失われた記憶を探す闇の魔法使い(The dark wizard searching for lost memories)

無似死可

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第2章 女魔法使い

第11話 罠に掛かったルナ

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 前回の中級ダンジョンでの出来事だ。私は、少しばかりルナとアリアに毒に対する耐性を付けることが出来た。そのことで、少し、気が緩んでいたのだ。その為、いつもなら、周囲の魔物の状況を把握して、危険を避けるように行動していたのに。

 「キャー、誰か…」

 急に、ルナの叫び声が聞こえたと思うと、ルナの姿は、消えてしまった。

 急いで、スキル探索で、ダンジョン内を探した。しかし、ルナの気配はなかった。

 「アリア、大丈夫か」

 「はい、私は、大丈夫です。でも、ルナが消えてしまいました」

 「誰かに攫われたようだ」

 前回も、初級ダンジョンで、急に、魔物の群れが現れた。あれと同じようだ。転移魔法で、ルナが連れ去られたようだ。だが、魔物が出現した気配は、なかった。とすると、トラップが仕掛けられていたのか?

 「アリア、動かないで、この近くに罠が仕掛けられているようだ。僕が探すから、動かないで欲しい」

 「分かったわ。ここで、じっと、しているわ」

 私は、用心のために、アリアに闇魔法で、目印を付けておいた。それをスキル探索で、探すことが出来る。およそ100km離れていても感知できるはずだ。

 もう一度、ルナ消えた場所付近を調べた。すると、微かに、闇魔法の痕跡が見つかった。そして、更に、注意深く見ていると、転移魔法用の魔法陣の痕跡が見つかった。

 私は、その魔法陣を頭に焼き付けた。そして、ぼんやりでしかなかったその模様を頭の中で、鮮明な物に変換した。そして、それと全く同じ魔方陣を地面に描いた。

 「アリア、僕にしがみ付いてくれる」

 「はい」

 アリアは、素直に、私の身体を抱きしめた。それから、先ほど作った、魔法陣を起動した。

 「わぁ、これは、何?」

 アリアが、びっくりしたようだ。

 「無事、移動できたようだ」

 「ラズ、今のは、何?」

 「アリアは、転移魔法は、経験がないの?」
 
 「ないわ。今のが、転移魔法なの?」

 「そうだよ。地面に描かれた魔法陣によって、転移魔法が起動したんだ」

 「そう。初めてよ。ちょっと、びっくりした」

 私は、アリアが、落ち着いたのを確認してから、スキル探索で、私達の周りを調査した。すると、ルナを完治することが出来た。

 私は、アリアの後ろに隠れて、闇魔法のシールドでアリアの身体を覆った。

 「アリア、この先にルナが捕らえられている。そこまで、ゆっくり進んで欲しい。僕は、アリアの後ろで、隠れて付いて行くよ」

 「分かったわ」

 アリアが、ゆっくりと歩き始めた。私は、魔力が漏れないように、しながら、アリアの後ろから付いて行った。

 暫くすると、アリアが歩みを止めた。ルナの前に着いたようだ。

 「お前は、誰だ!」

 魔物の一人がアリアに声を掛けた。

 「私は、アリアよ。そこにいるルナの友達よ」

 「何! この少女の後を辿って来たというのか?」

 「そうよ。転移用の魔法陣で、ここまで、来たの」

 「まさか、あの魔法陣は、1回しか使えないはずだ。使えば、消えてなくなる。お前は、嘘を言っているな!」

 「いいえ、同じ魔方陣を地面に描いたの」

 「そんなバカな。あれは、闇魔法で描いた魔法陣だ。闇魔法が使えないお前に見えるはずがない」

 「それなら、どうして、私がここにいるの? 変でしょ?」

 魔物は、考え込んでしまった。ルナを囲んでいた魔物にも、少し、油断が生じた。私は、その一瞬を逃さなかった。一気に、ルナの横に飛び込んだ。そして、ルナを闇魔法のシールドで、包み込み安全を確保した。

 「お前は、何処から現れた。ぼーとしてないで、やっつけろ!」

 リーダらしき魔物が、周りの魔物に指示を出した。その声と共に、魔物の群れが、ルナと私に飛び掛かって来た。しかし、私のシールドは、魔物達の攻撃をすべて跳ね返してしまった。攻撃してきた魔物は、自分の攻撃を反射されて、自滅していった。

 「おっ、お前は、闇魔法が使えるのか」

 「…」

 私は、返事をしないで、素早く、アリアの前に移動した。アリアとルナの安全が確保されたことを確認してから、魔物の群を土魔法で、拘束した。それから、リーダ格の魔物に声を掛けた。

 「何故、トラップを仕掛けた」

 「獲物を捕らえるためだ」

 「獲物だと! 冒険者を捕らえて、どうするつもりだ」

 「そんなこと、俺の勝手だろ。好きにさせて貰うさ」

 「分かった」

 私は、土魔法で、リーダ格の魔物を拘束した。それから、スキル鑑定で、魔物を調べた。

 「ほう、お前も闇魔法が使えるのか。しかし、その程度では、大したことはないな。それでは、あの魔法陣は、誰が書いたのだ。お前には、理解できないだろう」

 「理解など、不要だ。教えて貰った。それをそっくりに写すだけだ。後は、魔力を注ぐだけだ」

 「何? 教えて貰っただと!」

 「そうだ」

 「その者は、どこにいる? 素直に答えろ!」

 「それを聞いてどうする? お前など、一瞬で、倒されてしまうぞ」

 「ほう、僕より強いというのか」

 「当たり前だろ。お前のような赤子が、私の師匠に敵うはずがない」

 「まあ、いい。お前は、まだまだ、役に立ちそうだから、連れて帰ることにしよう」

 私は、リーダ格の魔物以外を火魔法で、焼き払った。そして、その戦果を集めた。

 「ルナ、大丈夫か? 僕が、油断したせいで、ごめん」

 「ラズの性じゃないわ。私が、一人で、突き進みすぎたの。助けてくれてありがとう」

 「怪我は、していない?」

 「えぇ、大丈夫よ。転送されて、魔物に掴った直後に、ラズ達が現れたの。だから、怪我もしていないわ」

 「そうか。良かった。次からは、もっと、用心するよ」

 「私も、勝手に進まないようにするわ。ラズに、心配を掛けないようにするわ」

 何とか、無事にルナを見つけることが出来て、私は、やっと、落ち着けた。ダンジョンを出てから、リーダー格の魔物から、師匠に関する情報を得た。必要な情報を得てから、狩り取った。
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