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第28章 魔大陸編

2803.続・聖剣を求めて

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 アータキ国のテラ・ワールドの支店から、王宮に向かって進んで行くと、王宮の周りを兵士が取り囲んでいた。
 そして、その中に、神官達も混じっていた。

 王宮の門の前は、他とは違い大勢の兵士や神官達が身構えていた。どうも、ミヤーコ王国での出来事が伝わっているようだ。それにしても、情報が伝わるのが早い。

 国王通しが連絡を取っているようには、思えない。そうすると、神殿長同志が連絡を取っているのだろう。神殿には、特別な神具があり、それを用いて、思念伝達のような連絡を行うことが出来る。おそらく、それを用いているのだろう。

 でも、却って都合がいい。余計な説明をしなくても、良いから。

 「それじゃ、モリーロ、準備はいいか?」

 私は、思念伝達でモリーロに連絡を取った。

 「いいぞ。ムーン。始めようか」

 私は、モリーロの隠密魔法を解除して、兵士達に、その魔王としての姿を見せた。

 「邪魔をするな! 死ぬ覚悟の無いものは、この場から去れ!」

 「お前こそ、この門の前から、立ち去れ! この数の兵士を相手に勝てると思うのか?」

 「そうか。仕方がないな」

 モリーロの言葉に合わせて、私は、闇魔法で、兵士達を拘束した。兵士達は、次々に崩れて行った。しかも、何の声も出さずに、静かに倒れて行った。

 「何をした!」

 残った神官達が驚き、狼狽えながら、かろうじて、声を出した。

 「お前達は、闇魔法が、感じられないのか!」

 「えぇ、闇魔法だと。私は、見たことがない」

 「そうか。それなら、これから、忘れられないようにしてやろう」

 私は、声を出した、神官だけを闇魔法で、拘束した。しかし、今回は、身体の高速だけで、意識は奪わなかった。

 「うっ、身体が動かない。だれか、光魔法で、助けてくれ!」

 周りにいた神官達は、光魔法を繰り出して、闇魔法の拘束を解こうとした。しかし、私の闇魔法は、低レベルの光魔法で、破られるような物ではない。神官達の光魔法は、何の効果もなく、ただ、周りを明るくするだけだった。

 「それで、終わりか?」

 「おい、光魔法が、役に立たない。誰か、王宮にこのことを伝えに行け!」

 数人の神官が、門の中に入って行った。私とモリーロは、ゆっくりと、門を潜り、王宮に入って行った。

 次々に現れる兵士や神官達を闇魔法で、拘束していった。そして、いよいよ、国王のいる部屋の前まで、たどり着いた。

 扉の前の兵士達を闇魔法で拘束して、扉の中に入って行くと、国王が兵士達に守られて、玉座に座っていた。そして、神殿長が、当然のように、国王の横に控えていた。

 これまでと同じように、国王を問い詰めてもいいのだが、神殿長なら、他国の情報にも精通しているように思われたので、先に神殿長を脅すことにした。

  また、モリーロに魔王のふりをさせて、恐ろしそうな声を出させた。

 「国王の傍にいるのは、神殿長か?」

 「お前など、怖くはないぞ」

 神殿長は、震えるような声で、魔王モリーロに答えた。私は、少し、雰囲気を出すために、部屋を薄暗くして、魔王モリーロが、更に恐ろしく見えるようにした。
 
 「愚かな神殿長! 我の前に跪け!」

 魔王モリーロの声と同時に、私は、闇魔法を神殿長に掛けて、身体を拘束した。そして、息ができないように、空気が通らないようにバリアーを張った。暫くすると、神殿長は、苦しみ出した。

 「国王よ! そこの神殿長の様になりたくなければ、素直に答えよ」

 「な、何を答えるのだ」

 「国王にだけ伝承される秘密だよ」

 「そんなものはない」

 神殿長は、悶え、苦しみだした。そして、顔を真っ赤にして、国王の方を睨みつけた。

 「ほぅ、神殿長の息も、もう続かないようだが、良いのだな!」

 「だから、そんなものは、ないと言っているだろ」

 私は、神殿長のバリアを解き、声を出せるようにした。

 「 魔王様、お許しください。我々はただ、神の教えを守り、人々を守ろうとしているだけです」

 「そうか、神殿長よ。少しは、話せるようになったようだな」

 「国王! お願いです。魔王に本当の事をお伝えください」

 神殿長は、先ほどの苦しみから、国王に嘆願し始めた。国王は、神殿長の姿を見て、狼狽え始めた。

 「勇者を待って居るのか。愚かだな。
 もう、勇者は、召喚できないぞ!」
 
 「何を言う。そんなことはない。時期が来れば、召喚されるはずだ」

 「ほう。誰が、召喚するのだ」

 「それは言えない。だが、魔王が現れたら、直ぐに、召喚されるはずだ」

 「何と、国王ですら、真実を知らないのか?」

 「どういうことだ!」

 「召喚するはずの国は、もう、我が手に落ちたぞ」

 私は、魔王モリーロの横で、跪いた状態で、隠密魔法を解いて、姿を現した。

 「私の横に居る従順な僕の事は知っているか?」

 「えっ、もしや、ヘノイ王国の宰相ムーンか?」

 「そうだ。見覚えがあるようだな。お前は、ヘノイ王国が勇者を召喚する役割だと、知っているか?」

 国王は、頭を抱えた。他国のことは、正確には知らされていないが、噂でヘノイ王国が勇者を召喚できることを聞いていた。それ故、魔王が言っていることが真実に思えて来た。
 
 「勇者が、勇者が、召喚されない。そんんことが、…」

 「そうだ。勇者を召喚すべき者が我が僕となっている。それでは、誰が、勇者を召喚するのだ」

 「もう、お終いだ。勇者が、勇者だけが、頼りだったのに」

 「そろそろ、諦めて、素直に答えろ」

 国王は、項垂れて、静かに答え始めた。それを見て、私は、神殿長の拘束を解き、自由にしてやった。

 国王が、聖防具のことや、隠し場所などを話し終えた。

 「神殿長よ。お前は、どうする?」

  「わかった。魔王に従う」

 「よし。 賢明な判断だ。他国にも、このことを伝えよ」

 「はい、魔王様」

 神殿長は、従順に魔王モリーロに答えた。私達は、また、隠密魔法を使って、姿を消し、聖防具の隠し場所に急いだ。国王が言った通りの場所にそれは、隠されていた。

 これで、後は、聖剣だけだ。しかし、聖剣についての情報が全く集まらない。どういうことだ。フラン連合国には、今回の魔王の騒ぎは伝わった居るはずだ。それなのに、次に狙われる国王が、恐れていない。そのようの兆候が見えない。

 もしかすると、聖剣は、フラン連合国にないのか? それ故、情報が得られないのか? それなら、どこにあるのだ。まさか、本当の魔大陸にあるのか? いやいや、そんなはずはない。それなら、魔王と戦えない。

 ひょっと、すると、あの場所か? 私は、少し、思い当たる場所があった。まさか、あそこにあるのか?
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