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 第17章 テラの社交界デビュー編

1709.鍛冶屋の育成

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  私が、部屋で服を脱いで着替えようとしていると、ガーベラから思念伝達で、連絡が入った。

 「テラ、今いい?」

 「今は、大丈夫だよ。ガーベラ、何かトラブル?」

 「そうじゃないの。前に、テラが頼んでいたた鍛冶屋の育成のことよ」

 「あぁ、そうだった。すっかり、忘れていたよ。それで?」

 「最初に派遣した10名の育生が終わって、帰って来たよ」

 「そうか、それで、どうだった?」

 「普通の武器や装備は作れるよ。でも、ギリギリ、オリハルコンを使った物を創れるといった感じ」

 「そうか、仕方がないね。時間と共に技術も上がると思うよ」

 「そうね。暫くは、様子を見るよ。それから、募集を継続しているので、どんどん派遣するよ」

 「そうして貰えるとありがたい」

 「その10人は、リンダの所で働いて貰ってくれる」

 「いいわよ。それじゃ、リンダと連絡を取って、後は、任せるわね」

 「そうしてくれる。それじゃ、バイバイ」

 私は、ガーベラとの思念伝達を切った。思って状態ではないが、何とか、オリハルコンを使った商品を売り出すことが出来そうだ。今は無理でも、徐々に技術が上達してくれることを期待した。

 私は、転移魔法で、リンダの所へ移動した。

 「やあ、リンダ。久しぶり」

 「あら、テラ、どうしたの? わざわざ来て」

 「リンダの顔を見に来たんだ」

 「それは、嬉しいわ。なんだか、テラ、大人びたね。少し、大きくなった?」

 「いいや、変わらないよ。リンダこそ、色っぽくなったね」

 「そうかなぁ。最近は、忙しくて、服装もなにもかも、気にかけていないのよ」

 リンダは、猫耳族特有のふわふわの耳を持っている。そして、尻尾も可愛い。

 以前は、感じなかったが、リンダのプロポーションは、抜群だ。

 「ガーベラから、連絡は入っている?」

 「鍛冶屋の育成の件ね。聞いているわ。取り敢えず、簡単な日用品を作って貰うわ。慣れて来てから、武器や、装備を作って貰うことにするね」

 「それから、私が依頼した市場調査は、どう?」

 「まだ、詳しいことは、分かっていないの。もう暫く、待ってね」

 「リンダの後継者は、育っているの?」

 「そうねぇ。バイオレットが、まだ、幼いけど、仕事ができるわ。多分、テラより、一つ下ね」

 「そんなに若いのか。って、私も、若いってことだね」

 「でも、結婚もしているし、それなりの経験をして来たみたいね」

 「そうだね。側室もいるんだよ」

 「へえ、あのテラがね」

 リンダの尻尾が揺れている。思わず、触ってしまいそうだ。

 「リンダ、今日は、まだ、仕事があるの?」

 「もう少しで終わるよ。どうして?」

 「久しぶりに、リンダと飲もうかと思って」

 「あら、テラは、お酒が飲めるの?」

 「少しは、飲めるようになったよ。それに、ドワーフに渡している特別な酒もあるよ」

 「へぇ、ドワーフの酒ね。飲んだみたいわ」

 「それじゃ、待っているよ」

 「本店で、待っていてくれる?バイオレットもいるから、待っている間、話でもしていてよ」

 「わかった」

 私は、転移魔法で、本店に移動した。本店も、店じまいをしている所だった。

 「こんばんわ。テラといいます。バイオレットは、いますか?」

 「はい、私が、バイオレットです。テラさんには、いつもお世話になっております」

 バイオレットは、小柄な少女で、私の肩ぐらいまでしかない。髪の毛をおさげにしているので、より一層、幼く感じてしまう。

 「リンダが来るまで、待たせてください」

 「はい、分かりました。何か、飲みますか?」

 「それじゃ、紅茶でも、頂きます」

 バイオレットは、奥の部屋に行き、紅茶とビスケットを持って戻って来た。

 ソファに座っていた私の前のテーブルの上に置いた。

 「どうぞ、おあがりください」

 「ありがとう」

 バイオレットは、本店で、寝泊りしているようだ。店じまいしても、帰ろうとはしていない。

 「リンダさん、遅いですね」

 「いつも、こんな時間まで、働いているの?」

 「そうですね。いつも、外は真っ暗になっていますね」

 「身体の方は大丈夫?」

 「はい、健康だけが取り柄です」

 「リンダから、優秀だって、聞いているよ」

 バイオレットは、少し恥ずかしくがって、頬を赤くした。

 「そんなことないですよ。でも、リンダさんに認めて貰えると嬉しいです」

 バイオレットは、リンダが好きなんだなぁ。リンダは、よく慕われているようだ。

 漸く、リンダがやって来た。手には、食べ物を袋いっぱいに入れて、重そうに持っていた。

 「お待たせ。テラ、バイオレットは、どう?」

 「良い子だね。よく、気が利くよ」

 「そうでしょ。いい子だよね」

 リンダも、バイオレットが褒められて、嬉しそうだ。多分、バイオレットがリンダの後継者になるのだろう。こんな幼いころから、優秀なリンダに鍛えられれば、すごい人材に育つだろう。

