうございますっ……!」
「では犯人の特徴などを教えてもらえますか?」
俺が訊ねると涼子さんは「そ、それが……」と暗い顔に戻ってしまった。

「犯人は誰も見ていないんです。目撃者も監視カメラの映像も何もないみたいで……」
「え……そうなんですか」
「や、やっぱり犯人の名前とかがわからないと呪い殺すのは無理なんでしょうか?」
「えーっと、そうですねぇ……」

……まいったぞ。
犯人の手掛かりがゼロではさすがに手の出しようがない。
肝心の京子さんは意識不明のようだし。

俺が答えに詰まっていると、
「うちが犯人みつけたるっ」
メアリが突然口を開いた。

「え、あ、あの、すみませんがあなたは……?」
涼子さんから出た当然の質問にメアリは「うちは助手やねん」と返答してそのままベッドの上の京子さんに近付いていく。

俺と涼子さんが見守る中、メアリは京子さんの手を取り目を閉じて「ユシイサクオキ」と口にした。
そしてその後、十秒ほど身動きせずにいた。
涼子さんからすれば得体の知れない女が意味不明な言葉をつぶやいただけにしか見えなかっただろうが、メアリにはその十秒足らずで充分だったようで、
「ヤマトお兄ちゃん、犯人捜し始めようや」
言うとメアリは自信ありげな顔を俺に向けたのだった。
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