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第5章 魔人ブラック編
42.新たな召喚魔法
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今日も、神官ブラックは、地下の倉庫に来ていた。それは、魔王を召喚する魔法陣が刻印された神具に魔力を注ぎ込むためだった。
神官ブラックの魔力量では、魔王を召喚するのに必要な魔力量を一回で、満たすことができない。
そのため、自分の魔力量が十分蓄積されるたびに、この地下の倉庫に来ては、神具に魔力を注ぎ込んでいた。
ようやく、あと少しで、神具の魔力が満たされるところまで来た。そろそろ、次の準備に取り掛かるつもりだ。それは、魔王軍の進撃の開始だ。
実際には、まだ、魔王軍は、存在しない。魔王不在の状態では、まともな魔王軍は作ることが出来ないからだ。それゆえ、早く魔王に復活して貰いたい。
あれから、複数のダンジョンコアで、ダンジョンを構築してきた。そして、それらのダンジョンでは、いつでも、魔物を溢れ出すことが可能な状態になっている。
主だった上級ダンジョンには、魔人を配置している。神官ブラックの指示で、いつでも、魔物の群れを神殿や王宮に向かわせることが出来る。魔王誕生の連絡と共に、魔物の行進が開始する。
魔王の復活の前に、誰かに邪魔をされては困る。そこで、魔物の群れで、街を教わるのは魔王復活の後にした。
準備が順調に進んでいることを確認した、神官ブラックは、親しくしていた上級神官達に、魔王軍が攻めてくるという噂があることを伝えた。
上級神官達は、その噂を聞き、恐ろしくなった。すぐさま、神官長ロシーアンに、噂の話を伝えた。そして、魔王軍を直接見たわけではないのに、あたかも見たかの様な、臣下の上級神官達の言葉を、神官長ロシーアンに鵜吞みにした。
神官長ロシーアンは、魔王軍が攻めてくることを決定したかのように、考えてしまった。
また、神官ブラックは、神官長ロシーアンに勇者がトード王国に取り込まれているので、ザーセン王国を守りには来てくれないと、信じ込ませた。更に、新しい勇者がすぐにでも必要だと信じ込ませた。
一度、少年の勇者を見限ったことのある神官長ロシーアンは、神官ブラックの話に我が意を得たかのように、乗ってしまった。
「ブラックよ、勇者を召喚しようにも、神具の準備が必要だ。すぐに、魔力を必要なだけ蓄積させることなど、できない。勇者を召喚断念せざるを得ない。残念だ」
「いえ、神官長ロシーアン。こんなこともあろうかと、神官長ロシーアンの臣下の上級神官達と勇者召喚の準備は進めてきました。もう、魔力は、十分に蓄積されているはずです」
「何、そうか。よくやった。それじゃ、準備をさせよう。
誰かいないか」
「はい、神官長ロシーアン様、何でしょうか」
「今すぐ、勇者召喚の儀式を行う。上級神官達を集めて、準備を行うように伝えよ」
「はい、わかりました」
上級神官は、他の上級神官達を呼び、神殿のサモンの間に、必要な召喚に必要な魔法陣を描き、神具を国宝の保管庫から運んできた。
神殿のサモンの間は、神聖な儀式を執り行う準備が完了した。
上級神官達は、神殿のサモンの間の準備が整ったことを神官長ロシーアンに伝えた。
神官長ロシーアンは、側近の上級神官達に囲まれて、サモンの間にやって来た。
神官ブラックは、いつの間にか、地下の倉庫へ行き、魔王召喚の為の神具を持参し、最後の必要な魔力を注ぎ込んだ。
上級神官達が、神官長ロシーアンを呼びに行った隙に、勇者召喚の為の神具と魔王召喚の神具とを取り換えた。また、床に描かれた魔方陣を一部書き換えた。
神官長ロシーアンが、サモンの間に入って来た。
上級神官達は、持ち場に着いた。
「魔法陣と神具の配置に間違いはないな」
「はい、大丈夫です。複数の上級神官で確認済みです」
「よかろう。始めよう」
神官長ロシーアンの詠唱と共に、すべての神官達が詠唱を行い、儀式が始まった。
詠唱が完了し、神具の魔法陣から出た光に呼応するように、床に描かれた魔法陣の中央が明るく輝きだした。いよいよ、勇者の召喚だ。中央の魔法陣に皆の注目が集まった。
光が収まり、中央の魔法陣の上に人物が浮かんできた。これまでの召喚と違い、その人物は、以上に大きく、身長は3mを超えていた。
「オォー、待ち望んでいました」
後ろから、誰かが、叫んでいる。神官ブラックが、歓喜の声を上げている。
「魔王様の復活だ! 魔王様の復活だ!
