90 / 118
第90話 清水さん母娘とメアリ
しおりを挟む
翌朝、俺が目を覚ますとソファの上にメアリがいなかった。
どこに行ったんだ?
トイレか?
だが、部屋中探してもどこにもいない。
すると壁を隔てたお隣から、
「えぇ~! ほんまに三十四歳なん、全然見えへ~ん!」
「ほんとっ!? ありがと、メアリちゃん」
メアリの声と清水さんの声が聞こえてきた。
「おいおい、マジかよ」
メアリの奴、清水さん家にいるのかっ。
俺は素早く着替えを済ますと清水さん家のチャイムを鳴らす。
ピンポーン。
「はーい!」
中から明るい声とともに清水さんが姿を現した。
「あら、ヤマトくんおはよう」
「おはようございます清水さん。あの、すいません、もしかしてメアリそっちに行ってます?」
「ええ、メアリちゃんならうちで一緒に朝ご飯を食べてるわよ。せっかくだからヤマトくんも食べてって」
「あ、いえ、でも……」
「ほら、上がって上がって。ね?」
清水さんに微笑みかけられ俺はむげに断ることも出来ず清水さん家にお邪魔することに。
部屋の中に入ると美紗ちゃんとメアリがテーブルを囲んで座っていた。
「ヤマトお兄ちゃん、やっと起きたんやぁ!」
「あ、鬼束さん、おはようございます」
「ああ、おはよう美紗ちゃん。ごめんね、朝早くからメアリが邪魔してたみたいで」
「いえ、そんなことないですよ。お母さんからメアリさんのことは聞いていたので、わたしも会いたいと思っていたんです」
美紗ちゃんは笑顔を俺に向けてくる。
「ヤマトくんもシリアルとサラダでいいかしら?」
「あ、はい。ほんと、すいません」
清水さんに恐縮しつつそう答えると俺はメアリに目を落とした。
「こら、メアリ。勝手なことするなよな。清水さんたちだって朝早いんだから迷惑だろ」
「ええやん別にぃ~。それにうち、おばさんに誘われたから来たんやでぇ」
「それでも普通は遠慮するもんなんだよ……」
悪びれる素振りもなく反論するメアリにこれ以上何を言っても無駄だな、と感じていると、
「まあまあ。とりあえず、鬼束さんも座ってください」
美紗ちゃんが俺のために椅子を引いてくれる。
「ああ、ありがとう」
同じ高校三年生でもメアリとはえらい違いだ。
◇ ◇ ◇
「へ~、メアリちゃん千葉県の高校に通ってるんだ~」
「そうやぁ。でも今、校舎を新しくしとるとこやからしばらく学校は休みやねん」
「それで鬼束さんのところに来てたんですね」
「うん、その通りや」
メアリは顔色一つ変えることなく、次々と口からでまかせを吐いて清水さん母娘の質問を見事にやり過ごしていく。
学校での話や家族の話、俺との思い出話など今考えたとは思えないようなことをすらすらと並べ立てていく様は、まるで前にテレビで見たサイコパスをほうふつとさせた。
◇ ◇ ◇
しばらくして清水さんと美紗ちゃんがそろそろ出かける時間になったので、俺とメアリも二人と一緒に部屋を出る。
そして二人をそれぞれ見送ってから俺とメアリは俺の部屋へと戻った。
「おばさんと美紗ちゃん、ええ人らやったなぁ~」
「ああ。だからこそあんまり殺人者の俺たちと関わり合いを持たない方がいいんだよ」
「おばさんら、うちらが殺人者だってこと知っとるん?」
「俺のことは知ってる。でもお前のことは知らないはずだ。あくまでお前は俺の親戚ってことにしてあるからな」
「ふ~ん、まあええけど。それよりヤマトお兄ちゃん、うちお腹減ったわ」
とメアリ。
「は? お前さっき清水さんのところでずいぶん食べただろ」
メアリは清水さんと美紗ちゃんが驚くほどシリアルを何杯もおかわりしていた。
「シリアルとサラダじゃ食べた気せぇへんもん」
「まったく……食パンでいいか?」
「ええよ~」
俺は冷蔵庫を開けて食パンを取り出すが、
「あっ。駄目だこれ。日付け過ぎてるわ」
消費期限が昨日までだったことに気付く。
「うちなら全然気にせぇへんけど」
「いや、たかが食パン一枚で腹壊したらシャレにならないだろ。やめとけよ」
「じゃあ、どないするん?」
「そうだなぁ……」
冷蔵庫の中を見渡すがろくなものが入っていない。
「メアリ、買い物にでも行くか」
「うんっ」
こうして俺とメアリは近所のコンビニに向かうことにした。
どこに行ったんだ?
