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第91話 山分け
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コンビニへと向かう道中、俺は前を歩くメアリに声を飛ばした。
「なぁ、メアリ。お前今いくら持ってるんだっけ?」
するとメアリは焦った様子で振り返り、
「あ、そやった! うちお金ほとんどないんやった! ヤマトお兄ちゃん、お金貸してっ!」
俺に向かって両手を合わせる。
「おにぎり代だけでええからぁ!」
「いやいや、というか昨日の依頼で俺たち三百万円手に入れただろ。それを今分けるからそしたら自分で買えばいいだろ」
「え? そのお金うちにもくれるん?」
メアリは虚を突かれたかのように目を丸くした。
「当然だろ。わざわざ二人で東京まで行ってこなした依頼なんだから……普通に半々でいいよな」
俺はズボンのポケットに入れたままにしてあった札束を掴み出すと、それを一枚一枚数えていく。
どうでもいいことだが俺は裏の仕事で手に入れたお金はすべて、銀行などには預けておかずに手元に置いてある。
銀行を信用していないというわけではないが、自分のそばに置いておいた方がなんとなく安心するのだ。
「じゃあ、ほらこれ」
俺は三百万円の半額の百五十万円をメアリに差し出した。
「もらってええの?」
「ああ」
メアリはそれを受け取ろうと手を伸ばすも、
「でもちょっと待ってな。三人の男を殺したのはヤマトお兄ちゃんやろ。うちは美咲ちゃんしか殺してへんよ」
と言って手を引っ込める。
「男一人につき百万円として合計で三百万円やろ。せやったらそれ全部ヤマトお兄ちゃんのもんやんか。うち、もらう資格あらへんよ」
手を使って計算するとメアリは俺を見上げて首を横に振った。
変なところで律儀な奴だな。
「だってお前お金持ってないんだろ。これからどうするんだ? ホテル代とか洋服代とか食費とか、何かと必要だろ」
メアリには身寄りがない。
その上お金までないのでは生活が出来ないだろうと思ってのことだった。
「それはヤマトお兄ちゃんに貸してもらえばええかなぁと思っとるけど……ホテルは別に、うちヤマトお兄ちゃんのアパートで全然ええし」
とメアリはけらけら笑いながら口にする。
「俺がよくないんだよ。いいか、昨日は仕方なく泊めてやったがもう二度と俺の部屋には泊めないからな」
「ええぇ~、なんでなんっ? ええやんか泊めてくれてもっ」
「あのなぁ、世間一般には男が女子高生と二人で一緒に住んでるってのはおかしい状況なんだよ。一応清水さんたちには親戚ってことにしてあるけど、いつまでも俺のところにいたら不思議に思うだろ」
「そうなん?」
「ああ、そうなの。だからこのお金で適当にホテル探してくれ。わかったか?」
「う~ん、まあ、ようわからへんけど、わかったわぁ」
あまり納得していないようだったが俺はメアリに百五十万円の札束を握らせた。
「これで新しい服も買えるだろ。さすがにずっと同じ服ってわけにもいかないし」
「そう言われればそうやなぁ」
メアリは自分の着ている服の胸元を引っ張り、犬のように鼻をくんくんと鳴らす。
恥ずかしいから通行人のいる前で服のにおいを嗅ぐなよな。
「とりあえずコンビニまでは一緒に行くけどそのあとは別行動だ。ホテルをみつけて新しい服を買い揃えたら俺のスマホに連絡入れてくれ」
「そしたらまた一緒に仕事していいん?」
「もちろんだ。依頼が山のように来てるんでな、お前の力も借りたい」
俺が言うと、
「なんやぁ~っ。そういうことなら早く言ってくれな。うち、ヤマトお兄ちゃんの役に立つならなんでもするでぇ!」
さっきまでのぶすっとした表情から一転、メアリは嬉しそうに声を張り上げたのだった。
「なぁ、メアリ。お前今いくら持ってるんだっけ?」
するとメアリは焦った様子で振り返り、
「あ、そやった! うちお金ほとんどないんやった! ヤマトお兄ちゃん、お金貸してっ!」
俺に向かって両手を合わせる。
「おにぎり代だけでええからぁ!」
「いやいや、というか昨日の依頼で俺たち三百万円手に入れただろ。それを今分けるからそしたら自分で買えばいいだろ」
「え? そのお金うちにもくれるん?」
メアリは虚を突かれたかのように目を丸くした。
「当然だろ。わざわざ二人で東京まで行ってこなした依頼なんだから……普通に半々でいいよな」
俺はズボンのポケットに入れたままにしてあった札束を掴み出すと、それを一枚一枚数えていく。
どうでもいいことだが俺は裏の仕事で手に入れたお金はすべて、銀行などには預けておかずに手元に置いてある。
銀行を信用していないというわけではないが、自分のそばに置いておいた方がなんとなく安心するのだ。
「じゃあ、ほらこれ」
俺は三百万円の半額の百五十万円をメアリに差し出した。
「もらってええの?」
「ああ」
メアリはそれを受け取ろうと手を伸ばすも、
「でもちょっと待ってな。三人の男を殺したのはヤマトお兄ちゃんやろ。うちは美咲ちゃんしか殺してへんよ」
と言って手を引っ込める。
「男一人につき百万円として合計で三百万円やろ。せやったらそれ全部ヤマトお兄ちゃんのもんやんか。うち、もらう資格あらへんよ」
手を使って計算するとメアリは俺を見上げて首を横に振った。
変なところで律儀な奴だな。
「だってお前お金持ってないんだろ。これからどうするんだ? ホテル代とか洋服代とか食費とか、何かと必要だろ」
メアリには身寄りがない。
その上お金までないのでは生活が出来ないだろうと思ってのことだった。
「それはヤマトお兄ちゃんに貸してもらえばええかなぁと思っとるけど……ホテルは別に、うちヤマトお兄ちゃんのアパートで全然ええし」
とメアリはけらけら笑いながら口にする。
「俺がよくないんだよ。いいか、昨日は仕方なく泊めてやったがもう二度と俺の部屋には泊めないからな」
「ええぇ~、なんでなんっ? ええやんか泊めてくれてもっ」
「あのなぁ、世間一般には男が女子高生と二人で一緒に住んでるってのはおかしい状況なんだよ。一応清水さんたちには親戚ってことにしてあるけど、いつまでも俺のところにいたら不思議に思うだろ」
「そうなん?」
「ああ、そうなの。だからこのお金で適当にホテル探してくれ。わかったか?」
「う~ん、まあ、ようわからへんけど、わかったわぁ」
あまり納得していないようだったが俺はメアリに百五十万円の札束を握らせた。
「これで新しい服も買えるだろ。さすがにずっと同じ服ってわけにもいかないし」
「そう言われればそうやなぁ」
メアリは自分の着ている服の胸元を引っ張り、犬のように鼻をくんくんと鳴らす。
恥ずかしいから通行人のいる前で服のにおいを嗅ぐなよな。
「とりあえずコンビニまでは一緒に行くけどそのあとは別行動だ。ホテルをみつけて新しい服を買い揃えたら俺のスマホに連絡入れてくれ」
「そしたらまた一緒に仕事していいん?」
「もちろんだ。依頼が山のように来てるんでな、お前の力も借りたい」
俺が言うと、
「なんやぁ~っ。そういうことなら早く言ってくれな。うち、ヤマトお兄ちゃんの役に立つならなんでもするでぇ!」
さっきまでのぶすっとした表情から一転、メアリは嬉しそうに声を張り上げたのだった。
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