二人キリの異世界冒険 (Information Teacher's Second Life)【完結】

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第3章 魔王軍誕生編

16.魔法学院2年目の生活

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 新規のダンジョン騒ぎも落ち着いて、魔法学院も授業を再開することになった。

 久しぶりに、エルミアに会えるって、キリ姉が喜んでいる。

 これで、やっと、落ち着いて勉強ができる、といっても、ほとんど、図書館での自学自習だけど。

 1年目は、初級・中級程度の魔法の実習・演習が中心で、役に立たなかったが、2年目からは、錬金術の講義が始まる。今までは、自己流で、色々な物を作っていたけど、やっと、基礎から勉強ができる。

 錬金術は、黒魔導士のミーチェが教えてくれる。彼女は、上級教師で、水魔法が得意らしい。

 最初の授業は、実習の時に使う道具の説明だった。

 ミーチェ先生の机の上には、水晶でできた球形のフラスコ、鉄製の加熱用の炉、材料の薬草などが置かれていた。
 
 生徒用の机の上にも同様のセットが置かれていた。

 「今日は、錬金術で使用する道具に慣れて貰います。
 このバケツの中に泥水が入っています。これを蒸留水に変えます。
 まず、フラスコにバケツの泥水を入れて行きなさい。


 私達は、ミーチェ先生に言われたまま、各自の机の上にあるフラスコを持って、ミーチェ先生の所にあるバケツから泥水を入れて、戻っていった。

 「それでは、フラスコを加熱用の炉の中に入れなさい。
 炉に魔力を込めながら、透き通った水をイメージしなさい。
 私に続いて、唱えなさい。

 スペロ ムンダーレ、クアエゾ ホッケムンダ
 スペロ ムンダーレ、クアエゾ ホッケムンダ


 ミーチェ先生に続いて、皆が唱えている声が聞こえてくる。暫くすると、フラスコの中の水は光りながら透き通っていった。

 「「できた!」」

 皆が、口々に声を上げている。

 加熱用の炉には魔法陣が施されている。それは、マナを光魔法にするものだった。魔法陣があるので、魔力があれば、適性がなくても魔法が実行できる。そして、その魔法は、光魔法であった。

 「それでは、皆さんの出来栄えを調べてみましょう。
 各自、出来上がった蒸留水の入ったフラスコを私の所まで、持ってきなさい。


 蒸留水の入ったフラスコが、ミーチェ先生の前に机の上に、並んだ。全員分のフラスコが並んだのを確認してから、ミーチェ先生が魔法の詠唱を始めた。すると、フラスコの中の水が、ゆっくりと凍っていった。

 「これで分ったでしょう。各自の蒸留水の純度が。
 他のものと比べて、純度が低かった者はしっかり、練習しておくように。
 次回は、薬草を使って、ポーションを作ります。しっかり、調べておくように!」

 今回の授業で、色々な事が分かった。錬金術に必要なのは、光魔法で、その適性を持っていない者も錬成が出来る様に、道具には魔法陣の刻印がされている。

 そして、光魔法の適性を持っているものは、より効率的に錬金用の道具を利用できる。その結果、より高級な物が出来る。

 「キリ、どうだった?」

 「うまくいったよ。白く濁ったような部分はなかったから」

 「そう、私は方は、少し濁っていたね。光魔法の適性がないからかな?」

 「でも、もっと時間をかけるともっとよくなるよ」

 「そうだね。でも、私は冒険者だから、うまくならなくてもいいわ」

 「キリ姉、私は興味があるの。もっと、色々な物を作ってみたい」

 「キリは、色んな物に興味を持っているね。何でもできるから、もっと、チャレンジしたらいいね」

 「はい、頑張ります」

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

  今日は、エルミアも誘って、街に買い物に出かけることにした。新しく始まった錬金術の授業に備えて、自分たちの道具を揃えるためだ。ついでに、何か、甘いものも食べようっと。

 最初に、今回の目的である錬金術用の道具を見に行った。

 「この店でいいんじゃない?」

 「はい、キリ姉」

 「エルミアも、ここでいい?」

 「はい、いいです」

 私達は、商店が立ち並ぶ通りにあるこじんまりとした清潔感のある店に入っていった。

 店員から錬金術用の道具について、説明を受けた。

 「一般的に、錬金術に使う道具には、鉄製の加熱用の炉と土鍋がある。土鍋は手軽だけど、簡易版なので、純度の高い物を作るのが難しい。鉄製の加熱用の炉の場合は、光魔法で浄化・精錬するが、土鍋の場合は火魔法で熱を加えて反応させる」

