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 第12章 魔法学院(見学)編

1201.シジン魔法学院へ

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 これまでは、原油の唯一の産油国であった、ミヤーコ王国だが、これからは、ヤガータ国も産油国として名乗りを上げる。今はまだ、秘密にしている。

 昨日は、シルバの配慮か、分からないが、破格の待遇を受けた。まず、夕食は、以前この街で食べたものと匹敵するものだったし、ホテルの部屋も相部屋を想定していたのに、教師だけでなく、生徒も一人一部屋になっていた。お陰で、ぐっすり、寝ることが出来た。馬車での疲れが完全に取れている。

 まあ、私の場合は、肉体がないので、すべて、精神的なものだけどね。

 シルバの事前調査によると、シジン魔法学院の生徒は、他の国の魔法学院と比べて、特別優れていることはないが、教師陣には高額の給料で、最高の人材を雇っているという話だ。

 豪華な朝食の後、馬車に乗って、シジン魔法学院に向かった。当然であるが、シジン魔法学院は、貴族エリアにある。そのため、貴族エリアとの出入り口では、全員チェックを受けた。
 
 いままで、聞かなかったが、全員貴族だった。そのため、チェックは、簡単なもので、持ち物などは検査されることがなかった。

 やっと、シジン魔法学院に到着した。シジン魔法学院の出入口は、結界がなく、誰でも入れる状態だった。出入口にいる係員以外にセキュリティ対策は取っていないようだ。

 シジン魔法学院の建物の前では、教師が数名立って、迎えの用意をしていた。

 私達は、馬車を下りて、建物に向かって歩いて行った。凄い、建物だ。まるで、王宮の城のようだ。

 教師も豪華な服を着ていた。外見は超一流だった。

 「私達は、ヤガータ国の魔法学院より、見学にやってきました。本日は、よろしくお願いいたします。私は、引率役の教師のミューです。よろしくお願いいたします」

 「私は、今回の見学の案内を担当する教師ゴードルです。早速、見学に行きましょうか」

 「はい、お願いします」

 ゴードルは、特に何も説明せずに、どんどんと建物の中を進んで行く。我々は、呆気に取られていたが、遅れずに付いて行った。

 「ここが、我が魔法学院自慢の図書館です。王宮の図書館にも匹敵する書籍を網羅しています」

 「すごいですね。これらの書籍は自由に生徒が見ることが、出来るのですか?」

 「何を言っているのですか。生徒は、この図書館に入れませんよ。我々、教師だけですよ」

 「あっ、そうでうすか」

 「さあ、次に行きますよ」

 また、ゴードルは、どんどんと建物の中を進んで行く。

 「こちらが、食堂です。何でも、自由に食べることが出来ます。24時間営業ですよ」

 「すごいですね。メニューの数が凄い。生徒も、喜んでいることでしょうね」

 「何を言っているんですか。さっきから、あなたは、教師ですよね」

 「はい、教師です」

 「それなら、何故、生徒の事をいうのですか? ここは、教師のための魔法学院ですよ」

 「えっ、それでは、生徒はいないのですか?」

 「また、バカな事を。あっ、失礼。つい、本音が。あっ、失礼しました」

 「魔法学院に生徒が居なくで、どうするんですか?」

 「そうですよね。生徒は、ここで、寝泊りするのですか?」

 「また、もう、生徒の話は、やめてくださいよ。この魔法学院は、教師のものですよ。何度も言わさないで貰いたい」

 「どうも、失礼しました」

 「それでは、次に行きますよ」
 
 また、ゴードルは、どんどんと建物の中を進んで行く。

 「ここが、今回の見学のメインです。魔法学院の中の神殿です。シジン教の神殿を持っている魔法学院は、他国には、無いでしょう」

 「そうですね。流石です」

 「これで、一通り見学しましたが、何か、聞きたいことはありませんか?」

 「えっ、見学は、これで終わりですか?」

 「私が予定した見学は、これで終了です。まだ、時間がありますので、敷地内を見て回って貰っても構いませんよ」

 「はい、わかりました。そうさせて頂きます」

 「おい、まだ、見て回るそうだ。付き添いたまえ。それじゃ、私は、ここで、失礼するよ」

 「はい、どうも、ご苦労様でした」

 ゴードルは、足早に去っていった。帰る時まで、素早い。

 「それでは、教室を見せて貰いたいのですが」

 「はい、わかりました。私は、シジン魔法学院の教師マージです。よろしくお願いいたします」
 
 マージ先生は、教室を案内してくれた。今、授業が行われているようだ。

 「あの、教室の中を見てもいいですか?」

 「どうぞ、ご自由に。中に入られてもいいですよ」

 「この魔法学院は、すべてが、自由ですよ」

 私達は、授業の邪魔にならないように、静かに入室した。

 「それでは、炎の温度を変えて行きましょう。出来る限り、高い温度にしてみてください」

 教室の中には、生徒が30名ほどいた。教師は、生徒2名に1名付いていた。

 教室の中は、生徒と教師で、ごった返していた。

 「あの、この狭い教室では、危ないのではないですか?」

 「あぁ、大丈夫ですよ。シジン教の牧師が治療しますので、心配はないです」

 「えっ、牧師が治療するのですか?」

 「当たり前でしょ。治療は、牧師の仕事ですよ」

 「そうですか。この教室の講座は、初級の火魔法講座ですか?」

 「何を言っているのですか。あの炎の色を見てください。青色ですよ。赤色でなく」

 「はい、見えています」

 「それなら、分かるでしょう。青色の炎は、上級魔法ですよ」

 「はい、失礼しました」

 ミュー先生は、疲れてしまったようだ。肩を落としている。

 「ミュー先生、大丈夫ですか」

 私は、心配で、ミュー先生の肩を抱いて、あげた。

 「あぁ、テラですか。はい、もう、大丈夫です」

 流石に、頭をポンポンするのは止めておいた。私は、ミュー先生から離れて、スピアの傍に行った。

 「皆さん、この後はどうしましょうか?」

 「はい、私は、この授業を聞いてみたいです。参加したいです」

 私は、思わず、手を挙げてしまった。目立たないつもりが、失敗してしまった。

 「いいですよ。私は、廊下で、休んでいます。他の人はどうしますか?」

 「「授業に参加します」」

 「どうぞ、自由にしてください」

 ミュー先生は、また、肩を落としている。思わず、私は、傍に行こうとしたが、スピアに腕を掴まれてしまった。仕方がないので、授業に参加することにした。

 「取り敢えず、炎を出してと、それを出来るだけ高温にするって、言っていたね」

 私は、掌に炎を出して、少し大きくしてから、高温にしていった。炎の色は、赤色、黄色、白、青と変化して、部屋全体が温められている。私は、余り熱さ感じないので、青色のまま、少しずつ炎を大きくしていった。

 「おい、そこの君、何をしているんだ。天井まで、炎が届きそうだぞ」

 「本当だ。校舎が燃えるよ」

 「えっ、何て言っているの? 天井まで、届かせるの?」

 私は、更に大きな炎にしようとしていたら、後ろから、抱きしめられた。

 「誰、今から、炎を天井まで、届くようにするのに。邪魔だよ」

 「テラ、今すぐ、辞めなさい」

 「あっ、ミュー先生は、休んでいるのでは?」

 「テラが、バカな事をしているから、休めません」

 「早く、炎を消しなさい」

 「はい、わかりました」

 私は、ミュー先生の言うとおりにした。

 「この部屋の熱さが分からないの? 皆、汗だらけよ」

 「あっ、本当だ。皆、汗で服が透けてるね」

 「何言ってるの、テラも汗で、服がびっしょりよ」

 自分の服を見てみると、確かに汗で濡れている。でも、この汗は、ミュー先生の汗だ。さっき、抱きしめられて時に、濡れたと思う。だって、私は、汗をかかないから。

 「ちょっと、待ってください」

 私は、風魔法で、皆の服を乾かし、光魔法で、汗をクリーンにした。そして、部屋の空気の入れ替えもしておいた。まだ、炎を出している生徒がいるので、それを水魔法で、消しておいた。

 「ミュー先生、終わりました。すみませんでした」

 「テラが、怪我をしてないだけで、いいのよ。これからは、危ないことはしないでね」

 「はい、気を付けます。また、ミュー先生が抱きしめて止めてください」

 「何、バカなことを言っているの。本当に反省してよ」

 「はい、すみません」

 教室内の全員に見られているようだ、失敗してしまった。私は、頭を下げて、教室の全員に謝罪した。 
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