トイレか?
だが、部屋中探してもどこにもいない。
すると壁を隔てたお隣から、
「えぇ~! ほんまに三十四歳なん、全然見えへ~ん!」
「ほんとっ!? ありがと、メアリちゃん」
メアリの声と清水さんの声が聞こえてきた。
「おいおい、マジかよ」
メアリの奴、清水さん家にいるのかっ。
俺は素早く着替えを済ますと清水さん家のチャイムを鳴らす。
ピンポーン。
「はーい!」
中から明るい声とともに清水さんが姿を現した。
「あら、ヤマトくんおはよう」
「おはようございます清水さん。あの、すいません、もしかしてメアリそっちに行ってます?」
「ええ、メアリちゃんならうちで一緒に朝ご飯を食べてるわよ。せっかくだからヤマトくんも食べてって」
「あ、いえ、でも……」
「ほら、上がって上がって。ね?」
清水さんに微笑みかけられ俺はむげに断ることも出来ず清水さん家にお邪魔することに。
部屋の中に入ると美紗ちゃんとメアリがテーブルを囲んで座っていた。
「ヤマトお兄ちゃん、やっと起きたんやぁ!」
「あ、鬼束さん、おはようございます」
「ああ、おはよう美紗ちゃん。ごめんね、朝早くからメアリが邪魔してたみたいで」
「いえ、そんなことないですよ。お母さんからメアリさんのことは聞いていたので、わたしも会いたいと思っていたんです」
美紗ちゃんは笑顔を俺に向けてくる。
「ヤマトくんもシリアルとサラダでいいかしら?」
「あ、はい。ほんと、すいません」
清水さんに恐縮しつつそう答えると俺はメアリに目を落とした。
「こら、メアリ。勝手なことするなよな。清水さんたちだって朝早いんだから迷惑だろ」
「ええやん別にぃ~。それにうち、おばさんに誘われたから来たんやでぇ」
「それでも普通は遠慮するもんなんだよ……」
悪びれる素振りもなく反論するメアリにこれ以上何を言っても無駄だな、と感じていると、
「まあまあ。とりあえず、鬼束さんも座ってください」
美紗ちゃんが俺のために椅子を引いてくれる。
「ああ、ありがとう」
同じ高校三年生でもメアリとはえらい違いだ。
◇ ◇ ◇
「へ~、メアリちゃん千葉県の高校に通ってるんだ~」
「そうやぁ。でも今、校舎を新しくしとるとこやからしばらく学校は休みやねん」
「それで鬼束さんのところに来てたんですね」
「うん、その通りや」
メアリは顔色一つ変えることなく、次々と口からでまかせを吐いて清水さん母娘の質問を見事にやり過ごしていく。
学校での話や家族の話、俺との思い出話など今考えたとは思えないようなことをすらすらと並べ立てていく様は、まるで前にテレビで見たサイコパスをほうふつとさせた。
◇ ◇ ◇
しばらくして清水さんと美紗ちゃんがそろそろ出かける時間になったので、俺とメアリも二人と一緒に部屋を出る。
そして二人をそれぞれ見送ってから俺とメアリは俺の部屋へと戻った。
「おばさんと美紗ちゃん、ええ人らやったなぁ~」
「ああ。だからこそあんまり殺人者の俺たちと関わり合いを持たない方がいいんだよ」
「おばさんら、うちらが殺人者だってこと知っとるん?」
「俺のことは知ってる。でもお前のことは知らないはずだ。あくまでお前は俺の親戚ってことにしてあるからな」
「ふ~ん、まあええけど。それよりヤマトお兄ちゃん、うちお腹減ったわ」
とメアリ。
「は? お前さっき清水さんのところでずいぶん食べただろ」
メアリは清水さんと美紗ちゃんが驚くほどシリアルを何杯もおかわりしていた。
「シリアルとサラダじゃ食べた気せぇへんもん」
「まったく……食パンでいいか?」
「ええよ~」
俺は冷蔵庫を開けて食パンを取り出すが、
「あっ。駄目だこれ。日付け過ぎてるわ」
消費期限が昨日までだったことに気付く。
「うちなら全然気にせぇへんけど」
「いや、たかが食パン一枚で腹壊したらシャレにならないだろ。やめとけよ」
「じゃあ、どないするん?」
「そうだなぁ……」
冷蔵庫の中を見渡すがろくなものが入っていない。
「メアリ、買い物にでも行くか」
「うんっ」
こうして俺とメアリは近所のコンビニに向かうことにした。
10
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)
幻田恋人
恋愛
夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。
でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。
親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。
童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。
許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…
僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる