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 第19章 ムーン誕生編

1901.幽体離脱

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 私は、こっそりと城の地下に作った魔法の訓練場に転移魔法で移動した。ここには、私が認めた者以外が入れないように、闇魔法で、結界を作っている。そして、私一人で、移動できるように、転移魔法用の魔法陣を乳母車の中に描いている。だから、移動すると、乳母車の中という訳だ。

 乳母車の動力は、私の風魔法だ。船と同じで、帆をつけて、操作盤を手元に付けた。自分で、魔法を起動してもいいけど、毎回、魔力をセーブするのは、面倒なので、スイッチにしてある。

 いつも通りに、すべての魔法を上級魔法まで、繰り返し、練習することにした。だんだんと、青のポーションを飲む回数が減って来た。

 もう一息だ。それで、以前の私に戻る。今日は、元気なので、少し、実験をすることにした。それは、幽体離脱だ。もし、これが出来れば、今の私でも、もっと、自由に行動が出来る。

 そこで、私は、自分の墓の前に行くことにした。乳母車のままの方が便利なので、移動用の乳母車を作った。もともと、乳母車が移動用なんだけど、転移魔法で移動するための移動用なんだ。

 新しい、移動用乳母車に乗って、墓地に行こうと思ったけど、スピアに心配させるわけにいかないので、一度、城のベッドに戻る事にした。

 私は、転移魔法でベッドの中に潜り込んだ。スピアのもふもふを小さな手で、掴みながら、大きな2つの山を越えて行った。スピアの大きな山を越えるのは、大変だ。でも、気持ちがいい。すごい弾力だ。レイカのそれとは、全く違う。

 やっと、レイカとスピアの間に戻る事が出来た。

 「あら、テラjr、起きたの。最近は、全く鳴かないね。ちょっと、おむつを見てみましょう」

 レイカが、私のパンツを無理やり脱がした。私は、レイカにされるがままだ。

 「まんま、まんま」

 「あら、今、この子喋ったわ。まだ、1月にも満たないのに、すごいわ。首がすわるのも、早いし」

 レイカは、大はしゃぎだ。横で寝ていたスピアを揺すって起こしている。

 「スピア、起きてよ。今、テラjrが喋ったのよ」

 「あっ、レイカ。お早う」

 「ねえ、聞いてよ。今ね。テラjrが喋ったのよ。『まんま』って、言ったのよ」

 「うん。大丈夫。テラ、喋れる」

 「何を寝ぼけてるの。テラじゃなくて、テラjrのことよ。この赤ちゃんが喋ったのよ」

 「うん。分かった」

 スピアも、レイカのはしゃぎぶりに、寝て居られないようだ。起き上がった。

 「レイカ、おしめ。そのまま」

 「あっ、ほんとだ。あら、あら、テラjrちゃん、恥ずかしかったね。おしめも替えますよ」

 レイカは、濡れてもいないおしめをせっせと替えている。そろそろ、気が付かれそうだ。たまには、おしめの中で、やってみようかな。でも、替えて貰うまで、気持ち悪いし。レイカが気にしていないから、このままで、済まそう。レイカにとっては、初めての子供だからね。

 そういえば、最近、レイカがお乳が張って、困るって言っていた。私が、母乳を飲む量が減ったせいだ。もう、離乳食の方がいいのだけど、頑張って、レイカの乳を吸ってやろう。

 レイカが母乳をあげているって、他の人に知られたくないからね。私は、朝食をとってから、スピアに自分の墓に連れて行ってもらった。

 そこで、墓を開けて、自分の身体を取り出した。土人形ゴーレムだ。以前の自分の冷たくなった姿を見るのは、なんだか、気持ち悪い。以前は、なんとも思わなかったけど。本当に、死体の様だ。

 私達は、土人形ゴーレムをアイテムボックスに入れて、地下牢の前の工房に転移魔法で、移動した。

 ここには、いままでの土人形ゴーレムが並べてある。その横に新しくガラスのケースを創り、飾っておいた。その横には、使う予定だった。次の土人形ゴーレムが置いてある。

 私は、スピアに様子を見ておくように言った。

 「ねえ、スピア、もし、私の様子がおかしかったら、すぐに、この封印用の魔法陣を壊してね。今、闇魔法を解除しておくからね」

 「うん。テラ、わかった。よく見ておくね」

 「お願いね」

 私は、以前の土人形ゴーレムに描いている魂の封印用の魔法陣に掛けている結界を解除した。それから、封印用の魔法陣を起動した。

 私の魂が引っ張られていく、明るい光の輪が見えて、吸い込まれていく。

 気が付くと、私は、土人形ゴーレムの中に居た。赤ん坊の肉体から、魂が抜けたようだ。

 私自身には、異常はなかった。以前と同じように動くことが出来る。

 「スピア、出来たよ。前の土人形ゴーレムに戻れた」

 「うん。戻れている。でも、赤ちゃん、死ぬ」

 「スピア、お願い。壊して!」

 スピアが、素早く封印用の魔法陣を壊した。私は、元の赤ちゃんの身体に戻った。

 「頭がイタイ。うー、身体中が痛い」

 「テラ、大丈夫?」

 スピアは、素早く私に赤のポーションを降りかけた。そして、私にも、飲ませた。口を開けないので、スピアは、自分が口に含め、私に口づけをして、無理やり飲ませた。

 「ありがとう。少し、マシになった」

 私は、独り言を繰り返した。

 「身体の劣化が激しい様ね」

 私は、自分を納得させるように、呟いた。

 「赤ちゃんの身体では、負担が大きい様ね」

 今回は、失敗だ。でも、出来るということは分かった。短時間で会ったが、土人形ゴーレムに魂を移動させることが出来た。

 何か、別の方法があるのだろう。元の身体が、死なない方法が。また、実験だ。でも、危険そうだ。
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