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 第13章 魔法学院(マテーダ王女)編

1305.写真の開発

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 シロッコスから、思念伝達で連絡が入った。偵察用気球を増産して欲しいという依頼だった。10台欲しいということだ。私は、了解して、早速作り始めた。ようやく、5台作り上げたときに、今度は、カーリンから、偵察用気球を5台欲しいという依頼だった。

 仕方がない、頑張って作ろう。何とか、残り10台を作り上げて、王宮の自分の部屋で寝ることにした。

 「今日は、疲れてしまった。シロッコスは、ソーロン帝国の偵察を本格的にやりたいということなので、10台は、必要だろう。ソーロン帝国は、広大な領土を持った国だから。
 それに、カーリンには、油田で頑張って貰っている。更に、探索に役立つように、5台は、必要だろう。これも、当然、要求すべきものだろう。
 でも、私一人で、創り続けて行くというのは、そろそれ、考えないといけないね。私の後継者を創らないと、自分の自由な時間が無くなってしまう」

 もっとも、大きなネックは、闇魔法が使える者がいないということだ。そもそも、闇魔法が存在すること自体知らない者が多い。なぜ、こんなに情報が消えてしまったのだろうか? 何か、理由があるのだろう。

 誰かの意図を感じる。故意に闇魔法を葬った者がいるのだろう。

 しばらく、横になっていると、カーリンから、また、思念伝達で連絡が入った。

 「カーリン、送った、偵察用気球に、トラブルがあったの?」

 「いえ、順調に調査が行えています。それには、問題がありません。操作も容易で、誰でも、簡単に扱うことができています」

 「それなら、何が、問題なの?」

 「すべてを記憶することができないのです」

 「何を言っているの?」

 「だから、探索した地形をすべて記憶しておくことが出来ないのです。見た映像を何らかの形で残したいのです」

 「そうか、写真だね」

 「写真とは、何ですか?」

 「見たままの物を絵画の様に残すものだよ」

 「それです。見えた物を絵画の様に残したいのです。何とか、なりませんか?」

 「少し、考えてみるけど、期待しないで待っていてね」

 「はい、わかりました。何卒宜しくお願い致します」

 「だから、期待しないでね」

 「はい、分かりました。すこしだけ、待っています」

 「それじゃ、バイバイ」

 私は、疲れた頭で、何も考えられない。いつの間にか、思念伝達を切っていた。 

 「これは、だめだ。疲れて、何も考えられない。でも、寝付けない。どうしよう」

 「コン、コン。テラ、居るの?」

 「はい、いるよ」

 「お邪魔します」

 私は、ベッドで、横になりながら、目を閉じていた。そのうち、眠れると思いながら、じっとしていた。

 「どうしたの。テラ、具合が悪いの?」

 「うん、大丈夫だよ。ちょっと、頭がボーとしているだけだよ」

 「それって、熱でもあるんじゃない?」

 誰かが、私の額に手を当てて来た。とても、冷たい手だ。でも、頭が冷やされて気持ちがいい。

 「ありがとう、でも、大丈夫だよ」

 「遠慮しなくて、いいよ。誰でも、疲れることは、あるよ」

 「そうだね」

 私の額の手が離れて行った。その代わりに、私に布団を掛けてくれた。何とか、眠れそうだ。

 暫くして、頭がすっきりしていることに気が付いた。少し、寝ることが出来たようだ。

 何か、ストレスになることが、あるようだ。自分では、いつも、いい加減なことばかり、やっているので、ストレスなんかとは、無縁だと思っていた。でも、やはり、ストレスは。あったようだ。

 どれが、大きいのか、全く、分からないが、私にもストレスの原因があるようだ。一度、しっかり、休息をとる必要があるようだ。

 「うん、何か重いなぁ?」

 「あっ、起きたの? 頭は、どう?」

 「だいぶ、ましになったよ。ありがとう、」

 「良かった。でも、もう少し寝てる方がいいよ。私も一緒にいるからね」

 「ちょっと、重いよ」

 「私が、抱き付いているから、テラは、落ち着けるのでしょ。よく、寝ていたよ」

 「そうだね。久しぶりに、良く寝たように思うよ」

 「そうよ。私のお陰よ。感謝しなさい」

 「はい、ありがとう、感謝してます」

 「だから、もう一度、寝なさいね」

 何だか、睡眠魔法を掛けられて様に、本当に、また、寝てしまった。寝込みながら、誰かが、私の上に覆い被さってくるのを感じた。でも、嫌な感じでは、無かった。寧ろ安心感があった。

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 私は、目が覚めた。今度は、本当に爽快な気分だ。私は、横を見た。すると、可愛い女の子がすやすやと寝ている。いい顔をしている。暫く、眺めていた。

 それから、私に抱き付いて、寝ている女の子を起こさないように注意しながら、そのまま布団から、そっと、抜け出した。

 寝る前に依頼されたことを、考えた。写真乾板をつくろう。ガラス板に闇魔法で、光に感光する膜を張り、それを写真のフィルム代わりに使おう。実際に作って、すやすやと寝ている女の子に試してみた。少し時間が掛かるが、映像として、残すことが出来た。

 闇魔法の膜は、うまく映像を吸収して、固定することが出来た。しかし、瞬間を捉えることは難しかった。数秒は、固定していないといけないようだ。もっと、改良したいが、今は、これで、我慢して貰おう。誰でも使える様に、魔法陣にして、ガラスの板に刻印した。これを、映像固定ガラスと呼ぶことにした。

 私は、操作版のガラス窓をこの新しい映像固定ガラスに取り換えた物を作り、5台分用意した。それをカーリンに送っておいた。
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