19 / 22
第2章 女魔法使い
第18話 リリアの助言
しおりを挟む
また、リリアが、私に声を掛けて来たわ。以前と同じく、私が一人になるのを待ち伏せていたようなの。
「ラズ、少し、助言をするね」
「何のこと?」
私は、まだ、リリアの事を信用できないわ。ユリアの話と共通している部分は、あるもののリリアの目的が分からないの。単なる親切で、私に近づいて来たとは、思えないわ。
「ラズは、自分の過去を知りたくないの?」
また、これだ。私が、記憶をなくしているって、誰に訊いたのか? でも、それは、真実だけど。
「何を言っているんだ!」
「だから、ラズは、昔の事を忘れているのでしょ。それを、取り戻したくないの?」
まただわ。リリアのこの断定的な喋り方が嫌いだわ。
「だから、どうして、僕が、昔の事を忘れていると思っているの?」
私は、少しイライラして来た。もう、リリアとの話は、打ち切ろうかなぁ。
「前にも言ったでしょ。私の事を思い出せないってことが、その証拠よ。そして、私は、あの噂を調べていたの」
「噂って、何?」
「忘れたの? 魔王の最後の魔法のことよ。魔王は、死ぬ前に、相手の記憶を封印する魔法を使うことが出来るの。それで、復活したときに、今度は、倒されないようにするのよ」
「自分を倒した相手の記憶を封印するって、本当のこと?」
「それで、色々調べたのよ。そしたら、ある魔法学院の図書館に魔王に関する秘密の書があったの」
「どうやって、その秘密の書を見ることが出来たんだ」
「その魔法学院の教師として、潜入したのよ。そして、やっとのことで、その秘密の書に魔王の最後の魔法の事が書かれていることを探り出したの」
「どんな魔法だ」
「ラズ、興味あるでしょ。それなら、私にだけ、正直に話してよ」
どんな魔法か、興味はあったけど、まだ、リリアの事は、信用できない。
「お前のことが、信じられない」
私は、正直にリリアに告げた。
「ラズ、何てことを言うの。本当に、一緒に旅をしたのよ」
「2人だけで、旅をしたのか?」
「違うわ。5人で、旅をしたのよ」
「それなら、他の3人を連れてこい。それなら、信用する」
「うーん、でも、それは、出来そうにないよ」
「何故だ」
「ラズは、若返っているけど、一緒に、旅をしたのは、もう、50年も前のことなの」
それなら、私は、何故、こんな姿なのだろうか。そして、私だけ、若返ったのか? 以前の姿でない私を見て、どうして、一緒に旅をした仲間だと断言できるのだろう。やはり、何かが、変だ。でも、リリアが探したという情報は、知りたい。どうしよう。私は、迷ってしまった。
「それでも、リリアたちが旅をしたことは、僕に示せるのだろう」
「それは、出来るわ」
「それなら、5人のメンバーの名前と特徴とどのような旅をしたのかを教えてくれ」
「いいわ。用意するから、少し待ってね」
「分かった。準備が出来たら、連絡をしてくれ」
私は、リリアと別れて、ルナとアリアにいる宿に戻った。
「ラズ、遅かったわね。どこに行っていたの?」
「少し、街を見て回っていたの」
「へぇ、珍しいわね。人嫌いのラズが、街をぶらつくなんて」
確かに、下手な言い訳だった。もっと、それらしい、嘘を付けなかったのか、今更だが、後悔した。
「ラズだって、一人になりたいことは、あると思います」
アリアが、何故か、私のフォローをしてくれた。
「そうね。別に一人になったらだめって、言うことではないのよ。少し、心配しただけよ」
「ゴメンね。言ってから、行ったらよかったね」
私は、ルナに心配を掛けたようだ。
「いいよ。これからは、言ってね」
「うん。気を付けるよ」
思わず、嘘をついてしまったけど、いずれ、リリアの話はしないといけない。本当に、旅に出ていたということと、どんな目的の旅かを確かめたら、ルナに話そう。
翌日は、中級ダンジョンに潜った。冒険者ギルドに許可されたので、ルナは、張り切っていた。
「ルナ、必ず、3人で、行動しようね」
「分かっているわ。一人で、突進なんか、しないわ」
「本当に、止めてくださいね。今は、特に危険ですから」
アリアも、ルナに注意してくれた。私と同様に、異変がどのような物か分かっていないことが、不安なのだろう。
「それじゃ、行くわよ」
「「はい」」
私達は、以前に潜っていた第12階層までは、前に進むことを優先にして、多くの魔物を狩ることは、二の次にして、進んで行った。そのおかげで、短時間で、第12階層まで到達することが出来た。
当然、リスクを回避するために、私は、常にスキル探索で、現在いる階層だけでなく、中級ダンジョンの全体を探索していた。何か、異常があれば、直ぐに、引き返すつもりでいた。
「さあ、ここからが、本番よ」
ルナは、これまで以上に、張り切っている。ここには、オークがいるだけで、特に心配なことはなさそうだ。
そう思った、直後、スキル探索で、異変が見つかった。すぐ下の第13階層に、多数の魔物が一度に現れた。
