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第3章 魔王軍誕生編
14ー1.魔王軍の侵攻(1)
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いよいよ、魔王軍が動き出した。各地にある上級ダンジョンから、魔物が溢れ出してきた。一次的には、魔物を押しとどめるが、王国軍の兵士の被害が大きく持ちこたえられない。
一部の魔物が街や村を襲う。魔物から逃げる人々が、難民となって、より安全な地域に移動している。
私達の居るウディーア王国の避難民は南方の避難所への移動をほぼ完了した。
しかし、まだ、十分な食料の確保には至っていない。また、冒険者ギルドの上級ダンジョンの調査は、まだまだ時間が掛かりそうだ。すでに、1週間は経ってしまった。
パープルに依頼した仕事も、あまり順調ではないようだ。まだ、30人にも満たないらしい。でも、こちらの特級ダンジョンの調査もあるので、一度戻ってくるという。
「久しぶり、パープル」
私は、飛びついてきたパープルの頭を撫でてあげた。パープルは、喜んで、フサフサの尻尾を振っている。
「ご苦労様、それで、集めた仲間はどうなった?」
キリ姉がパープルに聞いた。
「イマデ、38ニンニ ナッタ。10ニンクライニ シゴトヲ ツヅケテモラウ」
「そう、もう少しね。残りはどするの?」
「ノコリハ、コチラニ キテモラウ」
「それで、いいよ。キリもいいよね」
「はい、キリ姉」
パープルには、これまで、同族のワーキャットを見つけて、仲間にしてもらっていた。それが、38人になったという訳だ。今後の事を考えると、多ければ多いほどいいので、引き続き仲間集めを継続して貰う。
私達は、魔王軍の魔族に見つからないように特級ダンジョンの出入口まで、たどり着いた。
「キリ、パープル、用意はいい?」
「はい」「ハイ」
「それじゃ、潜るわよ」
「キリ、スキル探索をお願い」
「特に強い魔物はいない。進んで、大丈夫よ」
私は、スキル探索を用いて、周囲の敵を探知した。しかし、レベル50以上の敵はいない。
範囲攻撃で一気に倒すことが難しい魔物以外は無視することにした。
第35階層になって、やっと、レベル55の魔物が現れた。それは、ポイズン・サーペイントだった。普通のサーペイントに比べて、毒性の高い毒液を吐く。単なる毒ではなく、麻痺性の毒も混ざっている。
「キリ、正面で、相手の攻撃を受け止めて!」
「はい、キリ姉」
私は、自分自身に闇魔法でバリアを張って、ポイズン・サーペイントの前で、剣と盾を構えた。ポイズン・サーペイントは、上体を反り上げて、私を見下ろしている。
「シュー、シュー」
ポイズン・サーペイントが舌を出しながら、嫌な音を出している。
最初は、頭を振り下ろして、私を噛み殺そうとした。私は、盾で攻撃を受け止め、素早く胴体に切り込んだ。しかし、鱗に囲まれた胴体は固く、一度の攻撃では、鱗が数枚剥がれただけだった。
「どりゃ」
再度、胴体に切り込んだ。今度は、鱗の剥がれた所にうまく切り込んだ。
「思い知ったより、簡単だったね。キリ姉」
「そうね、でも、おかしいね」
「何が? おかしいの」
「ポイズン・サーペイントと一緒に、魔王軍の兵士が現れると思って、待機していたのよ」
「そうなの。だから、私が正面で、戦ったのね」
「そうよ。キリ。でも、ポイズン・サーペイント1匹だけだった」
「ラッキーだったね。楽に倒せたし」
「だから、おかしいのよ。ここまでも、一度も魔王軍の兵士に出会っていないのよ」
「そうね。まだ、戦っていないね」
「キリ、変でしょ。私達は、魔王軍と戦うために、この特級ダンジョンに潜って来たのよ」
「うん、そうだよ。これからかな?」
「キリ、ちょっとは一緒に考えてよ」
「はい。分かった。ちょっと、スキル探索の範囲を広げて、他の階層も調べてみるね」
私は、スキル探索を使った。いつもは、自分のいる場所を中心に360°マナを薄く放出して、そのマナの跳ね返りをチェックして魔物を調べていた。今回は、下に向けて、放出した。
「キリ姉。このダンジョンは、100階層まであったよ。最下層には、ダンジョンコアがあったよ。でも、ダンジョンマスターが見当たらない」
「ダンジョンマスターがいないって、キリ、もう一度チェックして」
「はい、もい一回調べるね」
私は、再度スキル探索を使って、特に最下層の第100階層を念入りに調べた。
「キリ姉、やっぱり同じよ。ダンジョンマスターはいないわ」
「そう、今回できた他の上級ダンジョンについても、ちょっと、調べてみない?」
「いいよ。パープルもいいね」
「イイヨ」
私達は、今回新規に出来上がった上級ダンジョンの調査を行った。といっても、スキル探索をつかっただけだ。
「やっぱり、一緒よ。階層は、70階層と少ないけど、ダンジョンマスターはいないよ」
「キリ、ありがとう。一旦、工場に戻ろう」
「パープル、こっちに来て」
パープルが、私の横にくっ付いてきた。転移魔法で、私達3人は、避難所のあるウディーア王国の南方の工場に移動した。
「今回分かったことは、新規のダンジョンには、確かに、レベルの高い魔物がいる。でも、魔王軍はいない。そして、ダンジョンコアはあるけど、ダンジョンマスターはいない」
「その通り。それで、キリ姉、これからどうする?」
「今回は、魔王軍の様子を調べるために、特級ダンジョンに潜ったわけね」
「そうだよ。それで?」
