二人キリの異世界冒険 (Information Teacher's Second Life)【完結】

無似死可

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第4章 魔人誕生編

37.策士の正体

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 キリは、通路から戻って来たパープルに尋ねた。

 「侵入者は、そんな様子だった?」

 「うん、老人だったよ」

 「老人、本当に?」

 「少し話しかけてきて、すぐに消えたよ」

 「何を言っていた?」

 「『面白い。いずれ、また、会うだろう。』って、言ってたよ」

 「何が面白いのだろうね」

 「そうだ、私の事を獣人って、呼んでいたよ」

 「獣人って、言っていたの。ワーキャトじゃなくて」

 「そうだよ。獣人って言っていたよ」

 「そうか、冒険者じゃなさそうだね」

 「うん、老人だからね」

 「そういう意味じゃないよ。冒険者としての活動はしていなかっただろうということだよ」

 「うん、わかった。老人だものね」

 「昔から、老人じゃなかったと思うよ」

 「でも、老人だよ」

 「まあ、いいか」

 何故か、パープルと話が合わなかったが、今度会う時は、私も見てみようっと。

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 キリは、思念伝達で、レオパープルヴァルゴパープルから、報告を受けた。先日、リーツ王国の国王から、聖剣の情報を急いで聞き出して欲しいと、依頼していた。

 『魔王は、聖剣で倒さなくては、死なない。そして、聖剣が正常に働くためには、光魔法で、聖剣を満たしてやらなければならない。
 このことは、代々聖剣を受け継いできた国王しか、知らないことだ。そのため、国王から聖剣を受け取る必要がある。その時に、国王から聖剣の歴史が語られる。』

 キリは、2人から報告を受けた。やはり、聖剣でなければ、魔王を倒すことが出来ないようだ。しかも、聖剣を扱うのは、光魔法が使える者しか、だめだ。

 ハルトは、光魔法が使えない。やはり、ハルトでは、魔王討伐は無理なようだ。

 以前、ステータスを見たときに、「斧戦士」とあったのは、事実だろう。いつか、このことを伝えなければならない。伝えるなら、早い方が良いのだろう。このことは、キリ姉から伝えた貰うのが良いと、キリは思った。

 私より、キリ姉の方が説明が上手だから。それに、私は面倒ごとは嫌だから。

 キリ姉に丸投げするって、決めたキリは、すっきりした気分になった。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 トード王国に、魔人が現れたという情報が流れた。それは、トード王国の国民の間に、すぐに広まった。ほぼ、一瞬の内に、すべての国民が知ることとなった。
 
 そして、そのことは、トード王国の国王からザーセン王国の国王にも伝えられた。トード王国の国王は、国宝の神具を使って、ザーセン王国の国王に直接伝えた。「すぐに、勇者を寄越して欲しい」と、切実な要望だった。 

 ザーセン王国の国王は、依頼を受けて、直ちに勇者をトード王国に派遣するように、神殿に居る神官長ロシーアンに伝えた。神官長ロシーアンは、未だ、国王に勇者が不在であることを報告していなかった。しかし、そのことには触れずに、すぐに勇者を送ると、返事を出した。

 一方、トード王国の王宮に現れた魔人は、のんびりとした行動をとっていた。まるで、王宮に居座るかのようだ。

 少し遅れて、キリ姉の耳にも、この情報は届いた。キリ姉から、思念伝達で、キリ・パープル・ミユ・ハルトにも伝えられた。

 ハルトに至っては、すぐにでも、トード王国に行こうとしていた。多分、先日の魔人レッドへのリベンジ成功が影響を与えたのだろう。

 キリ姉も、ハルトを止める理由もないので、言ってもいいと、許可を出した。

 私達は、トード王国の王宮の図書館に接続している施設に転移魔法で移動した。

 そこから、一旦、隠密魔法を起動して、王宮の広場に向かった。

 王宮の広場には、魔人を取り囲んで、近衛兵達や神官達がいた。そして、国王や神官長もその場に揃っていた。

 何やら、魔人が大声を張り上げている。

 「俺は、魔人サンドだ。しばらく、ここだ厄介になるつもりだ。よろしく、頼むぞ」

 「そんな、勝手なことは許されない。とっとと帰れ」

 取り囲んでいる近衛兵達が、口々に返答した。

 「お前たちは、黙っていろ。まずは、国王を呼んで来い」

 「お前のような者の要求は聞くことは出来ない」

 「「帰れ、帰れ」」

 またもや、近衛兵達が、返答している。

 近くの神官達が、「この押し問答を、いつまでやるつもりだ。いい加減にしてくれ」と、ぼやいているのが、聞こえて来た。

 どうやら、魔人サンドは、ここに着てから、永遠と、このやり取りをしているようだ。

 どうも、楽しんでるように見える。相手をして貰えて、喜んでいるようだ。

 国王や神官長も近くにいるのに、何もしようとはしない。

 近くの神官達によると、「国王は、勇者が来るのをひたすら待っているようだ」と言っている。

 キリ姉は、思念伝達で、ハルトに尋ねた。

 「どうも、ハルトを待っているようだよ。どうする?」

 「私は、戦いたいです。頑張ります」

 「そうか、戦いたいか。でも、頑張らないでね。危なかったら、すぐに言ってね」

 「はい、わかりました」

 ハルトは、返事をするや否や、隠密魔法を解除して、広場の中央に出ていった。

 「魔人、待たせたな。私が、勇者だ」

 「何、勇者だって、俺は勇者など、待ってはいない。国王を出せ」

 すると、いままで、隠れていた国王が、神官長や神官・近衛兵に守られながら広場に姿を現した。

 「国王なら、ここに居るぞ。
 勇者よ、よく、参られた。私の横に来るがいい」

 呼ばれたので、仕方なく、ハルトは、国王の傍に行った。

 国王は、ハルトを横に置き、落ち着いたようすだ。逆に、ハルトは、早く戦いたくてうずうずしている。落ち着きがない。
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