とある黒鴉と狩人の物語

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3話

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  レイエスさんが木の陰に僕を下ろして男を睨みつけ、ビリビリとした殺気が伝わってくる。僕はその光景を見つめることしかできなかった。
  レイエスさんは無言で腰の剣を抜き、男に構える。そして....
「...来い。」
  そこからは凄まじい鍔迫り合いが始まった。ガキン、ガキンと火花が散り、時々草葉が切れて舞う。まるでアニメのワンシーンを直接見てる気分だ。男は構わずガンガンと攻撃しているがレイエスさんは冷静に目の前を見て素早い剣を確実に弾き返している。
  レイエスさんの、まるで羽根のように舞いながらも確実に攻撃する姿に僕は心を奪われてしまった。そして願った。僕も、あの人の元で一緒に戦いたい。戦ってみんなを守るための力が欲しい。そう思ってしまった。ひょいと一振をかわすのと同時に剣を折り、蹴飛ばした。
「ぐうっ....!?」
「すごい....!」
  男が膝をついたところをレイエスさんが縄を取り出して縛ろうとしたその時、体が金色に輝き、レイエスさんを吹き飛ばした。
「ぐあっ?!」
「レイエスさん!」
  咄嗟に地面に叩きつけられるすんてで受け止める。男はそのままふわりと浮き上がるとこちらの景色が映るほどに輝く金色の鎧を着た騎士のような姿になった。











「ばかな... 『メラゾエル』 だと...?!」
  レイエスさんによると『メラゾエル』というのは上級の天使の1体で、かつてこの世界では『天魔大乱戦 てんまだいらんせん』が起きており、天界と魔界、人間界が争う大戦争が起きていたと言う。そしてこのメラゾエルは大量の魔物を、人間を葬ったという、かなりの実力者らしい。ゲームで言う第2形態の姿となって男は剣をまた構えた。
「み、見えない...」
  動きがまるで違う。たしかに高速で動くシーンはアニメとかでよく見かけていたが生で見れるとは思っていなかった。ほとんど見えない。レイエスさんは顔を歪ませて防御に徹することしかできなかった。少しずつ切られて血が流れ、吹き飛ばされて木に叩きつけられた。トドメだと言わんばかりにノーマンが剣を構え、走り出した。
「だめっ!!」
  思わず木の影から飛び出し、レイエスさんに伸ばした僕の手のひらから出た赤黒い光のメラゾエルの剣を弾いた。
「...何?」
「一体何が....はっ?!」
  いつの間にか僕の腕が黒くなり、まるでカラスの足みたいに変化していた。これなら、レイエスさんの力になれる。レイエスさんも僕の様子に驚いていたが、すぐにメラゾエルへ向いた。
「...やれるか?」
  力強く頷くとノーマンの方へ、まるでゲームやアニメのような展開に興奮しつつもメラゾエルを睨みつける。
「やつの弱点はあの鎧に隠れたコアだ。私が時間を稼ぐ。君はコアを探せ。いいな?」
「はい!!」
「よし、行くぞ!!」
  レイエスさんがまた剣を構え直し、またメラゾエルに向かった。ガキン、ガキンと刃がぶつかり合う中、僕は敵の身体を見る。たしかに強固な鎧で傷1つつかない。だがよく見ると鎧には隙間が見えており、足の鎧はもろそうだ。そこを目掛けて1、2発と弾を撃ち込むと思った通り、メラゾエルはガクッと膝をついた。今だ、と手のひらからムチのようなものを飛ばし、鎧の隙間に通して絡めるとそのまま引っ張ってこじ開けた。
「レイエスさん今です!!」
「よし!!」
  刃がコアに吸い込まれるように刺さり、メラゾエルの低い絶叫が響き渡る。そのままズドォォンと倒れ、動かなくなった。
「よくやったな、ハルカ。」
  レイエスさんが呆然とする僕の元に座って僕の頭を撫でると今度こそ森を出ようとしたその時、倒れていたはずのメラゾエルが動き出し、ふわりと浮かんだと思うと猛スピードで突っ込んできた剣がレイエスさんを庇った僕の体を貫いた。
「ハルカァ!!」
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