二人キリの異世界冒険 (Information Teacher's Second Life)【完結】

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第8章 魔大陸探索編

62.魔人タウ(1)

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 私達は、レッド・ドラゴンの炎息ファイア・ブレスを避けながら、ハルトの攻撃で、何とか、倒すことが出来た。前回、遭遇した時に比べると、遥かに楽に倒せた。

 キリ姉が、ハルトに抱き付いている。毎度のことながら、ちょっと、目に余るね。

 「ハルト、凄い。よくやったわ」

 「いや、皆の協力のお陰だよ。僕一人の力じゃないよ」

 「いいのよ。そんな謙遜をしなくても」

 「謙遜じゃなくて、本心だよ」

 「ハルトは、もっと、自分を信じないとだめよ」

 「うん。わかったよ」

 ハルトが、キリ姉を抱き上げて歩き始めた。あらあら、これで、魔人タウと戦う準備ができるのかな? 

 「キリ姉、そろそろ、最下層だよ。魔人タウがいるよ」

 「キリ、そんなことは、分かっているわよ」

 キリ姉は、ハルトとの仲を邪魔されたと思い、怒っている。もう、大丈夫かな。

 「ハルトも、キリ姉も、もっと、慎重になってください」

 珍しく、ミユが怒っている。

 「はい、わかったわ」

 キリ姉は、ハルトの腕から、下りて、自分の足で歩き始めた。少しは、効いたようね。

 「ミユ、ハルトを強化してね」

 「はい。 
 スキル魔力耐性向上
 スキル物理攻撃向上
 スキル攻撃速度向上」

 私は、アイテムボックスの中に入れている聖剣を確認した。魔人をこれで、殺してもいいのか、まだ、迷っているけど、準備だけはしておこうと思った。

 「ハルト、気を付けて、何だか、厭な雰囲気よ。何か、あるわ」

 急に、ミユが叫んだ。ハルトは、ダッシュする直前だった。目の前には、魔人タウがいる。

 私も、ミユの声に驚いた、急いで、スキル探索を使った。確かに、何か、装置のような物が隠されている。

 「浄化魔法ピュリフィケーション

 「浄化魔法ピュリフィケーション

 ………

 「浄化魔法ピュリフィケーション

 何度も、繰り返して、周囲を浄化していった。少しは、あの厭な雰囲気は消えたが、まだ、何か、在りそうだ。

 「ミユ、解呪魔法を使ってくれる。それも、最上位で」 

 私は、少し気になったので、ミユに、解呪魔法を使って貰うことにした。

 「最上級解呪魔法マキシマ・ディスペル

 すると、あの厭な雰囲気が消えた。そして、それと共に、円柱形の装置が現れた。それには、太いリングで作られた鎖が、巻き付けられていた。そして、その鎖の先には、大きくて重そうな球が取り付けられていた。

 「ほう、この装置を見抜いたのか。流石だな」

 魔人タウが、初めて、声を上げた。

 「私は、魔人タウだ。初めましてで、さようならだな。お前たちは、ここで、死ぬ運命だ」

 「お前こそ。ここで、私に倒される運命だ。此処を、貴様の墓場にしてやる」

 ハルトが、魔人タウに答えた。

 「それでは、始めるか」

 魔人タウは、大剣を抜き、構えた。それに呼応して、円柱形の装置が唸り始めた。そして、回転を始めた。

 鎖が伸びて、先についていた球がハルトを襲う。何とか、球を避けているが、魔人タウに集中できないようだ。

 「キリ姉、あの装置は、機械仕掛けみたい。魔力を感じないの。どう思う?」

 「本当ね。気が付かなかったわ。魔力を感じないわ。キリの言うとおりよ」

 「分かったわ」

 私は、雷を落とすことにした。

 「雷柱サンダー・ポール

 うまく、装置にあった。少し、回転が遅くなったように感じた。

 「雷柱サンダー・ポール

 やはり、効いているようだ。もっと、魔法のレベルを上げることにした。

 「雷嵐サンダー・ストーム

 「雷嵐サンダー・ストーム

 機械は、うなり音を上げて、ついに、その回転を止めた。

 「おい、待ってくれ」

 魔人タウが急に、後ろに下がり始めた。

 「話し合いだ。そうだ、戦いは中止だ」

 「今更、何を言っている。ここは、お前の墓場だ」

 「なあ、話せば、分かる。そうだろう」

 どうしたわけか、急に、魔人タウが怯え始めた。ひょっとして、この魔人は、雷が弱点かなぁ。

 ちょっと、試しに、近くに落してやろう。

 「雷柱サンダー・ポール

 少し離れた所に、雷を落とした。すると、魔人タウは、慌てて、その場を離れた。

 「急に、何をするんだ。話し合いをしようぜ」

 やはり、弱点は、雷みたいだね。

 「キリ姉、どうする?」

 ハルトが、後ろを向いて、キリ姉に尋ねた。私も、キリ姉の考えが気になって、そちらを向いた。

 皆が、魔人タウから、目を離した瞬間、魔人タウは、後ろに走り出した。そして、転移魔法で、移動をしてしまった。

 私は、直ぐにスキル探知で、魔人タウの行方を追った。すると、まだ、このTauタウ島に居ることが分かった。どうも、転移魔法では、他の島に移動できないようだ。

 「キリ姉、魔人タウを見つけたわ」

 「どこに居るの?」

 「遺跡の中に隠れているわ。キリ姉、魔人タウを殺すの? それとも、封印するの? それとも、話し合い?」

 「どうしようかなぁ。思ったより、弱そうね」

 「確かに、直ぐに、逃げ出したものね」

 「それに、魔王軍と言う感じもしないね。普通に上級ダンジョンという感じだから」

 皆、迷っている。もっと、強かったら、脅威を感じて、倒そうと思ったかも。でも、余り、脅威を感じなかったから。迷ってしまった。
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