おそらく、転移魔法で、このダンジョンに送り込まれたのだろう。その魔法陣を見ることで、どこから送られたのか、知ることができる。
「ルナ、この下の階層で、多数の魔物が転送されてきたみたい。私一人で、調べに行くよ」
「ラズ、だめよ。一緒に行くよ」
「いや、どんな魔法か、知りたいの。だから、急ぐの」
「分かったわ、危険な事はしないでね。私達も直ぐに追いかけるからね」
「うん」
私は、直ぐに風魔法で、飛んで行った。転送された所には、魔物が固まっているので、それらを火魔法で、狩りつくした。
「火壁」
それほど、強い魔物は、いなかったので、1度の魔法で、私が確認したかった、魔法陣の痕跡を見ることが出来た。それをスキル鑑定で、調べることで、どのような魔法が使われたのかが、分かった。
「この魔法は、知っている。だけど、知っていることが、分るだけだ。知識が、消えている」
リリアの言葉を思い出した。「記憶を封印する魔法」を魔王に掛けられた。本当に、そのようだ。魔法に関する知識が、ごっそり、消えているようだ。どうも、記憶の消え方に特徴があることに気が付いた。
ルナに相談しよう。それがよさそうだ。一人では、感情的に動いてしまいそうだ。
「ラズ、少し、助言をするね」
「何のこと?」
私は、まだ、リリアの事を信用できないわ。ユリアの話と共通している部分は、あるもののリリアの目的が分からないの。単なる親切で、私に近づいて来たとは、思えないわ。
「ラズは、自分の過去を知りたくないの?」
また、これだ。私が、記憶をなくしているって、誰に訊いたのか? でも、それは、真実だけど。
「何を言っているんだ!」
「だから、ラズは、昔の事を忘れているのでしょ。それを、取り戻したくないの?」
まただわ。リリアのこの断定的な喋り方が嫌いだわ。
「だから、どうして、僕が、昔の事を忘れていると思っているの?」
私は、少しイライラして来た。もう、リリアとの話は、打ち切ろうかなぁ。
「前にも言ったでしょ。私の事を思い出せないってことが、その証拠よ。そして、私は、あの噂を調べていたの」
「噂って、何?」
「忘れたの? 魔王の最後の魔法のことよ。魔王は、死ぬ前に、相手の記憶を封印する魔法を使うことが出来るの。それで、復活したときに、今度は、倒されないようにするのよ」
「自分を倒した相手の記憶を封印するって、本当のこと?」
「それで、色々調べたのよ。そしたら、ある魔法学院の図書館に魔王に関する秘密の書があったの」
「どうやって、その秘密の書を見ることが出来たんだ」
「その魔法学院の教師として、潜入したのよ。そして、やっとのことで、その秘密の書に魔王の最後の魔法の事が書かれていることを探り出したの」
「どんな魔法だ」
「ラズ、興味あるでしょ。それなら、私にだけ、正直に話してよ」
どんな魔法か、興味はあったけど、まだ、リリアの事は、信用できない。
「お前のことが、信じられない」
私は、正直にリリアに告げた。
「ラズ、何てことを言うの。本当に、一緒に旅をしたのよ」
「2人だけで、旅をしたのか?」
「違うわ。5人で、旅をしたのよ」
「それなら、他の3人を連れてこい。それなら、信用する」
「うーん、でも、それは、出来そうにないよ」
「何故だ」
「ラズは、若返っているけど、一緒に、旅をしたのは、もう、50年も前のことなの」
それなら、私は、何故、こんな姿なのだろうか。そして、私だけ、若返ったのか? 以前の姿でない私を見て、どうして、一緒に旅をした仲間だと断言できるのだろう。やはり、何かが、変だ。でも、リリアが探したという情報は、知りたい。どうしよう。私は、迷ってしまった。
「それでも、リリアたちが旅をしたことは、僕に示せるのだろう」
「それは、出来るわ」
「それなら、5人のメンバーの名前と特徴とどのような旅をしたのかを教えてくれ」
「いいわ。用意するから、少し待ってね」
「分かった。準備が出来たら、連絡をしてくれ」
私は、リリアと別れて、ルナとアリアにいる宿に戻った。
「ラズ、遅かったわね。どこに行っていたの?」
「少し、街を見て回っていたの」
「へぇ、珍しいわね。人嫌いのラズが、街をぶらつくなんて」
確かに、下手な言い訳だった。もっと、それらしい、嘘を付けなかったのか、今更だが、後悔した。
「ラズだって、一人になりたいことは、あると思います」
アリアが、何故か、私のフォローをしてくれた。
「そうね。別に一人になったらだめって、言うことではないのよ。少し、心配しただけよ」
「ゴメンね。言ってから、行ったらよかったね」
私は、ルナに心配を掛けたようだ。
「いいよ。これからは、言ってね」
「うん。気を付けるよ」
思わず、嘘をついてしまったけど、いずれ、リリアの話はしないといけない。本当に、旅に出ていたということと、どんな目的の旅かを確かめたら、ルナに話そう。