 「テラ、上に行く?」

 「分かった」

 私は、リンダについて、2階に上がった。2階で、リンダとバイオレットは、寝泊りしているようだ。私は、リンダの部屋に案内された。

 「リンダの部屋は、さっぱりしているね」

 「そうでしょ。本当に、寝るだけの部屋になっているの」

 私達は、部屋の隅にあるソファに座って、リンダの買って来た焼き肉を食べながら、酒を飲み始めた。

 「テラが、お酒を飲むのを見るのは、初めて」

 「そうだったかなぁ。前にも一緒に飲んだと思うよ」

 「あの時は、スピアと私が飲んだのよ。テラは、見てただけよ」

 「そうだったかぁ。もう、随分前のような気がするね」

 「そうね。2年ぐらい前かな?」

 リンダは、少し顔が赤くなっている。以前より、弱くなっているみたいだ。

 「リンダ、身体は、大丈夫?」

 「えっ、どうして?」

 「特に、理由はないよ。遅くまで、働いているから、少し、心配になっただけだよ」

 「大丈夫よ。私は、元気よ」

 リンダは腕で、力こぶを創る格好をした。私は、思わず身体を乗り出して、リンダの力こぶに触れてみた。たしかに、硬い。

 「リンダ、すごいね。本当に力持ちみたい」

 「テラ、みたいとは、どういうこと?リンダは、力持ちだよ」

 先ほど出した酒が無くなったので、新しい瓶をテーブルに出して、空の瓶をしまった。

 リンダは、自分で言うように、お洒落な服を持っていないようだ。どれも、動きやすいものばかりだ。

 今日来ている服も作業重視という感じだ。結構、肌が露出している。

 「リンダは、お酒強いね」

 「そうだね。でも、前より酔いやすくなったみたい。ほら、今も顔が真っ赤になっているよ」

 私は、リンダのほほの触れてみた。確かに熱くなっている。でも、まだ、まだ、飲めそうな感じだ。

 バイオレットは、リンダの傍で、空になったコップにお酒を注いでいる。皿には、料理を少しずつ
入れている。リンダの世話係だ。

 「リンダは、今の仕事は気に入っている?」

 「そうねぇ。仕事の分は、貰っているから、満足よ。以前は、月に金貨50枚で生活していたのよ」

 「そうだったの。金貨50枚でも十分な金額だよ」

 「そうね。田舎から出て来たばかりの私には、十分だったわ」

 「ところで、バイオレットは、家族いるの?」

 「バイオレットも、私と同じよ。家族はいるけど、放り出されてるのよ」

 「そうなんだ。だから、よけいにバイオレットの事が可愛いのかな」

 「バイオレットは、可愛いでしょ」

 リンダは、バイオレットを抱きしめて、撫でまわしている。バイオレットも満更ではないようだ。

 「本当に、可愛いね」

 「テラも、そう思うよね」
 
 「いや、リンダの事だよ。可愛いのは」

 「また、テラったら、酔ってる?」

 「少しね。酔っているかも」

 「今日は、久しぶりだから、飲み明かすよ」

 「いいよ。付き合うよ」

 それから、私とリンダは、何本も瓶を空けて行った。空いた瓶は、すぐに片づけて、新しい瓶をテーブルに置いた。リンダが、いつでも、飲めるように、酒は切らさなかった。

 また、バイオレットが、こまめに、酒を注ぎ、料理を皿に入れていた。

 「バイオレット、眠くないかい」

 「はい、大丈夫です。リンダさんが起きている間は、私も起きています」

 「そうか。そろそろ、リンダを寝かそうか?」

 「そうですね」

 私は、リンダを抱き上げて、ベッドに連れて行った。

 「テラ、まだ、飲むよ。付き合え」

 「わかったよ。まだ、飲むよ。でも、すこし、休憩だよ」

 「少しだけだよ」

 私は、リンダをベッドに寝かせ、布団を掛けてあげた。ふさふさの耳を触ってみた。やはり、気持ちがいい。酔っているせいか、とても暖かい。

 リンダに顔を近づけると、静かな寝息が聞こえて来た。良く寝ているようだ。私は、顔を少し下げて、リンダのほほに、キスをして、ベッドから離れた。

 「バイオレット、私は、帰るよ」

 「えっ、帰るのですか?」

 「どうして?リンダは、もう、飲めないよ」

 「リンダさんは、いつも、テラさんの事ばかり言っています。今日も、テラさんに会えてこんなに機嫌がいいんです。だから、もう少し、一緒に居てあげてください」

 「でも、リンダは、寝ちゃったよ」

 「それでもです。一緒に、居てください。そうでないと、私が後で怒られます」

 「どうして、バイオレットが怒られるの?」

 「だって、リンダさんがテラさんに帰っていいて、言ってないもの」

 「そうだね。まだ、言っていないね」

 「だから、居てください。私が帰したと思われます」

 バイオレットは、泣きそうな顔で私に頼み込んだ。私も、酔ってしまったようで、言われたまま、リンダと一緒に居ることにした。

 いつの間にか、バイオレットは、自分の部屋に戻っていた。
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