上 下
109 / 270
 第12章 魔法学院(見学)編

1206.テラの授業参観

しおりを挟む
 そろそろ、戦いが始まりそうだ。しっかり、準備しないと大勢の人が死んでしまう。

 「スピア、もう、戦争が始まりそうなんだ。そこで、スピアの仲間に助けて欲しい。申し訳ないけど、スピアが全世界を回って、最終的に集めて来てくれないか?」

 「うん、いいよ。思念伝達も、使う」

 「いいよ、お願いね」

 「うん。テラ、バイバイ。行くよ」

 私は、スピアの頭を撫でてあげた。嬉しそうに、出発していった。

 今日は、午前中に授業が一つあるだけだった。ミュー先生の初級光魔法の講座だ。ミュー先生に担任もやって貰っているので、しっかり、授業に専念するつもりだ。

 ミュー先生が、教室に入って来た。今日は、患者を3人連れてきている。患者の付き添いに兵士が6人いる。患者も、兵士かもしれないね。

 「今日は、兵士の方のお手伝い願って、光魔法による治癒魔法の訓練をやっていきます。
 今日は、初めての人を優先して、魔法の起動を行って貰います。
 希望する人はいませんか?」

 レイカが真っ先に手を挙げた。これは、どちらなのか、分からない。ルカも、オウカも、手をあげない。指名されるまで、待つつもりの様だ。

 「他に居ませんか?」

 ミュー先生が再度、尋ねた。仕方がないので、私が手を挙げた。

 「わかりました。それでは、まず、レイカにやって貰いますね」

 レイカは、最初の患者の前に立って、患者の様子をしっかりと、観察していた。最初の患者は、身体の至る所に包帯を巻かれており、酷い外傷があるようだ。

 「傷よ治れ。治癒魔法ヒール

 レイカの魔法が起動された。患者を光が取り囲み、傷が癒されていくようだ。だが、患者の苦痛の表情は変わらない。おそらく、外傷だけでなかったのだろう。

 「傷よ治れ。治癒魔法ヒール

 レイカは、再度、同じ魔法を掛けた。しかし、全く同じだった。レイカは、何か、見落としたようだ。

 「もういいわ。レイカ、下がりなさい。それでは、ルカ、あなたがやってみなさい」

 「ミュー先生、私には無理です。どこが悪いか、わかりません」

 「見て分からなければ、どうしたらいいの? 少しは、考えなさい」

 「はい、すみません。患者に聞きます」

 「それなら、始めなさい」

 ルカは、患者にどこが悪いのか聞いている。しかし、患者も分からないと言っている。擦り傷や骨折などの怪我は、もう、治っているが、まだ、身体中が痛いらしい。

 どうも、ルカは、スキル鑑定が出来ないようだ。それは、レイカも同じだ。

 「最後に、オウカ、やってみなさい」

 オウカが、患者の前に立って、暫く、患者を見つめていた。そして、魔法を起動した。
 
 「熱よ去れ。治癒魔法ヒール

 患者は、少し良くなったようだ。しかし、完治したわけではない。

 私は、スキル鑑定で、病名を調べてみた。すると、インフルエンザに罹っているようだ。

 この時代では、多分治せないだろう。そうすると、対症療法をするしかない。その一つは、今、オウカが行った、熱を下げることだ。後は、咳・痰の処理か、肺自体の炎症を取り除くしかなさそうだ。

 「はい、いいですよ。だいぶ、良くなったようです。後は、十分な栄養を取って、しっかり、休むことですね」

 最初の患者は、そのまま兵士に連れられて、教室から出て行った。あれ、ミュー先生は、治療しないのかな?

 「それでは、次の患者を診てください。では、誰が治療しますか?」

 また、レイカが手を挙げている。よく見れば、また、ルカもオウカも手を挙げていない。仕方がないので、私が手を挙げた。

 「では、レイカ、やってみなさい」

 今度の患者は、外傷がないようだ。でも、身体が動かないようだ。麻痺しているように見える。

 「麻痺よ治れ。治癒魔法ヒール」 

 少しは、効いたようだが、身体が動く様子はない。失敗の様だ。私は、また、スキル鑑定で、病名を調べてみた。すると、脳出血だった。脳の血管が裂けて出血した血が貯まり、麻痺を起こしているようだ。

 これでは、一時的な麻痺の緩和で、全く効かない。

 「では、ルカ、やってみなさい」

 「できません」

 「それでは、オウカ、やってみなさい」

 「私も、分かりません」

 「仕方がないですね。私がやりましょう」

 ミュー先生は、脳内の血管からの出血を塞ぎ、血の塊を消去した。すると、患者の顔色は良くなり、手・足が動き始めた。治ったようだ。しかし、これは、一時的な治療だ。また、再発するだろう。

 「では、最後の患者ですね。今度は、ルカから始めなさい」

 「私ですか。私は、無理です。どんな、病気か、分かりません」

 「仕方がないですね。それでは、オウカ、お願いします」

 「ミュー先生は、無理ばかり言っています。どんな、病気か全く見当もつきません」

 最後の患者は、病人ではなった。健康な人が嘘をついているだけだ。仮病という、病気だ。

 「それでは、今日の授業は、此処までにします」

 「ミュー先生、私は、どうして、無視されるの?」
 
 私は、独り言を呟いた。

 ミュー先生は、黙って、教室を出て行った。

 「あれ、また、何かやってしまったかな? 
 ねえ、なぜ、ミュー先生は、怒っているの?」

 「あれ、テラの声が聞こえるよ」

 しまった、隠密魔法を掛けていた。私は、こっそりと、教室を出て行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

大好きな母と縁を切りました。

むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。 領地争いで父が戦死。 それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。 けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。 毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。 けれどこの婚約はとても酷いものだった。 そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。 そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

処理中です...