皆の物、頭を下げろ!」
魔人ブラックは、他の魔人に連絡をし、魔物の行進を開始させた。
中央の魔法陣を取り囲んでいた神官長ロシーアンを初め、すべての神官達は、何が起こったのか、俄かには信じられない様子だ。
「えっ、魔王だって」
「魔王だ! 逃げろ!」
「魔王だ」
口々に叫びながら、我先に逃げ惑う神官達。
魔人ブラックが、神官長ロシーアンの首を掴み、引きずっている。
魔人ブラックは、召喚された魔王の前に行き、膝間付いた。神官長ロシーアンの頭を床に擦りつけた。
「魔王様、私は、あなた様の僕のブラックと申します。何なりと申し付けください」
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
ザーセン王国の街は、魔物の行進に怯え切っていた。溢れ出た魔物は、すべてのダンジョンから、出ているわけではなかった。
今回は、北東にある3つのダンジョンからだけ、魔物が溢れ出ている。前回とは違っていた。
そして、勇者が居ないということも、前回とは違った。
魔物が溢れ出ているとの情報が伝えられた王宮は、直ちに兵士をダンジョンに送った。
しかし、魔王が召喚されたことは、国王すら、知らないままであった。
神官ブラックの魔力量では、魔王を召喚するのに必要な魔力量を一回で、満たすことができない。
そのため、自分の魔力量が十分蓄積されるたびに、この地下の倉庫に来ては、神具に魔力を注ぎ込んでいた。
ようやく、あと少しで、神具の魔力が満たされるところまで来た。そろそろ、次の準備に取り掛かるつもりだ。それは、魔王軍の進撃の開始だ。
実際には、まだ、魔王軍は、存在しない。魔王不在の状態では、まともな魔王軍は作ることが出来ないからだ。それゆえ、早く魔王に復活して貰いたい。
あれから、複数のダンジョンコアで、ダンジョンを構築してきた。そして、それらのダンジョンでは、いつでも、魔物を溢れ出すことが可能な状態になっている。
主だった上級ダンジョンには、魔人を配置している。神官ブラックの指示で、いつでも、魔物の群れを神殿や王宮に向かわせることが出来る。魔王誕生の連絡と共に、魔物の行進が開始する。
魔王の復活の前に、誰かに邪魔をされては困る。そこで、魔物の群れで、街を教わるのは魔王復活の後にした。
準備が順調に進んでいることを確認した、神官ブラックは、親しくしていた上級神官達に、魔王軍が攻めてくるという噂があることを伝えた。
上級神官達は、その噂を聞き、恐ろしくなった。すぐさま、神官長ロシーアンに、噂の話を伝えた。そして、魔王軍を直接見たわけではないのに、あたかも見たかの様な、臣下の上級神官達の言葉を、神官長ロシーアンに鵜吞みにした。
神官長ロシーアンは、魔王軍が攻めてくることを決定したかのように、考えてしまった。
また、神官ブラックは、神官長ロシーアンに勇者がトード王国に取り込まれているので、ザーセン王国を守りには来てくれないと、信じ込ませた。更に、新しい勇者がすぐにでも必要だと信じ込ませた。
一度、少年の勇者を見限ったことのある神官長ロシーアンは、神官ブラックの話に我が意を得たかのように、乗ってしまった。
「ブラックよ、勇者を召喚しようにも、神具の準備が必要だ。すぐに、魔力を必要なだけ蓄積させることなど、できない。勇者を召喚断念せざるを得ない。残念だ」
