二人キリの異世界冒険 (Information Teacher's Second Life)【完結】

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第10章 魔法学院ミユ編

84.後期試験の準備

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 この魔法学院では、半期ごとに試験がある。試験といっても、ほとんどの科目がが実技試験で、試験監督の先生の指示に従って、魔法を実行するだけだ。だから、受験すれば、ほぼ合格するといった簡単な物だ。

 しかし、もし、その試験に落ちると、それに続く科目の受講が出来なくなる。

 例えば、中級火魔法講座は、初級火魔法講座を習得していないと受講できない。当然、上級火魔法講座は、中級火魔法講座を習得していないと受講できない。

 そして、一定の科目数を合格していないと、次の学年に進級することができない。それは、卒業が1年延期されることと同じだ。だから、気を抜くわけにはいかない。

 例によって、クルドが、異常に張り切っている。いつまでたっても、面倒な生徒だ。

 いつものように、私達のパーティーは、食堂で、朝食を取りながら、話し合いを行っていた。

 「ミユ、試験の準備は、大丈夫?」

 「実技試験は、大丈夫。でも、筆記試験もあるの」

 「あれ? 実技試験だけじゃなかった?」

 「キリは、すべての魔法属性を持っているから、関係ないけど。実技試験を受けれない講座は、筆記試験を受けることになっているの」

 「ミユ、そうなの。知らなかった」

 エルミアも、知っていたみたいで、私に声を掛けて来た。

 「ミユだけじゃのわ。私も、筆記試験があるわ」

 「フヨウは、一番多いのかな?」

 私は、フヨウに、聞いて見た。

 「私は、実技試験が苦手だから、積極的に筆記試験を受けるつもり」

 「そうなんだ。私、知らなかった」

 ミユが、もう一つ、私が知らなかったことを口にした。

 「実は、これは、噂だけかもしれないけど。先日の対抗戦のポイントの1割が今回の試験点数に上乗せされるって」

 「えっ、そんなこと聞いたことないよ」

 私は、思わず、大きな声を出してしまった。周りの視線が、私に集まったように感じた。

 「キリったら、大きな声を出して、びっくりするわよ」

 エルミアが、私をたしなめた。

 「私も、その噂を聞いたことがあるわ」

 「私は、知らなったです。誰から、聞いたのですか?」

 フヨウも、興味を持ったみたい。ミユに聞き直している。

 「少し前、私がここに一番早く来ていた時よ。その時、食堂には、生徒は、私だけだったの」

 「それで?」

 フヨウが更に前のめりで、ミユに尋ねた。

 「多分、生徒がいないと思ったのね。今の話をしていたの。試験の点数に上乗せするって」

 「でも、どうして、事前に教えてくれなかったの?」

 「今回が初めてみたい。それで、今後もやっていくかどうか、検討する材料にしたいみたい」

 「そうなんだ。そうすると、私達のパーティーは、もう、すでに合格しているってこと?」

 フヨウが、先日張り出された対抗戦の順位表を思い出しながら、計算したようだ。

 「615ポイント。それが、最終ポイントだわ」

 「そうすると、今、61点もあるってこと」

 私は、急に、対抗戦でのミユの行動を思い出した。その噂を聞いていたから、あんなに積極的にポイントを取りに言っていたんだ。事前に聞いていたら、時間いっぱいまで、魔物を狩ったのに。

 「まあ、そんなことは、今、考えない方がいいよ」

 フヨウが、皆に注意をした。

 「どうして?」

 エルミアが、フヨウに、質問した。
 
 「本当なら、それでもいいけど。やっぱり、実施するのを止めたと教師が思ったら、どうするの?」

 「そうだね。フヨウの言うとおりね。しっかり、試験の準備をして、備えておくべきね」

 「そうだよ。そうでないと思わぬ結果になっても、困るだろう」

 「それじゃ、皆で、試験の準備をしない?」

 エルミアが、皆に提案した。私は、試験にあまり興味はないけど、皆と一緒に居たいから、反対は、しないつもり。

 「「賛成」」

 「それじゃ、これから、キリの部屋で、集合ね」

 いつの間にか、私の部屋ですることになってしまった。まあ、いいか。

 「それじゃ、30分後に集合ね」

 エルミアが、皆に確認をした。

 「「はい」」

 私は、筆記試験を受けるつもりはなかったけど、フヨウがどんな勉強をするのか、少し興味があった。

 暫くして、皆が私の部屋に集まって来た。

 「それじゃ、まず、何から始める?」

 「フヨウに任せるよ。何から、やっていきたい?」

 「僕は、すべて、筆記試験を受けるつもりだから、土魔法からでいいかな?」

 「いいわ。それなら、私も筆記試験になるから」

 エルミアが、フヨウに同意した。

 「それじゃ、すべての科目を筆記試験対策をしない? それから、実技試験の練習をしない?」

 ミユが、珍しく、積極的に意見を出した。

 「「いいわ」」

 皆も、賛成した。土魔法の復習は、フヨウを中心に行った。私以外は、筆記試験を受験することになっているので、積極的に質問が出て来た。1時間ほど、経った時に、次の科目の勉強に切り替えた。

 次は、光魔法だ。これは、ミユが教師役で、皆に説明を始めた。ミユは、丁寧に説明をしていく。教師より分かりやすかった。

 それからは、皆が慣れている模倣だ。火魔法、水魔法、風魔法とそれほど、時間を掛けずに復習することが出来た。

 実技試験の復習は、昼食を取ってからすることにした。そして、実際に魔法を放つ方が良いので、演習場で、実施することにした。

 昼食後、皆で、演習場に行って見ると、そこには、他の生徒達も実技試験の練習をしていた。少し広めの場所がいいので、他の生徒から離れた隅の場所に移動した。そこは、出入口から、一番遠くて、不便な場所なので、他の生徒が来ていなかった。

 「さあ、始めるよ」

 私は、皆に声を掛けた。そして、念のために闇魔法で、結界を張って、間違って、魔法が他の生徒に当たらないようにした。

 「光魔法は、私とミユだけなので、火魔法・水魔法・風魔法の順で、復習するわね」

 「「はい」」

 「私は、授業の内容をよく覚えていないから、エルミアが、どの魔法を復習するか言ってくれる?」

 「はい、いいわ」

 私は、エルミアが、言った魔法を見本で、放った。当然、無詠唱だ。そこで、私の次に、エルミアが詠唱付きだ、魔法を放った。それを見ながら、フヨウやミユが魔法の練習をしていった。

 「そろそろ、終わりでいいんじゃない?」

 「そうですね。一通り、練習できたと思います」

 フヨウも、同意した。

 「それじゃ、部屋に戻って、光魔法の練習をしようか」

 「はい、キリ、お願いします」

 私達は、それぞれに部屋に帰った行った。私とミユは、ミユの部屋で、光魔法の練習をすることにした。パープルがいない方が、練習に集中出来ると思ったからだ。

 ミユの部屋で、光魔法の練習を何とかやり終えて、私は、自分の部屋に戻って来た。すっかり疲れてしまって、夕食を取らずに、パープルの横で、寝てしまった。光魔法の練習は、用心しないといけないと、実感してしまった。
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