 私は、キリ姉の指示に従って、スキル鑑定で、1つの鉄製の炉を鑑定してみた。

 「キリ姉、注がれるマナを光魔法の属性を持つように変換する魔法陣が刻印されているだけみたい」

 「簡単な魔法陣なの。キリ」

 「うん、簡単だよ」

 「値段が違うのは、何が違うの? キリ、調べてみてくれる?」

 「はい、ちょっと待ってね」

 今度は、私は、複数の鉄製の炉に対して、スキル鑑定を使った。すると、注がれるマナの量に対して、放出されるマナの量に違いがあった。それと、出力される光魔法の属性の付いたマナは、炉の全体から、中のフラスコに向かって放出されるのだが、それが均等に放出されるか、どうかの違いがあった。

 どうも、鉄製の炉の精度と魔法陣の精度が影響を与えているようだ。魔法陣の方は、一番効率の良い物を覚えたので、複製も大丈夫だ。しかし、鉄製の炉の精度はもう少し調べた方がよさそうだ。

 キリ姉に鑑定結果を伝えた。
 
 「それでは、一番上等な鉄製の炉を1個だけ買いましょう。それをもとに、勉強してね。キリ、いいわね」

 「はい、いいよ」

 「エルミア、道具はもう暫く我慢してくれる?」

 「わかりました」

 「それじゃ、何か、食べに行かない?」

 「「はい」」

 暫く歩いていると、多くの客が入っている店があった。

 「ここはどう?」

 「いいよ。キリ姉」
 
 「私も、いいです」

 3人で、店に入り、メニューを見てみた。何がいいのか、よく分からない。

 周りを見渡すと、何やら、ふわふわしたパンケーキみたいなものを食べている。

 「ちょっと、いい?」

 「何でしょうか? ご注文は、決まりましたか?」

 「あちらの人が、食べているのは、何?」

 「ああ、あれですか。今、人気のカステラですよ。従来の物より、ふわふわした触感が特徴です」

 「そう、私はあれにするわ。キリ、エルミアは、どうする?」

 「一緒でいいよ」

 「私も、一緒でいいです」

 「飲み物はどうする?」

 「「任せます」」

 「それじゃ、あのカステラを3つと、ダルゴナコーヒーを3つ貰える」

 「はい、わかりました。異国風カステラとダルゴナコーヒーを3つですね」

 しばらくすると、店員が注文した品を持って来た。私達は、甘いカステラと甘いドリンクを頂きながら、これからの魔法学院での生活について、話した。 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 各地にあるマナサーバのデータのバックアップは、移動型のマナモリーを利用して行っていた。

 この移動型のマナモリーは、現在のSSDのような装置で、大量のデータを記録・保存できる。

 これを転移用の魔法陣を用いて、本部(農場・工場)に運んでいた。

 この方法では、即時性がない。そこで、多くのデータではないが、即時性のあるデータを伝達する方法を考えることにした。

 マナモリーを一定の量集めた、パケットのようなものを作った。その先頭にIPヘッダのように、送り主、受取先、作成者、作成日時などの情報を付けたものを考えた。

 送りたいデータを複製し、このパケットのような状態にして、送り出す。LANケーブルの代わりに、光魔法で作ったシールドを筒状にして、その中を風魔法で、送り出すことにした。何本かの筒状の物をまとめて束のようにして、利用することにした。これにより、双方向で、複数のデータを同時に送ることが出来る様になった。また、遠方に送る時は、一定の距離の所に加速機のような働きをする風魔法を実行する魔法陣を刻印しておいた。

 この同軸ケーブルのようなマナモリーを送る物をマナケーブルと呼ぶことにした。

 ウディーア王国内の私達の拠点をすべてスター状にマナケーブルで繋いだ。そして、分岐点にはルータのように、送り先に応じて自動的に適切なマナケーブルへマナモリーで作ったパケットが流れるようにした。

 今は、風魔法でマナモリーの塊を送っているので、少し時間が掛かるが、まずまずの動きだ。もっと、早く伝達できるように、また、工夫していこうと思った。
 
 新規のダンジョン騒ぎから、私達も、街もすっかり落ち着いてきた。そこで、情報の少なかったトード王国とリーグリ王国の情報を得るために、実際に見に行くことにした。

 しかし、すでに魔法学院の授業も始まっているので、私達の身代わりを作ることにした。
 
 これまで、キリ姉や私の魂の複製を刻印した自立型土人形を使って最終的な管理を行っていた。

 現在、マナドールによる工場・農場・商店などの管理を行えるまでになっていた。

 そこで、一旦各地にいる自立型土人形を本部と言える工場に集めることにした。

 集めた自立型土人形を整理して、キリ姉型を2体【アクエィアス、ピスケス】、キリ型を4体【アリエス、タウラス、ジェミニ、キャンサー】にした。更に、パープル型を2体【レオ、ヴァルゴ】作った。

 そして、【アクエィアス、アリエス、レオ】のグループと【ピスケス、タウラス、ヴァルゴ】のグループをそれぞれ、トード王国とリーグリ王国に派遣することにした。
 
 パープルには、特別にザーセン王国を密かに調査して貰うことにした。パープルがよっぽどのことがない限り、捕まることはないだろう。私でも、見失うほどのスピードで動くから。
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