「キリ! ちょっとは、あなたも考えてよね」
「はい。ごめんね」
キリ姉に、久しぶりに怒られてしまった。面倒なことは、つい、キリ姉に任せてしまう。もう、癖になっているようだ。
一部の魔物が街や村を襲う。魔物から逃げる人々が、難民となって、より安全な地域に移動している。
私達の居るウディーア王国の避難民は南方の避難所への移動をほぼ完了した。
しかし、まだ、十分な食料の確保には至っていない。また、冒険者ギルドの上級ダンジョンの調査は、まだまだ時間が掛かりそうだ。すでに、1週間は経ってしまった。
パープルに依頼した仕事も、あまり順調ではないようだ。まだ、30人にも満たないらしい。でも、こちらの特級ダンジョンの調査もあるので、一度戻ってくるという。
「久しぶり、パープル」
私は、飛びついてきたパープルの頭を撫でてあげた。パープルは、喜んで、フサフサの尻尾を振っている。
「ご苦労様、それで、集めた仲間はどうなった?」
キリ姉がパープルに聞いた。
「イマデ、38ニンニ ナッタ。10ニンクライニ シゴトヲ ツヅケテモラウ」
「そう、もう少しね。残りはどするの?」
「ノコリハ、コチラニ キテモラウ」
「それで、いいよ。キリもいいよね」
「はい、キリ姉」
パープルには、これまで、同族のワーキャットを見つけて、仲間にしてもらっていた。それが、38人になったという訳だ。今後の事を考えると、多ければ多いほどいいので、引き続き仲間集めを継続して貰う。
私達は、魔王軍の魔族に見つからないように特級ダンジョンの出入口まで、たどり着いた。
「キリ、パープル、用意はいい?」
「はい」「ハイ」
「それじゃ、潜るわよ」
「キリ、スキル探索をお願い」
「特に強い魔物はいない。進んで、大丈夫よ」
私は、スキル探索を用いて、周囲の敵を探知した。しかし、レベル50以上の敵はいない。
範囲攻撃で一気に倒すことが難しい魔物以外は無視することにした。
第35階層になって、やっと、レベル55の魔物が現れた。それは、ポイズン・サーペイントだった。普通のサーペイントに比べて、毒性の高い毒液を吐く。単なる毒ではなく、麻痺性の毒も混ざっている。
「キリ、正面で、相手の攻撃を受け止めて!」
「はい、キリ姉」
私は、自分自身に闇魔法でバリアを張って、ポイズン・サーペイントの前で、剣と盾を構えた。ポイズン・サーペイントは、上体を反り上げて、私を見下ろしている。
「シュー、シュー」
ポイズン・サーペイントが舌を出しながら、嫌な音を出している。
最初は、頭を振り下ろして、私を噛み殺そうとした。私は、盾で攻撃を受け止め、素早く胴体に切り込んだ。しかし、鱗に囲まれた胴体は固く、一度の攻撃では、鱗が数枚剥がれただけだった。
「どりゃ」
再度、胴体に切り込んだ。今度は、鱗の剥がれた所にうまく切り込んだ。
「思い知ったより、簡単だったね。キリ姉」
「そうね、でも、おかしいね」
「何が? おかしいの」
「ポイズン・サーペイントと一緒に、魔王軍の兵士が現れると思って、待機していたのよ」
「そうなの。だから、私が正面で、戦ったのね」
「そうよ。キリ。でも、ポイズン・サーペイント1匹だけだった」
「ラッキーだったね。楽に倒せたし」
「だから、おかしいのよ。ここまでも、一度も魔王軍の兵士に出会っていないのよ」
「そうね。まだ、戦っていないね」
「キリ、変でしょ。私達は、魔王軍と戦うために、この特級ダンジョンに潜って来たのよ」
「うん、そうだよ。これからかな?」
「キリ、ちょっとは一緒に考えてよ」
「はい。分かった。ちょっと、スキル探索の範囲を広げて、他の階層も調べてみるね」
私は、スキル探索を使った。いつもは、自分のいる場所を中心に360°マナを薄く放出して、そのマナの跳ね返りをチェックして魔物を調べていた。今回は、下に向けて、放出した。
「キリ姉。このダンジョンは、100階層まであったよ。最下層には、ダンジョンコアがあったよ。でも、ダンジョンマスターが見当たらない」
「ダンジョンマスターがいないって、キリ、もう一度チェックして」
「はい、もい一回調べるね」
私は、再度スキル探索を使って、特に最下層の第100階層を念入りに調べた。
「キリ姉、やっぱり同じよ。ダンジョンマスターはいないわ」
「そう、今回できた他の上級ダンジョンについても、ちょっと、調べてみない?」
「いいよ。パープルもいいね」
「イイヨ」
私達は、今回新規に出来上がった上級ダンジョンの調査を行った。といっても、スキル探索をつかっただけだ。
「やっぱり、一緒よ。階層は、70階層と少ないけど、ダンジョンマスターはいないよ」
「キリ、ありがとう。一旦、工場に戻ろう」
「パープル、こっちに来て」
パープルが、私の横にくっ付いてきた。転移魔法で、私達3人は、避難所のあるウディーア王国の南方の工場に移動した。
「今回分かったことは、新規のダンジョンには、確かに、レベルの高い魔物がいる。でも、魔王軍はいない。そして、ダンジョンコアはあるけど、ダンジョンマスターはいない」
「その通り。それで、キリ姉、これからどうする?」
「今回は、魔王軍の様子を調べるために、特級ダンジョンに潜ったわけね」
「そうだよ。それで?」
「キリ! ちょっとは、あなたも考えてよね」
「はい。ごめんね」
キリ姉に、久しぶりに怒られてしまった。面倒なことは、つい、キリ姉に任せてしまう。もう、癖になっているようだ。
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