「いえ、神官長ロシーアン。こんなこともあろうかと、神官長ロシーアンの臣下の上級神官達と勇者召喚の準備は進めてきました。もう、魔力は、十分に蓄積されているはずです」
「何、そうか。よくやった。それじゃ、準備をさせよう。
誰かいないか」
「はい、神官長ロシーアン様、何でしょうか」
「今すぐ、勇者召喚の儀式を行う。上級神官達を集めて、準備を行うように伝えよ」
「はい、わかりました」
上級神官は、他の上級神官達を呼び、神殿のサモンの間に、必要な召喚に必要な魔法陣を描き、神具を国宝の保管庫から運んできた。
神殿のサモンの間は、神聖な儀式を執り行う準備が完了した。
上級神官達は、神殿のサモンの間の準備が整ったことを神官長ロシーアンに伝えた。
神官長ロシーアンは、側近の上級神官達に囲まれて、サモンの間にやって来た。
神官ブラックは、いつの間にか、地下の倉庫へ行き、魔王召喚の為の神具を持参し、最後の必要な魔力を注ぎ込んだ。
上級神官達が、神官長ロシーアンを呼びに行った隙に、勇者召喚の為の神具と魔王召喚の神具とを取り換えた。また、床に描かれた魔方陣を一部書き換えた。
神官長ロシーアンが、サモンの間に入って来た。
上級神官達は、持ち場に着いた。
「魔法陣と神具の配置に間違いはないな」
「はい、大丈夫です。複数の上級神官で確認済みです」
「よかろう。始めよう」
神官長ロシーアンの詠唱と共に、すべての神官達が詠唱を行い、儀式が始まった。
詠唱が完了し、神具の魔法陣から出た光に呼応するように、床に描かれた魔法陣の中央が明るく輝きだした。いよいよ、勇者の召喚だ。中央の魔法陣に皆の注目が集まった。
光が収まり、中央の魔法陣の上に人物が浮かんできた。これまでの召喚と違い、その人物は、以上に大きく、身長は3mを超えていた。
「オォー、待ち望んでいました」
後ろから、誰かが、叫んでいる。神官ブラックが、歓喜の声を上げている。
「魔王様の復活だ! 魔王様の復活だ!
皆の物、頭を下げろ!」
魔人ブラックは、他の魔人に連絡をし、魔物の行進を開始させた。
中央の魔法陣を取り囲んでいた神官長ロシーアンを初め、すべての神官達は、何が起こったのか、俄かには信じられない様子だ。
「えっ、魔王だって」
「魔王だ! 逃げろ!」
「魔王だ」
口々に叫びながら、我先に逃げ惑う神官達。
魔人ブラックが、神官長ロシーアンの首を掴み、引きずっている。
魔人ブラックは、召喚された魔王の前に行き、膝間付いた。神官長ロシーアンの頭を床に擦りつけた。
「魔王様、私は、あなた様の僕のブラックと申します。何なりと申し付けください」
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
ザーセン王国の街は、魔物の行進に怯え切っていた。溢れ出た魔物は、すべてのダンジョンから、出ているわけではなかった。
今回は、北東にある3つのダンジョンからだけ、魔物が溢れ出ている。前回とは違っていた。
そして、勇者が居ないということも、前回とは違った。
魔物が溢れ出ているとの情報が伝えられた王宮は、直ちに兵士をダンジョンに送った。
しかし、魔王が召喚されたことは、国王すら、知らないままであった。
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