翌日は、中級ダンジョンに潜った。冒険者ギルドに許可されたので、ルナは、張り切っていた。
「ルナ、必ず、3人で、行動しようね」
「分かっているわ。一人で、突進なんか、しないわ」
「本当に、止めてくださいね。今は、特に危険ですから」
アリアも、ルナに注意してくれた。私と同様に、異変がどのような物か分かっていないことが、不安なのだろう。
「それじゃ、行くわよ」
「「はい」」
私達は、以前に潜っていた第12階層までは、前に進むことを優先にして、多くの魔物を狩ることは、二の次にして、進んで行った。そのおかげで、短時間で、第12階層まで到達することが出来た。
当然、リスクを回避するために、私は、常にスキル探索で、現在いる階層だけでなく、中級ダンジョンの全体を探索していた。何か、異常があれば、直ぐに、引き返すつもりでいた。
「さあ、ここからが、本番よ」
ルナは、これまで以上に、張り切っている。ここには、オークがいるだけで、特に心配なことはなさそうだ。
そう思った、直後、スキル探索で、異変が見つかった。すぐ下の第13階層に、多数の魔物が一度に現れた。
おそらく、転移魔法で、このダンジョンに送り込まれたのだろう。その魔法陣を見ることで、どこから送られたのか、知ることができる。
「ルナ、この下の階層で、多数の魔物が転送されてきたみたい。私一人で、調べに行くよ」
「ラズ、だめよ。一緒に行くよ」
「いや、どんな魔法か、知りたいの。だから、急ぐの」
「分かったわ、危険な事はしないでね。私達も直ぐに追いかけるからね」
「うん」
私は、直ぐに風魔法で、飛んで行った。転送された所には、魔物が固まっているので、それらを火魔法で、狩りつくした。
「火壁」
それほど、強い魔物は、いなかったので、1度の魔法で、私が確認したかった、魔法陣の痕跡を見ることが出来た。それをスキル鑑定で、調べることで、どのような魔法が使われたのかが、分かった。
「この魔法は、知っている。だけど、知っていることが、分るだけだ。知識が、消えている」
リリアの言葉を思い出した。「記憶を封印する魔法」を魔王に掛けられた。本当に、そのようだ。魔法に関する知識が、ごっそり、消えているようだ。どうも、記憶の消え方に特徴があることに気が付いた。
ルナに相談しよう。それがよさそうだ。一人では、感情的に動いてしまいそうだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~
繭
ファンタジー
高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。
見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に
え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。
確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!?
ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・
気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。
誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!?
女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話
保険でR15
タイトル変更の可能性あり
愚者による愚行と愚策の結果……《完結》
アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。
それが転落の始まり……ではなかった。
本当の愚者は誰だったのか。
誰を相手にしていたのか。
後悔は……してもし足りない。
全13話
☆他社でも公開します
愛すべき『蟲』と迷宮での日常
熟練紳士
ファンタジー
生まれ落ちた世界は、剣と魔法のファンタジー溢れる世界。だが、現実は非情で夢や希望など存在しないシビアな世界だった。そんな世界で第二の人生を楽しむ転生者レイアは、長い年月をかけて超一流の冒険者にまで上り詰める事に成功した。
冒険者として成功した影には、レイアの扱う魔法が大きく関係している。成功の秘訣は、世界でも4つしか確認されていない特別な属性の1つである『蟲』と冒険者である紳士淑女達との絆。そんな一流の紳士に仲間入りを果たしたレイアが迷宮と呼ばれるモンスターの巣窟で過ごす物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない
兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる