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 第11章 魔法学院(生徒)編

1102.食堂での騒ぎ

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 食堂は、昼にはまだまだ早い時間にも拘わらず、多くの生徒がいた。この魔法学院では、生徒がくつろぐところが、食堂と自分の部屋だけになっているようだ。そのため、多くの生徒が食堂に集まっている。まあ、無料のドリンクやクッキーも食べ放題なので、集まるよね。

 「テラ、ここ空いているよ」

 「レイカ、ありがとう」

 「さあ、食べようか。スピアも食べてね」

 皆で、食べ始めると、食堂の入り口が騒がしくなってきた。どこかのオジサンが叫んでいるようだ。

 「誰かな?騒いでるよ」

 「本当ね。でも、テラって言ってない?」

 「ここにオジサンの知り合いは、居ないよ」
 
 「そうかな。確かに聞こえたんだけど」

 いつの間にか、そのオジサンは、私達の所にやってきていた。私は、スープに夢中で、きが着かなかった。

 「テラ、やっと、見つけた」

 振り返ると、オーガネッチが立っていた。

 「あっ、オーガネッチさん。何か、用ですか?」

 「何度も、連絡を取ろうと思っていたんだが、全く捕まらなかった」

 「何故、私を捕まえるの?」

 「今日が、何の日か覚えているか?」

 「今日は、私の初めての魔法の授業の日です」

 「テラ、何故、授業に出るのだ」

 「なぜって、私は、この魔法学院の生徒ですよ。生徒が授業に出るのは当たり前でしょ」

 「そんなことより、今日は、マテーダ王女と夕食を取る日だ。それで、場所を連絡するために、此処に来たのだ」

 「夕食ですか。私は、どこでもいいですよ」

 「テラ、そんな希望を聞きに来たのでは、ないのだよ。場所は、もう、決まっている。一流の店を貸し切りにしている」

 「はい。分かりました。それで、場所は、どこですか?」

 「それは、言えぬ。マテーダ王女の安全が優先されるからな」

 「では、私は、どうしたらいいのですか?」

 「テラは、この魔法学院の部屋で待っていてくれ。迎えを寄越すから」

 「はい、分かりました」

 「本当に、待っていてくれよ。お願いだから」

 「はい、大丈夫です」

 「それじゃ、夕方に。失礼した」

 マテーダ王女に会う日だった。忘れていた。

 「テラ、マテーダ王女って、知り合い?」

 レイカが聞いてきた。先ほどの話を聞かれていたようだ。

 「マテーダ王女って、知らないよ」

 「テラ、何故、嘘をつくのよ。私、友達でしょ」

 「そうだよ。レイカは、私の可愛い友達だよ」

 「だったら、本当の事を教えてよ」

 「本当の事って、今日初めて会うんだよ。さっき、来た人がマテーダ王女に会えって、うるさいんだ」

 「そうなの。マテーダ王女に会いたいのじゃないのね」

 「本当だよ。私は、レイカと一緒に夕食も食べたいよ」

 「本当。嬉しい。でも、マテーダ王女の誘いでは、断れないね」

 「ごめんね。残念だけど、行って来るよ。レイカとは、その後でも会えるね」

 「そうね。ここは、全寮制だものね。そうだ。夕食後、私の部屋に来てよ」

 「でも、レイカは、相部屋じゃないの?」

 「いいえ、部屋が空いているから、成績上位10位までの生徒は、一人部屋になったのよ。だから、私の部屋は、私一人よ」

 「そうか。それなら、気兼ねしなくていいね」

 「そうよ。遠慮はいらないわ」

 皆で、食事を終えた後、レイカの部屋に案内された。これで、夕食後も、迷わずにレイカの部屋に行ける。レイカは、次の講座も出席するようだ。私達は、レイカの部屋の前で分れた。

 私は、思念伝達で、ガーベラに連絡を取った。
 
 「ガーベラ、テラだけど、少し聞きたいことがあるんだ」

 「何?聞きたいことって」

 「今日の夕方に、マテーダ王女と夕食を取るのだけど、何か注意しないといけないことってある?」

 「どうして、マテーダ王女と夕食を取ることになったの?マテーダ王女とは、会ったことなかったよね」

 「はい。今日初めて会うよ」

 「それじゃ、誰かの紹介で会うことになったのね」

 「オーガネッチの紹介なの。断れなくて、会うことになってしまったの」

 「断っておけば、良かったのに。仕方がないね」

 「だから、これ以上、巻き込まれないようにしたいんだ」

 「テラ、もう、手遅れよ」

 「そんなこと言わないでよ。何か、アドバイスは、無いの?」

 「そうね。ひとつだけ、あるよ。それは、何も約束しないこと。何を言われても、考えておくと答えなさいね」
 
 「はい、わかった。考えておくだね」

 だんだん、憂鬱になって来た。仕方がないから、魔法学院の自分の部屋に行って、迎えが来るのを待つことにした。

 「いつ来るのか、聞いていたら良かったね」

 「テラ、寝る?」

 「今からは、少し早いよ」

 時間があるので、以前考えていた、魔導書の事を考えることにした。

 「ねえ、スピア、魔導書のこと、覚えている?」

 「うん。覚えている」

 「その時に、『本、消える。でも、残る。』と言ったよね。覚えている?」

 「うん。覚えている」

 「あれは、どういう意味」

 「うん。本、本じゃない」

 「本の様に見えるけど、本ではないということ」

 「うん。本、本違う。別の物」

 「そうか、わかった。本に見せているから、スキル鑑定では、分からないのね」

 私のスキル鑑定のレベルが低いので、知らない物の鑑定に問題がある。特に、生物に対しては、顕著だ。だから、あの本のような生物の鑑定を失敗したのだった。

 スピアは、動物の感で、最初から、本でないことを知っていたというわけね。

 考え事をしていると、時間が過ぎるのが早い。部屋をノックする音で、考え事を中断されてしまった。

 「テラ殿、お迎えに上がりました」

 「はい、今、行きます」

 ついに、憂鬱な時間の始まりだ。仕方がない。我慢、我慢だ。
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